② 胃の中や糞を調べる
絶滅生物の場合も、この手法が使えることがあります。最近では、ティラノサウルスに近縁なゴルゴサウルスで、幼体の胃の中に小型の肉食恐竜が未消化のまま残っている化石が発見されました。この発見から、ゴルゴサウルスの子どもは、手軽に捕らえることができる小さな恐竜を食べていたらしいことがわかりました。胃の中に食べ物が残っている化石は非常に珍しく、見つかることは稀です。見つかったら大発見、古生物の食性を知る上で非常に重要な証拠になります。
③ 歯に残った傷を調べる
例えば、植物食と考えられている恐竜では硬い植物を噛んだことによる傷が確認されたほか、肉食と考えられている恐竜では傷の深さが成長に伴って変化し、成長の中で食べていたものが変化したことなどがわかったそうです。歯の形だけでなく、歯に残る傷という物的証拠から食性の裏づけができるようになったわけです。
④ 体の大きさ・胴の長さから推測する
恐竜にも同じことが言えます。歯の形から植物食と推測されるブラキオサウルスなどの竜脚類は、他の恐竜と比べて胴長で大型です。この体の特徴からも植物を食べていたことが推測されます。
おわりに
ちなみに、恐竜は現在生きている哺乳類や鳥類、爬虫類などさまざまな脊椎動物が比較対象になるので、実は食性の推測がしやすいほうです。近いものや似ている現在の生き物があまりいない絶滅生物(たとえば、アノマロカリスやオパビニアなどのバージェスモンスターなど)の食性を知るのはさらに難しくなります。
僕も最近、アンモナイトの食性について研究をしています。アンモナイトの食性は、他の古生物と同様に、歯にあたる部位の形や胃の化石などから推測されていますが、まだほんの一部の時代の、ほんの一部の種類しかわかっていません。アンモナイトは3億年もの長期間生存していたので、その間に周りの環境や生態系も変わったはずです。その時々で何を食べていたのかを詳しく明らかにして、大繁栄の秘訣を明らかにすることが研究の目標です。
Therrien et al., 2023: Exceptionally preserved stomach contents of a young tyrannosaurid reveal an ontogenetic dietary shift in an iconic extinct predator, Science Advances, 9, eadi0505.
Winkler et al., 2022: First application of dental microwear texture analysis to infer theropod feeding ecology, Palaeontology, e12632.
相場 大佑
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。