家でも外でも、起きている間は常に全力で動き回っているお子さん、いらっしゃいませんか。元気いっぱいなのは親としてはうれしいものですが、いつも子どもの「パワー全開」に付き合っていては、ヘトヘトで目が回ってしまいますね。
特に男の子の子どもを持つママからは、子どもが元気すぎて、お世話に手を焼いているという声を聞くことがあります。
あるときはひょうきんだったり、あるときは頼もしい存在だったり、いろいろな姿を見せてくれる個性溢れる男の子の子育てについて、男児の子育てに関する著書がある大阪教育大学教育学部教授の小崎恭弘先生に伺いました。
「男の子の子育て」とひと口に言っても、子どもの個性はさまざま。男の子で当てはまらない子どももいれば、女の子で当てはまる子どももいることでしょう。ぜひ男の子のパパママも、女の子のパパママも我が子を想像しながら、読んでみてください。
(全4回の1回目)
男性に囲まれて育ってきた
小崎先生は幼い頃から男性に囲まれて育ってきたといいます。
「僕は3人の男の子の父親ですが、実は僕自身も男3兄弟で、父親も男3兄弟という男家系で育ってきた人間なんです。
しかも高校生の頃は青少年活動(キャンプのお兄さん)もやっていて、がっつり男の子とかかわってきた経験があります。
保育士になってからは、男の子の気持ちがよくわかるということで、子どもたちから引っ張りだこで、男の子の対応に関してはちょっとしたプロを自負しています」(小崎先生)
子どもはわからないから面白い!
そうしたご自身の境遇と保育士として働いた経験から、小崎先生は男の子の子育てに関する多くの本を執筆してきました。長年、本を通して男の子の子育てを応援している先生の元には、男の子を持つ保護者からたびたび子育て相談が寄せられます。
「男の子の言動に振り回されたり、理解が追いつかないと、男の子の子育てに悩んでいる親御さんはたくさんいます。
『なんで棒を振り回すんですか』、『なんでズボンに生き物を入れるんですか』、『なんでパンツをかぶるんですか』『なんで鼻の穴にどんぐりを入れるんですか』など、僕はたくさんの悩みを聞いてきました。
そうした悩みにお答えする前に、最初にお伝えしたいことは、親は子どものすべてをわかるわけがないし、すべてをわからなくていいということです。
親子であっても、私たちはお互いに別の存在です。「わからない」ということはワクワク、ドキドキできることだと考えて、だからこそ子育ては楽しいという視点を思い出すと、いずれの悩みも他愛のないものに思えてきますよ」(小崎先生)
保育のベテランでも「わからない」
小崎先生曰く、「親子だから当然、わかり合える」と思い込んでいるから、育児につまずいたときに焦ったり、落ち込んだりするといいます。「親でもわからない」ことを思い出すと、子どもへの向き合い方が変わると話します。
「小崎家のことをお話すると、ウチは妻も僕の前職と同じ保育士なんです。
3人の男の子の母親で、保育のベテランの彼女でも、3人の息子のことはたびたび『よぅ、わからん』と言っていました。何年間も毎日子どもの世話をしている人でもそうなんですから、ママが息子さんを理解しがたくても大丈夫なんですよ。
それとママと男の子を生物学的に考えた場合、両者は1番遠い生き物です。まず、性別が違います。大人と子どもという立場も違いますし、親と子という状況も違うんです。これはパパと女の子もしかりです」(小崎先生)
夫婦間でも男女の思考の違いにより、わかり合えない部分は少なからずあります。それはキャラクターでもあり、お互いに尊重すべき部分だったりもします。
「人は多様な環境のもとで様々な経験をベースに育つのが重要ですし、その人が持つ個の部分が大切にされることが大事です。男の子だから、女の子だからといって窮屈な考え方や生き方を強いられたり、過剰な区別が差別につながることだけは避けなければなりません」
小崎先生がいう育児の前提を踏まえると、無理に子どもを理解しようと頑張る必要もなく、いろいろな考えを持った多種多様な個の存在を尊重することが重要だと見えてきます。育児に悩まれている方にとって、気持ちが楽になるメッセージではないでしょうか。