長男の勘太郎さんは現在小学6年生、次男の長三郎さんは小学3年生。
小学生も楽しめる、歌舞伎の魅力についてお伺いしました。観劇で刺激を受けたり、センスを身につけて欲しいと考えている保護者の方、必見です!
お子さんを連れて 歌舞伎を観に来る方もいらっしゃいます
勘九郎さん:そうですね、歌舞伎の上演時間はすべて観ようとすれば長いですし、お子さんがいるとなかなかお時間が取れないという場合は多いですよね。
そんな場合は、最近は自宅で見られる「配信」も増えましたし、また舞台公演を高性能カメラで撮影し、映像作品としてまとめたものを映画館で上映する「シネマ歌舞伎」というものもありますので、そんなところから入るのも良いのではないかと思います。
また、エントリーとしては、これは中村屋のことになりますけれど、「平成中村座チャンネル」というものを2022年1月に開設しています。これは30年にわたる中村屋の記録動画を編集しなおしたもので、そこには僕や七之助が子どもだった頃から密着撮影していただいた、色々な記録映像などもありますので、それを見ると、中村屋の家族がどう繋がっていて、どう成長して来たのかということもわかります。
このようなものを歌舞伎の世界へのひとつの入り口として見ていただくのもいいのではないかと思います。
勘九郎さん:そうなんです。まずは興味を持っていただき、「本物を見てみたい」と思っていただけたら嬉しいですね。
子どもが楽しめる演目も! 歌舞伎は子どもが見ても楽しい!?
勘九郎さん:実は歌舞伎の舞台は、基本的に年齢による入場制限がないんです。普通の演劇は、「12歳以下はお断り」などという場合もあるのですが、歌舞伎はほぼフリー。
ですから、本当に小さいお子さんを連れてこられる方もいらっしゃいますよ。でも、多少内容がわかってということになりますと、ちょうど7月に大阪松竹座で上演する『浮かれ心中』という作品などは、お子さんとも見やすい、笑いどころの多い演目だと思います。
役者は舞台からお客さんの反応を肌で感じるものですが、子どもたちの反応はすごく純粋なので、僕も驚かされることがあります。大人が反応していないところにしっかり反応していることもありますし、思いっきり笑ってくれたりもする。
そんな姿を見かけた日には、「ああ、僕は今日あの子のためにお芝居をやろう!」と気合いが入ることもあります(笑)。やっぱり、素直に反応してもらえるのは役者として嬉しいことですから。
反対にいい大人の方に、そんなに荒唐無稽なわけでも、外国語のお芝居をやっているわけでもないのに、「よくわからなかった」なんてことを言われますと……それはどこかで「歌舞伎は難しいもの」「敷居が高いもの」と、脳にブレーキをかけているのではないかな、と思ってしまうこともあります。
ですから、そんなブレーキのないお子さんと一緒に舞台を見る、というのは大人にとっても楽しいことなのではないかと思っています。
衣装の色合わせの妙
勘九郎さん:そうですね、歌舞伎は江戸時代に生まれた芸術なので、衣装の着物にしても色使いが現代と違うところが面白いと思います。色のコーディネートというか、色の合わせ方の妙と言いますか、そのあたりに着目するとまた新しい楽しみが見つけられるのではないでしょうか。
古典作品になればなるほど、その日本ならではの色合わせや美しさが際立っている気がします。
例えば、歌舞伎に登場するお姫様役というのは、その衣装から「赤姫」と呼んでいます。つまりは赤い着物を着ているのですが、赤い着物ってともすればちょっと気持ちが悪く見えてしまうこともあると思うんです。
でも、それが絶妙な色合いの「赤」で、さらに金糸の縫いが入っていたりするともう、本当に美しくて……。
西洋風のフリルがいっぱいのドレスというのも美しいものだとは思いますが、日本の着物の美しさを堪能できるという点もまた、歌舞伎の魅力のひとつなのではないかと思います。