――『はたらく細胞』は、シリーズ累計930万部突破(電子版、関連書籍等含む)を突破した大人気マンガで、アニメにもなって注目を集めました。関連のスピンオフ本も多数発行され、累計45万部の「はたらく細胞 図鑑シリーズ」の新刊『びょうきとたたかう! はたらく細胞 ワクチン&おくすり図鑑』が刊行されました。まず最初に『はたらく細胞』をご覧になった時にどう思われましたか?
石井先生:『はたらく細胞』との最初の出合いは、息子が9歳くらいのときです。子どもに買ってあげたのに、親の私のほうが夢中になってしまって。免疫学の本はたくさんあるのですが、ここまで免疫学の本質に迫る本はなく、すっかり感激してしまいました。その後、免疫学の偉い先生方にも「騙されたと思って読んでください」と言っておすすめしているのですが、みなさん「面白い」とおっしゃってくださいますね。
――どこがそれほどよいのでしょうか。
石井先生:免疫学の本質とは、「自分と自分でないもの(自己と非自己)」を体はどうやって見分けているのだろう、ということを哲学のように突き詰める学問なんです。それをきちんととらえています。
そのうえで免疫細胞をキャラクター化して、敵と味方に分けて、ときには闘い、ときには共生し合いながら、キャラクター同士の会話で分かりやすく子どもに教えてくれています。これは素晴らしいと思います。
たとえば、「怖がり屋のナイーブT細胞」は、やがて活性化して筋肉ムキムキのT細胞に成長しますが、そのキャラクター設定はほんとに学者が涙するほど正しいんですね。樹状細胞のようなちょっと言葉では伝えにくいような細胞も、なるほどと思わせるようなストーリーになっています。ただ、コミックスはバトルシーンが多いので、小学校低学年や未就学の子どもには、アニメをおすすめしています。
――『はたらく細胞 ウイルス&おくすり図鑑』のなかで、親子でぜひ読んでほしいのはどのあたりでしょうか?
石井先生:新型コロナでいえば、「新型コロナウイルス感染症ってどんな病気?」というページで、新型コロナを分かりやすく説明するとともに、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの違いを表や図解を入れて説明しています。ここなどはいいポイントですよね。
「この間打ったワクチンは、どんなものだったのかな」と、生活に密着した情報として読むといいのではないでしょうか。体験を踏まえて話しながら読める、そんな図鑑はめずらしいですよね。
石井 健
東京大学医科学研究所感染・免疫部門ワクチン科学分野教授、同研究所・国際ワクチンデザインセンター・センター長。横浜市立大学医学部卒業。臨...