伝説の生物、発見!?

上の写真は、リュウグウノツカイという魚です。
大きいものは5mを超える大きな魚で、太平洋、インド洋、南アフリカ、地中海などの沖合の、中層から深海に住んでいます。 
体は大きいのですが、なかなか人目にふれることが少ないので、めずらしい深海魚とされています。

そのめずらしい魚が、今年に入って日本海側を中心に何匹も浅瀬で発見されています。浅瀬の水温が、平年よりも低かったため、衰弱して打ち上げられてしまったようです。以前から、大きな地震が起こる前に、リュウグウノツカイが海岸で見つかった例が何度もあり「リュウグウノツカイが見つかると地震が起きる」ということもいわれています。しかし、その因果関係は定かではありません。

リュウグウノツカイは「地震の使者」という肩書のほかに、もう一つ伝説上の生物の正体ではないかといわれています。皆さんはその生物、何だか想像できますか? それは「人魚」なのです。
人魚のモデルといえば、みなさんは、ジュゴンを思い浮かべると思います。ジュゴンは、インド洋や太平洋のあたたかい海に生息する、海産哺乳動物(海に暮らす哺乳類の総称)です。胸びれの付け根に乳首があり、子どもにお乳を飲ませている姿が、あたかも人魚が子どもを抱いているように見えたのでしょう。熱帯地方に伝わる、多くの人魚伝説の正体は、ジュゴンと思われています。

日本でも、青森県の陸奥湾で、人魚を見たという記録があります。魚類学者の内田恵太郎博士は、著書『私の魚博物誌』のなかで、

「宝暦年間(ほうれきねんかん、18世紀半頃)の旧8月上旬、陸奥湾で釣りをしていたら人魚が出た。牝(めす)で頭に赤黒い髪をかぶり、顔は玉のように白くて、夕日に雪のようにかがやいた。肌も白くて小さいぽつぽつが、少しあり、乳房と手は人間の通りで、腰に蓑(みの)のようなものがあり、下半身は見えなかった。」

という『六物新誌』(1786年、大槻玄沢[おおつきげんたく]著)の実見談を根拠に、
「人魚の正体は、リュウグウノツカイいう魚ではないか」
と述べています。

リュウグウノツカイは、頭の頂から6本の赤いひれが長い髪のように伸び、背びれも赤く、体は銀白色で、記録に残っている陸奥湾の人魚に、よく似ています。2009年1月22日には陸奥湾でも、リュウグウノツカイが見つかっています。

陸奥湾の人魚、その正体はリュウグウノツカイなのでしょうか。


写真提供:魚津水族館

参考文献
中坊徹二編『日本産魚類検索第3版』東海大学出版会2013
尼岡邦夫『深海魚 暗黒街のモンスターたち』ブックマン社2009
内田恵太郎『私の魚博物誌』立書房風1979
末廣泰雄『サケのハナまがり』実業之日本社1971

■関連:「魚」44-45ページ、「生きもののふしぎ」76-77ページ