沈没船は世界中の海に300万隻以上! 日本にもある? 船からどんなことがわかるの?
水中考古学ってどんな学問なの? 水中考古学者の山舩晃太郎先生に聞いてみた!
2023.09.11
沈没船から当時の人々の暮らしぶりがわかる!
そんな山舩先生にインタビュー!
水中考古学とはどんな研究を行うのでしょうか。水中考古学という学問について詳しく教えていただきました。
この記事は講談社の動く図鑑MOVE「世界の探検」から一部抜粋したものです。
──水中遺跡のほとんどは沈没船なんですか?
船が沈没したり座礁(ざしょう)したりする事故は、いまでも毎年起こっています。現代のように、天気予報も海図も、動力となるエンジンもなかった昔の時代は、毎年たくさんの船が沈んでいました。
わたしたち水中考古学者は、300万隻以上の沈没船が世界中の海底に眠っていると考えていて、水中遺跡の99%はこうした沈没船です。
──沈没船を調べて、どんなことがわかりますか?
沈没船が、ものをはこぶ輸送船だった場合は、その積み荷を調べることで、どんなものを食べていたか、どんな服を着ていたか、そうした商品がどこからはこばれたのかなど、当時のくらしぶりを知ることができます。
また、船のつくりを調べることで、その時代の造船技術などもわかります。さらに、沈没船が海底で砂に埋もれると、無酸素状態となります。それは、真空パックにして冷蔵庫で保管するようなもので、木材や布などの有機物がきれいな状態で保存されるようになります。
わたしも多くの古代の沈没船を発掘してきましたが、まるで昨日沈んだかのようにきれいな状態の木材や積み荷を見てきました。
──水中考古学者とトレジャーハンターのちがいはなんですか?
考古学では、遺跡を記録することが大切です。わたしたち水中考古学者は、水中遺跡を記録して保護するために発掘調査をおこないます。そうした記録から、わたしたち人類のこれまでの歴史がわかるのです。
一方、トレジャーハンターは金もうけのために、そうした遺跡を破壊して、金銀財宝など金目のものだけをうばっていきます。しかし、そうやって一度でも破壊されると、その遺跡が伝えてくれるはずだった歴史は、失われてしまいます。
そのため、こうしたトレジャーハンターの破壊活動を規制する国際条約がむすばれるなど、水中遺跡を守るための取り組みがおこなわれています。
砂浜の木片が世紀の大発見になることも!
──日本にも沈没船はありますか?
江戸時代、物資輸送の主力は船でした。なかでも、弁才船という和船が、大坂や江戸などの大都市をむすぶ輸送船としてかつやくしていました。過去の記録によると、台風などの悪天候で多くの弁才船が沈没したようです。しかし、日本では、これまで水中考古学があまり注目されていなかったこともあって、江戸時代までの沈没船はほとんど発見されていません。
ところで、水中考古学者が沈没船を見つけることはほとんどありません。多くの場合、発見するのは地元の漁師さんやダイバーです。そのため、日本でも、水中考古学の存在が広く知られるようになれば、一般の方々からの報告が届いて、あらたな発見がもたらされるかもしれません。
じつは、台風がやってきたあとの海岸では、地中に埋まっていた遺物が、地表にあらわれることがあります。読者のみなさんが砂浜など海岸を歩あるくときは、かわった木片や陶磁器の破片が落ちていないか、ぜひ注意深く見てください。そうして見つかったものが、日本の沈没船に関わる、世紀の大発見につながるかもしれません。
──沈没船を研究する魅力を教えてください。
沈没船は世界中の海にあり、世界各地を飛び(泳ぎ?)回って研究ができるのは、船を専門とする水中考古学の魅力ですね。もちろん学問としての楽しさもありますが、いろいろな国に研究仲間ができて、そんな彼らといっしょに「今日はなにが見つかるかな?」と毎日ワクワクしながら発掘できるのは、本当に楽しいです。
沈没船は300万隻以上もあるとされますが、研究者は世界中でたった500人ほどで、まだまだ足りていません。もし沈没船に興味をもってくれた人がいれば、ぜひ挑戦してほしいですね。