古代のワニを中学生が研究!大阪層群で発見されたワニ化石を深掘り!
MOVEラボ研究員・助手のはるきが地元大阪で発見された古代のワニを調査
2024.09.23
古代のワニ「マチカネワニ」について知ってほしい
目次
古代のワニ「マチカネワニ」とは?
マチカネワニとは?
1964年(昭和39年)に、大阪府豊中市待兼山町にある大阪大学豊中キャンパスの理学部校舎建設現場から、日本で初めて発見されたワニの全身骨格化石であり、大阪層群という約45万年前の地層から発見されました。貴重な文化財である国の登録記念物として、平成26年に文化庁に登録されています。
1965年(昭和40年)の9月と翌年3月に論文が発表され、クロコダイル科のマレーガビアル属(Tomistoma)の新種とされ、産地の名前の待兼山をとり、トミストマ・マチカネンセ(Tomistoma machikanence)と命名され、和名でマチカネワニと呼ばれるようになりました。
その後、再研究され、1983年(昭和58年)にはマレーガビアル属ではなく、新しい属のワニであるとされ、トヨタマヒメイア・マチカネンシス(Toyotamaphimeia machikanensis)と名前が変更されました。これは古事記にワニの化身として出てくる豊玉毘賣(トヨタマヒメ)にちなんでいます。左の肋骨、右の前足、左の後足、恥骨、頭骨、尾椎以外の全身骨格約90個(全体積の70~80%)が発見されていて、ほぼ完全な骨格化石です。
2012年、当時大阪大学で働いていた祖父と大阪大学総合学術博物館の近くに散歩に行ったときにたまたま開催されていた『巨大ワニと恐竜の世界』という特別展示で見ました。初めて見た大きいワニや恐竜の化石に2歳だった僕は大興奮していたそうです。
超巨大! マチカネワニの大きさは?
現存のワニの嚙む力は70kgから2tまで種類や大きさによって異なっていますが、マチカネワニは鼻先が細く1.2t程度の嚙む力だったと推定されています。魚だけではなく鳥や小動物、小型の哺乳類は簡単に食べていたと考えられますが、魚食性のワニのように鼻先は長いですが、顎の奥の歯は大きく、後方ではかなり大きな嚙む力があったとされています。いったい何を食べていたのでしょうか……不明です。
マチカネワニが生きていた時代は第四紀中期更新世の中ごろで、気候が寒冷で針葉樹林が広がった氷期と、温暖で広葉樹林が広がった間氷期が10万年周期で交互に訪れていました。マチカネワニが産出された地層は間氷期にあたり、ほかにもブナやカシ、サルスベリ等の温暖な地域に分布する紅葉樹の化石が発見されています。
また、花粉化石の分析から豊中は現在とあまり変わらない植生と気温だったことが判明しています。生物でいえば、ゾウやヤベオオツノジカ、シナサイ、オオカミ、タヌキや、小型哺乳類ハリネズミ、トガリネズミ、モグラ等が生息していたと考えられていて、こういったことからも温帯深林の環境だったと推定されます。
現生のワニで大型イリエワニは熱帯や亜熱帯に生きていて、5〜7mの大きさです。温暖だった豊中で生きていたマチカネワニが、なぜここまで大きくなったのかはまだわかっていません。
骨折した右足
下顎が欠けている
鱗板骨の穴
背椎骨の癒合
ワニの椎骨は上下で分かれており、上部を神経弓、下部を椎体と呼びます。
卵から孵ったワニは尾椎骨のほとんどが神経弓と椎体が癒合していますが、他の骨は癒合していません。癒合されていない骨には縫合線が見えます。神経弓と椎体は尾の方向から癒合が始まり、成体になると首の頸椎あたりまで癒合が進みます。
骨にはまだ成長する余地があり、全長は10mに達していた可能性もあります。
また、成長線の幅が狭いので、雄であることもわかってきています。
歯の大きさは?
すんでいた環境は?
北緯35度以南、南緯33度以北の赤道近くに棲んでいて、多くのワニは0度以下になると短い時間で死んでしまいます。
30度以下の体温になると、消化や感覚器官が動かなくなるからです。気温が5度以下になるとほとんどのワニが死んでしまいますが、アメリカンアリゲーターやヨウスコウアリゲーターは寒さに比較的強く、氷が張るようなときでも、体を水の中に沈め、呼吸のために鼻先だけ出して乗り越えることがあります。
マチカネワニも寒さに強かったのかもしれません。マチカネワニの他にも植物や貝化石・ゾウの仲間が発見されていて、水辺に生息していた復元図が大阪大学総合学術博物館に飾られています。