バードウォッチングは海辺もおすすめ! 日本でいちばん夏空が似合うカモメのなかまコアジサシ

【ちょっとマニアな生きもののふしぎ】サイエンスライター・柴田佳秀先生が見つけた生きもののふしぎ

サイエンスライター:柴田 佳秀

夏の海はバードウォッチングにもピッタリ!

飛ぶコアジサシ
夏といえばやっぱり海ですね。
そんなわけで数年前の夏、早起きして千葉の海に行ったときの話です。

海に出かけた目的は、もちろんバードウォッチングです。鳥を見るというと、山の森へ出かけるイメージがありがちですが、海辺もバードウォッチングが楽しめる環境なんです。
今回のターゲットは、コアジサシというカモメのなかまの鳥です。5月になると日本へやってくる渡り鳥で、大きさは28cm。東北以南の海岸や川などの水辺で見られます。海や川にいるのは、食べものが魚だから。

空中からダイビングして捕らえる様子が、魚のアジを突き刺しているように見えるから「アジサシ」という名前がつきました。でも、実際には突き刺していないんですけどね。

日本でいちばん青空が似合う鳥!

コアジサシはとても美しい鳥です。黄色いくちばしが目立ち、白と黒のシックな装いのスマートな体型は、青空バックに飛ぶと美しすぎて惚れ惚れします。日本でいちばん夏空が似合う鳥じゃないかな、と私は思います。
群れ飛ぶ
この鳥が日本へ渡ってくるのは、子育てをするためです。巣がある場所はちょっとかわっていて、海岸の砂浜や埋立地の空き地、大きな川の石ころだらけの中州などの地面なんです。地面に浅い穴を掘って巣を造り、地面にゴロンと卵を産んで子育てをします。

こんな無防備な場所で大丈夫かなと心配になりますが、ときには1000羽もの鳥が集まって営巣するので、天敵が来ても一気団結して追い払うので大丈夫なんです。
コアジサシの親子
私がコアジサシに会いに出かけたのは7月の初め。ちょうど卵からヒナが誕生するころで、モフモフの羽毛に包まれたヒナはそれはそれはかわいいのです。そして、エサの魚を懸命に欲しがる姿は悶絶級のキュートさ。この姿見たさに、この時期になると出会いたくてたまらなくなります。
エサをねだるヒナ
しかし、このコアジサシは今は数が少なく絶滅危惧種に指定されています。かつては東京の都心部でも姿を見る普通の鳥だったのですが、繁殖地が開発によってどんどん減ってしまったことで、子育てができなくなり、みるみる数が減ってしまったのです。また、いっけん何もなさそうな砂浜に巣を造るために、卵に気がつかずに人に踏み潰されてしまう事故も起きてます。

日本の夏空を飛ぶコアジサシの美しい姿、そしてモフモフのかわいいヒナが見られなくなってしまうのは悲しすぎます。なんとか、みんなで知恵を出しあい守っていかなければなりませんね。
写真提供/柴田佳秀

「コアジサシ」の生態はMOVE「鳥 新訂版」に掲載されているよ!

しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。