6月21日はミッフィーの誕生日! ディック・ブルーナが込めた4つの秘密

ミッフィーが愛され続ける理由は作者ディック・ブルーナの「こだわり」にあった

6月21日は、ミッフィーのお誕生日。1955年、オランダで絵本『ちいさなうさこちゃん』で誕生したミッフィーは、今日にいたるまで、世界中で愛され続けてきました。

なぜ時代が変わっても、ミッフィーはたくさんの子どもから支持され続けるのでしょうか。作者のディック・ブルーナさんが遺したインタビューブック「ミッフィーからの贈り物 ブルーナさんがはじめて語る人生と作品のひみつ」(講談社)から、ミッフィーの人気の秘密を紐解いていきましょう。

いつもあう目線の秘密

© Mercis bv

ブルーナさんの絵本の登場人物たちは、基本的に正面向きに描かれています。それは読んでいる子どもたちと目があうようにするためだと、ブルーナさんは話します。

「うれしいときにも悲しいときにも目をそらすことなく、読者の子どもたちと正直に対峙していたいという気持ちのあらわれなのです。(中略)ぼくの絵本にとって、安心感はとても重要です。そして読者に対してはいつも正直でありたいと考えています。」

どんなときも変わらず、絵本のなかで子どもたちを待つミッフィーは、「うれしいときも悲しいときも」たくさんの人の心に寄り添ってきたことでしょう。ミッフィーの目線には、子どもの心を正直に受けとめる力が備わっているのです。

独特な鼻と口元の秘密

© Mercis bv

ミッフィーの最大の特徴は、鼻と口元の表現。「どうしてこの形なの?」と、不思議に思う人も少なくないはずです。ここには、ブルーナさんのある独特な視点が隠されていました。

子どもの頃から、家のまわりにいた野生のうさぎと遊んでいたブルーナさん。うさぎをよく観察して、鼻と口をシンプルな線で表現しようと試みました。

「ミッフィーのおやすみなさい」© Mercis bv

「ミッフィーをはじめて描いたとき、うさぎとはわかるのだけど、本物のうさぎとはまったくちがう形にしたいと思いました。(中略)読者である子どもに気に入られるものを描くのではなく、あくまで自分が満足のできるものを描いたのです。」

ある部分ではどこまでも子どもに寄り添い、またある部分では、自分の意志をとことん貫いたブルーナさん。迎合せずに「いいもの」にこだわる姿勢が、多くの人の心をつかむ理由なのかもしれません。

限られた色の秘密

© Mercis bv

ミッフィーの絵本には、限られた色しかつかわれていないことをご存知でしょうか。メインでつかわれているのは、赤、青、黄、緑です。最初にミッフィーの絵本がつくられたとき、輪郭を描く黒以外には、この4色がつかわれました。

そこから、象やねずみを描くためのグレー、くまのボリスやいぬのスナッフィーを描くための茶色が徐々に加わっていったのです。

ブルーナさんはひとつひとつの色を、多大な時間をかけて選び出しました。最終的に選ばれた6色は「ブルーナカラー」と呼ばれ、この厳選された6色のみで表現するスタイルが確立されました。

「ボールをぽ〜ん」 © Mercis bv

「それぞれが主張する強さをもった色なのに、隣り合ったときにけっしてそれぞれの色味をそこなうことなく、互いを引き立たせる色。そして青と聞けばだれもがイメージする青であることが必要でした。」

ミッフィーの絵本が洗練されていると感じるのは、単色で塗られた場合だけでなく、隣り合ったときの相互関係までをも計算し尽くされた色がつかわれているからだと言えるでしょう。

シンプルな形の秘密

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顔だけでなく、来ている服も、お部屋の背景も、とにかくシンプルなミッフィーの絵本。一見、単純に見えるそれぞれの形ですが、ここにもブルーナさんの人並み外れたこだわりがありました。

「動物を描くなら、まず動物園で正確なスケッチをとります。その後、アトリエにもどって、スケッチをもとに、くる日もくる日も形からむだなものをギリギリまで削ぎ落としていくのです。」

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作品をつくるすべての過程のなかで、この削ぎ落としの工程が一番むずかしいと話すブルーナさん。しかし、とことん削ぎ落とされた先にしか見えてこない「何か」があるのだと言います。

「シンプルで明快な線で描かれた作品は美しく、力強いものです。ものが持つ本質が際だっているということです。」

ブルーナさんの想い通り、この「本質」が表現されていたからこそ、ミッフィーの絵本は多くの人の心を掴んできたのでしょう。ミッフィーの絵本に登場するイラスト1つ1つは、ブルーナさんの情熱の結晶とも言えるのです。

© Mercis bv

ミッフィーはブルーナさんの愛とセンスのかたまりである

作者のディック・ブルーナさんは、ミッフィーのイラストを通して、読者にとことん正直にいようと努めました。また、形や色に一貫してこだわり続けることで、ものの本質を描き出そうとした結果、洗練されたミッフィー作品の数々が誕生したのです。

背景を知ると、より一層、ミッフィーのことが愛おしく感じられますね。あらためて、お誕生日おめでとう、ミッフィー! これからもその可愛さで私たちの心を癒し、多くの子どもたちの笑顔を生み出していってくださいね。

ミッフィーからの贈り物―ブルーナさんがはじめて語る人生と作品のひみつ(講談社文庫)

やまぐち まお

山口 真央

1986年東京生まれ。編集者・ライター。幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」の編集や、キ...