井ノ原快彦×本上まなみが語る『映画 すみっコぐらし』が愛され続ける理由 「大人になっても残る親子の“共通言語”に」

『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』公開記念インタビュー (2/2) 1ページ目に戻る

ライター:小川 聖子

井ノ原快彦さん
井ノ原快彦さん
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──『映画 すみっコぐらし』シリーズは4作目です。過去には、絵本の世界に吸い込まれたり、魔法使いに出会ったり、工場で働いたりしてきたすみっコたちですが、作品が決まったときはどう思われましたか。

井ノ原さん また本上さんとお仕事ができることが嬉しかったですし、「今度はこのコたち、どうなっちゃんだろう」とワクワクしました。

僕は「えびふらいのしっぽ」推しなのですが、今回の活躍も「そうくるんだ!」というのがかわいかったですし、他のコたちの今後も楽しみだなと思いました。

本上さん 映画も4作目になり、キャラクターたちの個性も確立してきた今、「まだできることってあるかな?」と思っていたところ、今回はなんと「冒険もの」でした!

冒険ものって一番ワクワクしますよね。雲の上に王国があって、そこですみっコたちが活躍するなんて……こんな素敵なお話はありません。

幼いころに夢見ていたような世界が映像として立ち上がって目の前に現れるのも素敵ですし、スケールが大きくてワクワクしました。

私はいつもふろしきを手放せないしろくまが推しだけど、今回は「衣装」もあるから、どうするんだろう? と密かに心配していたのですが、衣装の下にしっかりふろしきを身につけていて……。

これがもう、私にはかわいいツボでした(笑)。

──(笑)。オリジナルキャラクターとして「おうじ」と「おつきのコ」が出てきますが、どんな印象を持ちましたか。

井ノ原さん おうじは「自分が背負っていかなきゃいけない」という責任感が強いコですよね。

だからこそ空回りもしてしまうのですが、自分の非を認めたり、心情を吐露できるところを見ると、育ちがいいというか、王国を任せられるコだなという安心感が持てました。

おつきのコとの関係がいいので、いつまでも一緒にいてほしいなと思いましたね。

本上さん おうじは、自分の父親である王様が「こうなりたい」という理想像なんですね。

だから自分も同じように立派に活躍して、幸せな国をつくりたいと思っているけれど、まだまだ見習い中だから、ひとりで頑張りすぎたり、隣にいる人の助けに気がつけなかったりします。

おつきのコが「ここにいるよ!」と手を差し伸べてもなかなか伝わらなくて、そういうところにキュンキュンしました。

おつきのコも、おうじを思うがゆえに「自分はどこまで助けていいのかな」と様子をうかがってしまうから、結果すれ違ってしまったりして……このあたりも見どころです!

井ノ原さん そうですね。なかなかうまくいかないんですよね(笑)。

本上さん そう。私自身、子どもの頃にひとりで頑張りすぎてしまった経験があるので、おうじの気持ちはわかります。

私の場合も、ひとりではうまくいかなかったことが、みんなでやったら上手くいって、そのときにすごく心が満たされたんです。

その経験は、私が成長する上でも大切な瞬間だったなと思い出されます。

おつきのコの気持ちも、子育て中の自分の子どもを見ていると、「あ、この子は今ちょっと足踏みしている時期かな」「背中を押したいけど、今は見ているだけがいいかな」なんて、考えることがあるのでそれに近いのかな、と。

ですから、おうじとおつきのコの関係性を見たら、「この感じ知ってる、わかる」と思われる方は多いのではないかと思います。

おじいちゃんおばあちゃんが孫を見守る感じ

本上まなみさん
本上まなみさん
──今作でも、すみっコたちはしゃべらず、すみっコたちの動きやすい字幕、おふたりのナレーションによってお話が進んでいきます。ナレーションという役割について、おふたりはどう考えられていますか。

井ノ原さん なかなか特殊ですよね。我々の存在ってなんだろうと思うこともありますが、それが不思議で面白いところだと思っています。

例えて言うなら、おじいちゃんやおばあちゃんって、まだしゃべれないよちよち歩きの孫や赤ちゃんに、「そうなの、楽しいの」みたいなことを勝手に言ったりするじゃないですか(笑)。

僕たちはその感じに似てるのかなぁ、なんてことを思いながらやっています。「いつも見ているよ」「ずっと見守っているよ」という思いですね。

本上さん そうですね。井ノ原さんがすみっコに寄り添ってくれるので、私は物語の進行役という感じで入っていることが多いですね。

井ノ原さんの声は、さっきおっしゃっていた見守ろうという気持ちが声になった感じ。ふわふわ、モチモチ、やわやわでかわいい。

すみっコが言葉を発したらこんな感じなのかも、と思わせてくれるくらい、井ノ原さんの声あってのすみっコだと思います。

井ノ原さん ありがとうございます(笑)。ナレーションをふたりで分担してこの形にするというのは、世界にもなかなか例がないのではないかと思います。

でもこれ、慣れるとこれがとても心地よくて……。本上さんがしっかり状況も説明もしてくれてるので、僕は安心して見守っています。

「大丈夫か? 大丈夫か?」と盛り上がるところも、サッと冷静に戻してくれる感じ、好きですよ(笑)

本上さん ありがとうございます(笑)。今作も映画館で観るのが楽しみですよね。

井ノ原さん 本当ですね! 僕は映画が公開すると、今までも全作品映画館に観にいっています。

曜日と時間帯によっては、子どもたちが笑ったり、「違うだろ(笑)」と突っ込んだりする姿が見られるのですが、それがものすごくかわいいんですよ。

「この子たちにそんな感情があるんだ」と驚くこともありますし、大人も自分が子どもだった頃のことも思いだせるような、とてもいい時間なんです。

本上さん わかります。映画館はみんなで一体になれる感じがあっていいですね。子どもたちは物語に入り込んで、本当に喜んだり、悲しんだり、ドキドキしたりして見てくれて。

少し怖いところもあるかもしれませんが、すみっコは優しい作品ですし、「よかった!」「大丈夫だった!」と安心してもらえると思います。

井ノ原さん みんなが思わず声を出しちゃうって、すごく楽しいからですよね。その瞬間は本当にエンターテインメントだなという気がします。

大人になっても残る親子の「共通言語」に

──「Ane♡ひめ.net」を読んでいる方は、子育て中の方も多いのですが、今作はまさに親子で観られる作品です。なにかアドバイスやメッセージがあればいただけますか。

井ノ原さん 映画も舞台も、エンターテインメントは帰りに感想を言い合うのが楽しいですよね。

「あそここうだったね」「このときこう思った」みたいなことをたくさん話しあって、その後に例えば日常会話で、「それじゃえびふらいのしっぽじゃん(笑)」みたいな、お互いにわかりあえる「共通言語」としてすみっコを使ってもらうのもいいかなと思います。

子どもはあっという間に大きくなって、友達ができたら親と過ごす時間はどんどん減っていきます。寂しいですが、それが成長ですからね。

でも、「幼い頃、親とすみっコの話をたくさんしたな」という記憶は残りますし、そこで培った親子でわかる「共通言語」はきっと大人になっても使えるもの。

だから今のうちにそんな「共通言語」をひとつでも増やしておけたらいいんじゃないかと思います。

『映画 すみっコぐらし』には、そんな会話に使えるもってこいのキャラクターやエピソードがたくさんありますから、そんな視点でも観ていただけたらと思います。

本上さん そうですね。感想は、子どもによってはすぐに伝えるのが得意じゃない子もいると思うんです。

私はどちらかというとそちらタイプで……。でもうまく言えないなりに感じていることはあるんです。

「親と隣同士座って見たな」という劇場の記憶だったり、「このワンシーンだけすごく覚えている」という作品内のことだったり。

そういうものが後から響いてくる子もいるので、すぐに感想が出てこなくても、「まぁ、楽しかったのかな」と優しく見守っていただけたらと思います。

そのうち、急にその日のことを話しだしたり、あるシーンの真似をしだしたりすることもあるかも。

そのときに、「あ〜、これあのシーンのあれだよね! 楽しかったね!」と声をかけてもらえたら、その子は嬉しいと思います。

生きていく上で大切にしたいことが詰まっています

──改めて、『映画 すみっコぐらし』が愛される理由はどんなところにあると思いますか。

井ノ原さん たくさんありますが……そういえば本上さんは、自身が作品に関わる前からすみっコぐらしが好きでしたよね?

どういう気持ちだったんですか、映画化すると聞いて。何が一番嬉しかった?

本上さん な、何が一番嬉しかった!?(笑) なんでしょう、最初はお店のグッズを買おうと並んでいたり、グッズをつけている子どもたちがフニフニぎゅうぎゅうしているのがかわいくて。

「愛でている人ごと癒されている」というのが良いなと思ったんですね。

さらに、それぞれのキャラクターには性格も得意不得意もあるんだけど、多くを語りすぎないところも良いというか。

それでも「うんうん、このコはこれが好きなのね」「このコがこれを苦手なのわかる、わかる」というのが伝わってきて。

だから、最初に映画になると聞いたときは、「それってどうやるんだろう」と思ったのですが、とてもうまく表現されていて。

いろいろな物語のなかで、すみっコたちはすみっコたちらしく、ありのままの姿でいてくれている、ということが嬉しかったですね。

井ノ原さん 確かに意外性はあっても「それは違うだろう」ということはないですよね。

僕がナレーションをしているから、ときどき「うちの子どもが大好きです」などのお声をいただくことはあるのですが、あるとき大人のタレントさんに「実は私、すみっコに救われたんですよ」と言われたことがあるんです。

その方はコロナ時期にずっと家にいて不安で仕方がなかったとき、配信で『映画 すみっコぐらし』を観たのだそうです。

それで、「自分ひとりじゃないんだと思えて泣けてきた」ということをおっしゃっていて……。

子どもたちだけでなく、大人にも届いているということが改めて嬉しかったですね。

本上さん すみっコは、焦らずゆっくり進めばいいことや、誰かがそばにいて、寄り添ってあげるだけでも勇気づけられること、みんなで一緒に頑張ることなど、生きていくうえで大切にしてほしいことがいろいろ詰まっていますよね。

井ノ原さん そう。今作では、すみっコたちも、空の上のキャラクターたちも、みんなそれぞれ困っているところから物語がスタートします。

そんな両者が力を合わせて問題を解決していく設定に、大人は勝手に日本の現状を重ねたり、深読みしていくこともあると思います。

すみっコは、無条件にかわいくて癒されるということが一番大きいですが、「こんなコたちがいてくれたら嬉しい」とか、「この中のキャラクターに自分も当てはまるかも」と思えるところがあって、それがまた多くの方に愛されている所以なのかもしれません。
井ノ原快彦
ヘアメイク/松本未央(GON.)
スタイリスト/前田勇弥

本上まなみ
ヘアメイク/笹浦洋子
スタイリスト/吉村由美子
衣装/humoresque アクセサリー/SOURCE
『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』
『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』
©2025 日本すみっコぐらし協会映画部
2025年10月31日(金)全国ロードショー

ナレーション:井ノ原快彦 本上まなみ 主題歌:木村カエラ「君の傘」(ELA/Victor Entertainment)

原作:サンエックス 監督:イワタナオミ 脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画) 美術監督:日野香諸里

アニメーション制作:ファンワークス 配給:アスミック・エース

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おがわ せいこ

小川 聖子

Seiko Ogawa
ライター

東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。

東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。