ウルトラアイを着眼してウルトラセブンに変身するモロボシ・ダンにはもちろん、日本じゅうの子どもたちがウルトラ警備隊の一員になりたい、とあこがれる社会現象を巻き起こした伝説の作品だ。今にいたるまで、その人気は冷めやらない。
その人気のひみつにせまる『ウルトラセブン』考察シリーズ、今回は「侵略者=宇宙人の魅力」!
『ウルトラセブン』の宇宙人が主張するものとは?
『ウルトラマン』においてバルタン星人やザラブ星人、ダダ、メフィラス星人などのすばらしい宇宙人キャラクターを生み出している円谷プロダクションでしたが、怪獣がメインの敵である『ウルトラマン』に登場する宇宙人ですから、彼らはどこか、怪獣のニュアンスもまとっていました。
そこで、記念すべき『ウルトラセブン』の第1話において、脚本の金城哲夫はウルトラセブンの格闘を排除するという奇策に出ます。円盤との対戦はカプセル怪獣のウインダムに任せ、セブンは操演で動く非人間型のクール星人をアイスラッガーの一撃で粉砕するだけなのです。
それは、ウルトラセブンが「強い」ということを示すのと同時に、クール星人のフォルムも含めて、新シリーズである『ウルトラセブン』が『ウルトラマン』とはまた一味違うSFドラマであるということを主張していたのです。
初期エピソードでの宇宙人の活躍を探る
続く第3話では、本格的な宇宙怪獣、エレキングが登場します。しかし、ここで物語を回すのは小悪魔的な少女の姿になるピット星人で、主題は人を惑わす宇宙人。エレキングは、生物兵器の扱いにすぎません。そのインパクトから人気を得ることになりますが、エレキングはあくまでも尖兵という役回りであることが徹底されています。
そして、第4話のゴドラ星人は、セブンとスピーディな巨大戦を見せてくれます。しかし、ゴドラ星人は多数存在し、終盤では奪われたマックス号の中で人間大のゴドラ星人が複数体、セブンに次々と一撃で粉砕されていきます。
『ウルトラセブン』の宇宙人は格闘戦が嫌い?
この1クール少々の展開により、ウルトラセブンが戦う宇宙人は、肉弾戦よりも知略という印象が強くなり、物語もその知略を巡る攻防というラインが定着しました。
第2クールにおいてもその傾向は継続し、ベル星人やバド星人のように格闘戦で立ち回る宇宙人もいますが、作品全体を俯瞰すると、宇宙人の計略は物語展開とうまく融合している感が強く、ガンダーやギエロン星獣といった人気(を得ることになる)怪獣が登場する展開になった場合も、格闘の印象が極端に突出しない構造をエピソード自体がもつに至ったとしか思えません。
傑作エピソードでさまざまな在り様を見せる宇宙人たち
それが可能となったのは、登場する宇宙人に確かな魅力があったからにほかなりません。それがなくては、踏み切れない方法論です。彼らの形状が個性的であることはもちろん、その存在感に優れた点が多々あればこそ、ドラマの印象がダレることもなく、視聴者に存在感がアピールされているのです。
これは、ほかに例を見ない稀な状況といえ、『ウルトラセブン』に特有のことかもしれません。
この状況があればこそ、ほぼアクションを排した上原正三の脚本による「侵略する死者たち」や、市川森一の脚本による人間ドラマ、「盗まれたウルトラ・アイ」といった物語に傾斜したエピソードが可能となり、その反面で第4クールの導入にあたる飯島敏宏監督が手掛けた3作、娯楽編を徹底した「勇気ある戦い」と「セブン暗殺計画 前後編」が、極めて映えることにもつながるのです。
このように、『ウルトラセブン』に登場する宇宙人たちには、皆個性的なのに物語に見事に融合し、しかもでしゃばることがないという共通する特性があります。キャラクターのみが突出しない、かなり稀有な在り方といえるでしょう。
テレビマガジン編集部
日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga Instagram:@tele_maga
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