高校球児、次の目標「恐竜学者」は 10年前の「図鑑MOVE」がきっかけだった!<後編>

創刊10周年特別連載「創刊当時に読者だった現・高校生&大学生にインタビュー」第1弾<後編>

甲子園出場&恐竜博士、2つの夢を追いかける高校球児

幼い頃から恐竜が大好き。図鑑を眺めては「恐竜博士になりたい」と心を躍らせていた菊池優希冶(きくちゆきや)さんは、愛媛県新田高等学校に通う高校3年生。小学校4年生の時にもうひとつの大好きなもの「野球」と出会い、そこからは野球と勉強の両立に励む毎日。そして高校最後の2021年夏、菊池さんは背番号10番を付けて甲子園球場にいました。

野球部を引退した今、菊池さんは幼い頃からの追い続けてきた次なる夢、「古生物学者」の道に向かって大学進学を控えています。後編では、学業との両立、進学先での目標などを伺いました。

<前編>はこちら。
https://cocreco.kodansha.co.jp/move/news/mF1Pv
菊池優希冶選手

とにかく放課後は野球だけに打ち込んだ

恐竜少年の菊池さんのもう1つの顔が高校球児です。2021年、高校最後の夏には愛媛県代表・新田高校で甲子園出場を果たしました。
「小学4年生のときに友だちに誘われて地元のソフトボールクラブに参加したんです。それまでは1人でコツコツやるのが好きなほうだったんですが、チームで1つの目標に向かって頑張るってこんなに楽しいんだということに目覚めました」
 中学では軟式野球部に。高校でも野球を続けるつもりでしたが、一方で子どもの頃からの「古生物学者」という夢も追い続けていました。ところが第一志望校は不合格。入学した新田高校は多くのプロ選手を輩出するスポーツ強豪校でありながら、難関大学の進学率も高い文武両道の高校です。

 甲子園を目指す硬式野球部員たちの中で菊池さんは唯一、特進コースに在籍。授業や補習が多く、放課後の練習も遅れて参加することが多かったそうです。
「練習量の少なさを補うために、朝練はみんなより1時間早く来ることを日課にしていました。それでも両立は大変で、1年生の終わりには特進コースを外れようと悩んだことも。そのときに監督から言われた『頑張ったらその分、返ってくる喜びも大きいぞ』という言葉が、今は本当だったなと思っています」
 多くの部員の中から甲子園のベンチ入りができるのは20名。メンバーは部員の投票で決まったのだとか。実力はもちろん、ひたむきに努力する姿もチームメイトたちから評価されたのでしょう。菊池さんは控え投手として背番号10番を渡されました。

大学では研究室に入りながら、野球部でも活動したい!

模擬試験の後にzoomでお話を伺いました。
2回戦までコマを進めた甲子園を終えた今は、いよいよ大学進学が目前に迫っています。菊池さんは野球部での実績が評価され、念願だった古生物学の研究室もある大学への推薦を手にしました。さらに大学でも野球を続けたいとのこと。推薦入学を目指す大学の野球部は、全日本大学野球選手権大会への出場歴もある強豪チームです。
「甲子園ではマウンドに立つことが叶いませんでした。ブルペンでの投球練習に全力を出し切りましたが、やっぱり"やり残した感"はあります。大学でどこまで両立できるかは未知数ですが、これまでずっと2つの夢を追いかけてきたんだし、簡単には諦めたくないんです」
 甲子園にたどり着いたことで「夢を叶えるためのメンタルの強さと自信も付きました」という菊池さん。大学ではどんな研究に打ち込むのでしょうか。
「一番興味があるのは骨格や化石からその恐竜の姿を再現して、どんな環境で生きていたかを推測すること。恐竜の研究は今もどんどん進んでいて、つい最近もスピノサウルスの尾がほぼ完全な状態で発掘されたことで、より実態に近い生態が見えてきたんですよ。ヤマトサウルス・イザナギイという新種の恐竜が日本で発見されたときもワクワクしましたね。まだまだ謎がたくさんあるからこそ、古生物学ってすごく面白いんです」
 『動く図鑑MOVE』も今年で10周年。「恐竜」の情報もますますアップデートしていきます。将来、古生物学者になった菊池さんが監修に携わってくれることにも期待しています。 

MOVEでは、創刊当時に小学生(5歳〜12歳)だった高校生や大学生を募集しています。
菊池選手のように、子供の頃MOVEをよく読んでいたな〜、MOVEがきっかけで恐竜が好きになったな〜、MOVEがきっかけで今の進路があるなぁなどと思う高校生、大学生がいましたら、ぜひお話を聞かせてください!https://cocreco.kodansha.co.jp/move/news/XKbDD

MOVE「恐竜 新訂版」

取材・文/児玉澄子