
こんな魚、存在しない──写真を見たさかなクンの違和感
【第4回】絵本『あちちち地球とだいじなやくそく!』発売記念! 国連広報センター所長・根本かおるさん×さかなクン スペシャル対談! (2/2) 1ページ目に戻る
2026.03.05
今はフェイクニュースがあまりにも多いため、環境省が信頼できる情報のリストを作っていますし、私たち国連広報センターも掲載してもらっています。(※1)
※1https://www.env.go.jp/press/press_02152.html出典:環境省
根本さん:一度きいて鵜呑みにするのではなく、言葉を変えながら何度か聞いてみること。そして、答えにたどり着くための情報源まで見る習慣をつけると、ずいぶん変わると思います。
さかなクン:あとは、電話やメールなどでもいいので、信頼できる先生や専門家の先生に実際に聞いてみるのもおすすめでギョざいます。博物館や飼育員さんにたずねてみたりとか。
根本さん:博物館や水族館、動物園がワークショップを行っていることもありますから、参加してみるのもいいですよね。
──フェイクニュースで、実際に困ったことはありますか?
根本さん:私がよく知っているニュースキャスターの女性が、投資詐欺を呼びかけているかのように、画像を巧妙に利用されたことがあります。著名な女性タレントのポルノ画像なども蔓延していますよね。
合成AIが進化していくなかで、さかなクンがおっしゃるように、リアルな場所に足を運ぶことが、ますます大きな価値を持つようになっています。
さかなクン:さかなクンもお魚の写真や映像をいろいろ検索してみると、「このお魚とこのお魚は、本来同じ環境にいないはずなのに」とか、「このお魚の姿や模様、なんだか違和感が⁉」とフィッシュギ(不思議)に思うことがあります。
映像もよくできていることも多いので、パッと見ると、そのまま信じてしまうことも多いのではないでしょうか?
──さかなクンが持っているような基本的な知識が、あまりない状態でAIなどを使って調べる機会も増えています。子どもたち、あるいは知識の浅い人は、フェイクかどうかをどう見極めればいいのでしょうか?
さかなクン:これはすギョく難しい問題の一つだと思います。先日行った授業でも、ウミガメちゃんが海の中を漂うゴミを食べてしまっている写真について、「これは合成ではないか?」と専門家の先生がギョ指摘したことがありました。専門家の先生が疑問に思われるくらい、謎めいたお写真でした。
具体的にどこの海域で、どんな状況で撮影されたのかなどの科学的なデータがあれば信ぴょう性は高まりますが、そうでない場合、見極めるのはとても難しい。特に近年は、なおさらです。
根本さん:だからこそ、「真実を探すことをやめない姿勢」が大切ですね。
さかなクン:はい。根本さんのお言葉通り、鵜呑みにしない、ということですね。研究者の先生方は、「まず疑問に思うこと」が大切とおっしゃっています。
偉大な研究者の方から聞いた、こんな言葉があります。
「“何か怪しい”は、新たな発見の種です。」
疑問を持つことは、疑うことではなく、世界をより深く知ろうとする第一歩。その姿勢こそが、フェイクが蔓延する時代を生き抜く力になります。
──日本では同調圧力が強く、子どもたちも他の子と違う意見を言うのに、とても勇気がいります。国際社会では、みんなと同じ意見を言えばいいというより、主張しなければならない瞬間もあるかと思います。「怪しいと思う勇気」は、どうやって持てばよいのでしょうか?
根本さん:その場のルールとして、「人を非難することは避けましょう」という姿勢はとても大切です。どんな意見でも、まずは受け止めること。
みんなそれぞれに固定観念があるので、実際には簡単なことではありませんが、言い返したくなる気持ちを、ぐっと抑えましょう、と。
「そういう意見もあるのか」と受け止めることを、グラウンドルール(みんなで守るルール)にする。そうやって、先生や場をリードする方が念押ししていくことが大切だと思います。
撮影/日下部真紀
さかなクンは言葉を発するときは、「自分が言われたら傷つくと思うこと」は、言わないように心がけています。
根本さん:素敵ですね。「怪しいと思うのは発見の種」ですが、怪しいと感じても、相手を否定せずに、「じゃあ、一緒に怪しんでみよう」と思えたらいい。そうすれば、仲間を持ったまま、次の発見を探しにいくことができますね。
──最後に一言ずついただきたいのですが、お魚たちにいちばん近い存在として、さかなクンから子どもたちに“お魚の声”を届けてください。
さかなクン:先人の素敵なお言葉をお借りすると……「みんな違って、みんないい」んです。
多様性があってこそ、地球の生態系は成り立っています。だから、みんなに無理に合わせなくていいし、一人ひとりが持っている個性はとっても大切です。まわりにいる親や大人の皆さまも、それを応援してあげてほしいです。
根本さんのお言葉のように、否定せずに個性を伸ばしてあげられれば、日本の魅力や多様性、そして可能性も、きっと広がっていくと思います。
──根本さんは、読者の子どもたちが大人になるとき、地球はどんな場所になっていてほしいですか? また、そのために伝えたいことがあれば教えてください。
根本さん:美しい地球を未来につないでいけるかどうかは、読者の皆さんも含めた、私たち一人ひとりの努力にかかっています。
気候変動対策というのは、世界のたくさんの国々が力を合わせて、「約束ごとを守ろう」と誓うことです。それをみんなで守るからこそ、この地球を未来へとつないでいくことができるのだと思います。
それから海についてですが、1月にとても重要な条約が発効しました。それは、どの国の管轄権も及ばない「公の海」の生物多様性を守るための条約です。(※2)
国際社会では対立や分断が深まっていますが、そんななかでも、「みんなの財産を一緒に守ろう」という決まりごとがまとまり、日本を含む国々が加盟し、批准されて、初めて効力を持ちました。これが実現したんです。
多様性は「力の源」です。そして同時に、「みんなが力を合わせる」ことができたとき、ものすごく大きな力が発揮されます。
読者の皆さんには、
「みんな違って、みんないい」
そして、
「みんながまとまったときに、大きな力になる」
この二つを、ぜひ心に留めてほしいと思っています。
撮影/日下部真紀
世界の現状を「伝える」立場の根本かおるさんと、現場で海の生き物たちの声に耳を澄ませてきたさかなクン。立場の違う二人だからこそ、この対談では、危機感だけでなく、向き合い方や希望が丁寧に語られました。
絵本『あちちち地球とだいじなやくそく!』は、難しい正解を教える本ではありません。大人も一緒にページをめくりながら、「いま、地球でなにが起きているのか」「これからどう生きたいか」を語り合うための入り口です。外に出て、自分の目で見て、感じて、考えてみる──その一歩をそっと後押ししてくれる物語です。
この対談と絵本が、親子で未来について話すきっかけとなり、それぞれが「自分にできること」を見つける時間につながっていくことを願っています。
『あちちち地球とだいじなやくそく! ニコとサクの大冒険』好評発売中!

撮影/日下部真紀
●根本かおるさん
国連広報センター所長。国連の活動や地球規模課題を日本社会にわかりやすく伝え、人々の行動につなげる広報・啓発を担っている。気候変動、SDGs、生物多様性、平和や人権などをテーマに、メディア出演や講演、教育現場での発信を通じて、国内外をつなぐ役割を果たす。対話を重視した姿勢で、次世代に希望を手渡すメッセージを届け続けている。
●さかなクン
魚類学者・タレント・イラストレーターとして幅広く活躍し、東京海洋大学名誉博士・客員教授も務める。中学生時代にカブトガニの人工ふ化に成功、2010年には絶滅種クニマスの再発見に貢献した。テレビや講演では、魚への深い愛情とわかりやすい解説で人気。最新著書は『さかなクンのギョギョッとサカナ★スター図鑑4・5』(講談社、2025年11月)。
























































































