「虫嫌いでもいい でも子どもの可能性は奪わないで」親の昆虫嫌がわが子に与える悪影響を専門家に聞いた

こんちゅうクンに聞く「夏休みにやりたい“虫育”」#2 ~虫嫌いを克服するには?~

磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長:こんちゅうクン

植え込みの根元や枯れ葉の下にも小さな虫の世界は広がっている。  写真:大石真弓

こんちゅうクン直伝!虫嫌いを克服するためのステップ

「子どものために虫嫌いを克服したい!」と考える親のために、子どもと楽しめる昆虫遊びのステップを伺いました。まずは見つけやすい身近な虫を捕まえることからスタート。その日の洗濯前には、子どものポケットの中の確認を忘れずに。

●STEP1(捕まえる)

ダンゴムシ……子どもたちからの人気者。集めやすい。昆虫ではなく甲殻類。

バッタ……まず嚙まない。片方のあしをつかむとあしがとれることがあるので体をつかむ。草むらで見つけやすい。

●STEP2(飼育する)

カブトムシ/クワガタ……見た目がかっこよく子どもたちから人気。飼育セットも手に入りやすい。

●STEP3(虫取り網を使う)

チョウ……春から秋にかけて飛んでいて見つけやすい。網に入ったらくるんと網の角度を変え入り口をふさぐ。

トンボ……虫取り網の動かし方にコツが必要。トンボが網に入ったら網を止めずに動かし続け、くるんと網の角度を変え入り口をふさぐ。

セミ……夏休みにぜひトライしたい昆虫遊び。背後から虫取り網でそっと狙って入り口をさっとふさぐ。セミのおしっこはほぼ水分。

●STEP4(上級者向け)

カマキリ……持ち方を間違えると鎌にはさまれてしまうことがあるので注意。持つときは胸を持つ。手に乗せて歩かせる「手乗りカマキリ」がおすすめ。
見事な網さばきで、あっという間にモンシロチョウを捕まえるこんちゅうクン。  写真:大石真弓

「飼いたいVS.飼いたくない」の対立に役立つ折衷案

虫を飼いたい(子ども)VS.飼いたくない(親)と対立した場合の折衷案も伺いました。

「虫を持って帰って育ててみるという経験は大事です。できたら子どもと一緒に飼育にチャレンジしてほしいですね。

けれど生き物を飼育するのは大変なこと。大人はつい負担だけを考えて『ダメ!』と言ってしまいがちですが、どうしても無理という場合にも、例えば『ひと晩だけ』という折衷案を提示するといいと思います。一方的にNOを突きつけるより、子どもの承認欲求も満たされます。

『自分でつかまえた!』という経験を与えてあげて、『じゃあ明日一緒に返そうね』と約束をすれば飼う負担も大きくないですし、いいと思います。

本来、飼育のモラルとしては捕まえて飼育した昆虫を再び自然界へ放すことはよくないことです。一度飼ったら死ぬまで飼育する『終生飼育』が基本です。

でも、どうしても飼えないというときには、家の前で見つけたアリやダンゴムシを一晩飼育して、また見つけた場所に逃がすという程度でしたら、自然界への影響は少ないでしょう。ただ、これは例外だということも覚えておいていただきたいです。

とても難しい表現にはなりますが、死んでしまった、という体験もじつは大切なんです。生き物を扱うことの難しさ、命の儚(はかな)さを知ることができます。

身近な自然であり、生き物であり、命である昆虫だからこそ学べることがあると思っています」(こんちゅうクン)

「嫌い」も認めてあげられる世の中に

とはいえ、「虫を好きにならなくてもいい」「克服しなくてもいい」と繰り返すこんちゅうクン。昆虫の世界と同様、多様性を認める社会であってほしいという願いからです。

「虫嫌いな人を好きにするというのも無理があると思っていて、『虫が嫌い』という思いも認めてあげられる世の中であってほしいと思います」(こんちゅうクン)

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嫌いは嫌いでいい。でももし克服したいと望むなら、小さなステップから昆虫の世界に歩み寄ってみるのもいいかもしれません。次回は夏休みだからこそ楽しみたい昆虫遊びについてお届けします。

取材・文/大楽 眞衣子
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こんちゅうクン

磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長

北野伸雄(きたののぶお)。1985年生まれ。幼いころから昆虫が好きで、九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)に勤務し、2020年に館長就任。静岡県内外での出張授業や講演活動を通して、子どもから大人まで幅広い世代に昆虫の魅力を伝える活動を展開している。 著書に『みんなの昆虫学校』(くまふメディア制作事務所)、『こんちゅうクンのいちばん虫ずかん』(シャスタインターナショナル)があるほか、『百人一首風みんなのこんちゅう和かるた』(くまふメディア制作事務所)も制作。サッカーJリーグ「ジュビロ磐田」のジュビロクラブアンバサダーも務める。保育士資格取得。クワガタメガネがトレードマーク。 ●磐田市竜洋昆虫自然観察公園

北野伸雄(きたののぶお)。1985年生まれ。幼いころから昆虫が好きで、九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)に勤務し、2020年に館長就任。静岡県内外での出張授業や講演活動を通して、子どもから大人まで幅広い世代に昆虫の魅力を伝える活動を展開している。 著書に『みんなの昆虫学校』(くまふメディア制作事務所)、『こんちゅうクンのいちばん虫ずかん』(シャスタインターナショナル)があるほか、『百人一首風みんなのこんちゅう和かるた』(くまふメディア制作事務所)も制作。サッカーJリーグ「ジュビロ磐田」のジュビロクラブアンバサダーも務める。保育士資格取得。クワガタメガネがトレードマーク。 ●磐田市竜洋昆虫自然観察公園

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」