叱っても響かないのはなぜ?
子どもが持つ個の部分を大切にすべきなのはわかりましたが、我が子が成長していく過程では、社会生活を営む上での最低限のルールも教えなければなりません。しかし、親の言うことを聞いてるのか、聞いていないのかわからない子ども、いますよね?
「何度も同じことで叱られている男の子を、我が子を含めてたくさん見てきました。口では『うん、わかった、もうやりません』と言っておきながら、次の瞬間に同じ行動を悪気もなくやるんですよね」(小崎先生)
自身の経験を交えて話す小崎先生。ではなぜ、子どもは叱られても響いてないのでしょうか。
「子どもがNG行動をした場合、ママは『さっきはなんでそんなことしたの?』と問い詰めますが、子どもとしては『僕、何をしたのかな? さっきのことなんて覚えていないなぁ』という心境です。これは男の子の多くが今、この瞬間を大切にして生きている表れと考えられます」(小崎先生)
「過去や未来のことよりも今、目の前のことが大切なので、男の子を叱るときは現行犯で、叱る部分をひとつに絞って、短い時間で終わるように心がけるといいですね。
『前にも言ったでしょ』『これ何回目?』と言っても、男の子の中では過去のことなので、イメージがつかみにくく伝わりません」(小崎先生)
未来に対してもイメージがつかみにくいため、おもちゃ屋で家にあるものと同じものを見つけて欲しがったりします。家に帰れば手に入るという未来よりも今、目前の出来事が優先されるのが男の子のキャラクターだと小崎先生は話します。
少子化が招いた子育ての高いハードル
子どもが持つ性質や個性をそのまま受け入れることが難しいと感じる親はいます。それは少子化により、子どもや子どもを育てている状況が目立つようになったことが背景としてあると小崎先生は話します。
「厚生労働省から発表されている『2019年国民生活基礎調査の概況』によると、1986(昭和61)年と2019(令和元年)年では子どものいる家庭が46.2%から21.7%へと減少しているんです。
これはつまり、子どものいる家庭が少数派になり、それゆえに子どもや育児に向けられる目が厳しくなっていることにつながります。また、親自身も子育てへのハードルを自ら高くする傾向にもリンクしていきます」(小崎先生)
ハードルを下げて喜びいっぱいの育児を
「自分から子育てのハードルを上げてしまうと、我が子とやりとりがうまくできたり、叱ったときに思いが伝えられたとしても、『このぐらいできて当たり前』と感じて親としての喜びが薄くなります。
これをお読みの方には、何度叱っても直らなかったことが、ある日ちゃんとできるようになったときに心から喜んで欲しいので、育児のハードルを下げてほしいのです」(小崎先生)
親が育児に対して焦燥感を感じるのも、子どもの悪い部分や突出した個性を自分の責任と思って落ち込んでしまうのも、自ら子育てに対するハードルを高くしているからだ小崎先生は話します。
現代は、子どもの評価がそのまま親や育児の評価になりがちですが、基本的に子どもと親は別人と考えることが大切です。親子だけれど別の考えを持ち、お互いのキャラクターを尊重できる育児を心がけると、子育てに気楽さが出てくるのではないでしょうか。
第2回は、男の子のココが困った!の対処法を紹介します。
取材・文/梶原知恵
梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
小崎 恭弘
大阪教育大学教育学部教授。兵庫県西宮市初の男性保育士として保育所などに12年勤務した経験を持つ。3人の男の子の父親でもあり、それぞれで育児休暇を取得。それらの体験をもって「父親の育児支援」研究を始める。NPO法人ファザーリング・ジャパンの顧問。2022年4月より大阪教育大学附属天王寺小学校の校長を兼任。 【主な著書や監修書】 『あ~、また言っちゃったがなくなる 男の子ママの言葉かけ便利帳』(総合法令出版) 『男の子の 本当に響く 叱り方ほめ方』(すばる舎)など
大阪教育大学教育学部教授。兵庫県西宮市初の男性保育士として保育所などに12年勤務した経験を持つ。3人の男の子の父親でもあり、それぞれで育児休暇を取得。それらの体験をもって「父親の育児支援」研究を始める。NPO法人ファザーリング・ジャパンの顧問。2022年4月より大阪教育大学附属天王寺小学校の校長を兼任。 【主な著書や監修書】 『あ~、また言っちゃったがなくなる 男の子ママの言葉かけ便利帳』(総合法令出版) 『男の子の 本当に響く 叱り方ほめ方』(すばる舎)など