アンモナイトを取り出す作業「化石のクリーニング」の全工程を古生物学者が紹介!
【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ
2024.07.29
古生物学者:相場 大佑
化石のクリーニングって知ってますか?
その屋内で行う作業をクリーニングと言います。今回は僕が普段研究所でどんな風にクリーニング作業を行なっているのかを紹介したいと思います。
3cmほどの小さな化石ですが、3時間くらいかかりました。棘の部分に特に時間をかけました。慎重に作業していましたが、途中で棘が折れてしまい、接着剤で付けてなんとか復元しました。(その時に、棘のカケラをどこかに飛ばしてしまい、床を這いつくばって探しました……。見つかってよかったですが、他の石クズと混ざらないように机の周りを片付けておくことも意外と大切です)
また、こういう棘はアンモナイトの分類にとても重要で、棘の有無や数、長さなどで種が区別されています。今回のアンモナイトは、側面の長い棘の特徴から、発見地であるアフリカのマダガスカル島の地名が学名の由来となっているMenabites mazenoti(メナビテス・マゼノッティ)という種だとわかりました。
化石のクリーニングは時間がかかるし、目も肩も疲れる作業です。しかし、余分な岩石が綺麗に取り除けて化石がよりはっきり見えてくる過程はとても楽しいものですし、実は化石を一番じっくり観察している瞬間でもあります。実際に、クリーニングをしながら化石を見ているうちに形を三次元的に理解できたり、研究のアイディアを思いついたりすることもあります。
クリーニングをしている時の、化石と一対一で向き合う贅沢な時間をこれからも大切にしていきたいと思います。
相場 大佑
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。