X-01 エックスゼロワン [弐]

著:あさの あつこ   絵:田中 達之  

発売日 2017/09/27
価格 定価:1,045円(本体950円)
ISBN-13 9784062695121
判型 四六
ページ数 178ページ

中原の小国・永依は、滅亡の危機を迎えていた。少女ラタは、父親の死後、クシカ将軍の養子となり、12歳で迎えた初陣で「破壊神」の名にふさわしい戦いぶりを示す。N県稗南郡稗南町には由宇という少女がいた。15歳の誕生日の前日、大好きな父親が「らた」「えっくすぜろわん」と言い残して急死すると、黒づくめの男たちが稗南町を急襲した。なぜ襲われたのか? 父の死との関係は? 由宇の命は?


 中原の小国「永依(えい)」は、火国、勃国の2大国に挟まれ、滅亡の危機を迎えていた。ラタは、永依で身分の低い両親のもと3人きょうだいの長女として生まれるが、父親の死後、クシカ将軍の養子となった。戦士に必要なあらゆる技を体得したラタは、12歳で迎えた勃国との戦いで、「破壊神」の名にふさわしい戦いぶりを示した。
 一方、N県稗南(ひなん)郡稗南町には由宇(ゆう)という少女がいた。15歳の誕生日の前日、大好きな父親が「らた」「えっくすぜろわん」と言い残して急死する。すると、黒づくめの男たちが稗南町を急襲し、破壊した。由宇は、敵から逃れる途中で、母親から「X-01は人間が創り出した最も大きく、激しい恐怖」と教えられる。
 運命に翻弄されるラタと由宇。2人の行く手に待っているのは?

目次より――
1 地獄の底から
2 天空からの光は
3 生と死の交差する場所
4 鬼神の宴

「第1章 地獄の底から」より――
 草原は兵に埋め尽くされていた。
 敵の、だ。
 敵、火国の軍旗がはためく。
 火を噴く獅子の紋章は、風に揺れ、獅子そのものが猛り狂っているように見える。旗音は西から東に吹き過ぎる風に乗って、永依国の陣まではっきりと届いてきた。
 まさに、咆哮だ。
 圧倒される。
 永依の兵士たちは、血の気の無い顔で押し黙り、身を縮めていた。犲虎が自分たちを食い千切り、餌食にしようと狙っている。口にこそしなかったが、あるいはできなかったが、自分たちを兎のごとく感じ、おびえ竦んでいたのだ。
「不味いな」
 リャクランが干し肉をかじりながら、呟いた。
「ちょいと不味いぞ、ラタ」
「どっちがだ」
「うん?」
「干し肉か戦況か、不味いのはどっちだ」
 リャクランが肩を竦める。口の中の肉を飲み下す。
「こういう状況で冗談が言えるとは、さすがに『漆黒の鬼神』だけのことはあるな」
 ラタとリャクラン。
 永依国の武将と軍師であり、十歳に満たないころからずっと、寝食を共にしてきた間柄だ。
 友ではない。仲間でもない。むろん、恋人でも愛人でもなかった。(以下、本編にて)

1 地獄の底から 2 天空からの光は 3 生と死の交差する場所 4 鬼神の宴

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角野 栄子
児童文学作家
1935年東京・深川生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て24歳からブラジルに2年滞在。その体験をもとに描いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で、1970年作家デビュー。 代表作『魔女の宅急便』は舞台化、アニメーション・実写映画化された。産経児童出版文化賞、野間児童文芸賞、小学館文学賞等受賞多数。その他、「アッチ、コッチ、ソッチの小さなおばけ」シリーズ、『リンゴちゃん』『ズボン船長さんの話』。紫綬褒章、旭日小綬章を受章。2016年『トンネルの森 1945』で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、18年3月に児童文学の「小さなノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞作家賞を、日本人として3人目に受賞。 2023年には、江戸川区に「魔法の文学館」がオープンした。 写真提供:魔法の文学館 童話作家・角野栄子のオフィシャルサイト 魔法の文学館オフィシャルサイト
ナコ
イラストレーター
宮城県仙台市在住。イラストレーター。アパレル・キャラクターのデザイン会社にてグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍後に、フリーに転身。現在は、書籍や雑誌、広告のイラストから企業キャラクターデザイン、エッセイ漫画執筆、雑貨やテキスタイルデザインも手がけている。ブログ、SNSでもエッセイ漫画を公開中。 【著書】「ナコさんちの頑張らない家事」(KADOKAWA) ▼webサイト▼ https://nfsn66.net/ ▼ブログ▼ https://ameblo.jp/nacomusud/ ▼instagram▼ naco.nfsn66 ▼Twitter▼ @nfsn66
佐野 洋子
絵本作家・エッセイスト
1938年6月28日中国・北京生まれ。武蔵野美術大学デザイン科卒業。 主な作品に『100万回生きたねこ』(講談社)、『おじさんのかさ』『おばけサーカス』(講談社・サンケイ児童出版文化賞推薦)、『すーちゃんとねこ』(こぐま社)、『わたしのぼうし』(ポプラ社・講談社出版文化賞絵本賞)、『だってだっての おばあさん』(フレーベル館)、『ねえ とうさん』(小学館・日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)などの絵本や、童話『わたしが妹だったとき』(偕成社・新美南吉児童文学賞)、さらに『神も仏もありませぬ』(筑摩書房・小林秀雄賞)、『役にたたない日々』(朝日新聞出版)、『シズコさん』(新潮社)、『死ぬ気まんまん』(光文社)、『佐野洋子対談集 人生のきほん』(西原理恵子/リリー・フランキー 講談社) などのエッセイ、対談集も多数。 2003年紫綬褒章受章、2008年巌谷小波文芸賞受賞。2010年11月5日72歳で逝去。 ©︎ JIROCHO, Inc.               
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