野生のイルカ 死んだ母親の代わりに授乳・子育て

子育ては102日間も続いた!

一緒に泳ぐミナミハンドウイルカの「ほっぺちゃん」(上)と「リンゴちゃん」の子ども。2012年7月、伊豆諸島・御蔵島周辺で(近畿大学提供)
2016年4月6日、近畿大学などの研究チームが、孤児になったイルカに、野生の若いメスのイルカが母親の代わりに子育てをすることを、英科学誌サイエンティフィック・リポーツで発表しました。イルカが属する鯨類でこのような行動が確認されたのは、野生では初めてということです。

2012年4月、伊豆諸島・御蔵島周辺にすむ野生のミナミハンドウイルカ、「リンゴちゃん」が漁網にからまって死んでしまいました。リンゴちゃんは、1か月前にオスの子どもを産んだばかりでした。一時、孤児となった子どもの行方はわからなくなりますが、6月に、育児経験のない若いメス「ほっぺちゃん」と一緒に行動しているところを発見されました。ほっぺちゃんが母親の代わりをしていたのです。授乳のほか、一緒に泳いだり、胸ビレでなでたりして、子育ては102日間続きました。
ほっぺちゃんのDNAを調べてみると、死んだリンゴちゃんとは、血縁関係がなく、特に仲がよいわけでもない、全く無関係のメスでした。

まだ解明されていませんが、今回のミナミハンドウイルカの里親のような子育て行動は、人間社会の助け合いが、どのように進化してきたかの解明にもつながるのではないかという意見もあります。