信じられないほど美しい! コバルトブルーに輝くトンボ「マルタンヤンマ」を発見!
[ちょっとマニアな季節の生きもの]昆虫研究家・伊藤弥寿彦先生が見つけた生きもののふしぎ
2024.05.24
昆虫研究家:伊藤 弥寿彦
るり色の美しいトンボ マルタンヤンマ
ちょっと変わった名前だけれど、マルタンというのは、100年以上前に活躍したフランスのトンボ学者、マルタンさんにちなんだものです。
マルタンヤンマってどんな昆虫?
では彼らが日中に何をしているかというと、暑さをしのいで水辺の森の中でじっと休んでいるらしい。間近で見るコツは、暑い夏の日に水辺の森を探すこと。水辺の木の枝にぶら下がっているのです。
でも枝はそれこそ無数にあるので気が遠くなりそう(笑)。そしてとにかく暑い、というより、熱い!
汗だくになりながら、ひたすら注意深く探しまわること3時間……。ついにその時が来ました。
突然視界に入った、るり色の大きな眼。
初めて間近で見るマルタンヤンマのオス。吸い込まれそうな透き通った青い目。どうしてこんな色になったのだろう? 私にはわかりません……。30分くらい観察していましたが、ヤンマはほとんど動くことはありませんでした。
メスは埼玉県北本市の「北本自然観察公園」で見つけました。メスの眼は深緑色で、腹がチョコレート色。はね焦げたような色をしています。止まっていてもオスのようには目立たず、上手く風景に溶け込んでいました。
日本には27種類のヤンマ科のトンボが知られていますが、実はこれほどオスとメスの色が違うヤンマはほとんどいません。
マルタンヤンマのオス、ネアカヨシヤンマ(マルタンヤンマよりもっと珍しい)、オオヤマトンボ、オニヤンマです。どれも思っているよりも低い場所(ほとんど目の高さ)に止まっていました。
自分の目で見つけたときは感激しますよ!
日本はトンボの国?
日本は、またの名を「トンボの国」というのを知っていますか。1300年以上前に書かれた日本最古の書物「古事記」にそう書かれているんです。神話の中で、イザナミという神さまが日本の島を生み出していくのですが、8番目に生んだ一番大きな島を「大倭豊秋津島(おおやまととよあきづしま)」といいます。
これは今の本州のこと。この「秋津(あきづ)」というのが実はトンボのことなのです。大昔はきっと今と比べものにならないほどトンボがたくさんいたことでしょう。
日本では小さなイトトンボの仲間から、大きなヤンマの仲間まで、200種類を越えるトンボが生息しています。日本とほぼ同じ面積のイギリスは約50種類。日本は4倍もトンボの種類が多い。やっぱり日本は「トンボの国」といって良いのでしょうね。
伊藤 弥寿彦
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。