
150万部超えの『NO.6』がついに続編を刊行! あさのあつこも「予測不能」の「ふてぶてしい」登場人物とは
『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』刊行記念 あさのあつこさんインタビュー 前編
2025.04.28
ライター:山口 真央
紫苑がしたたかで貪欲な青年だとは思わなかった

──『NO.6』の見どころといえば、紫苑とネズミの情熱的な関係です。紫苑には、どんな思いがありますか。
あさの:私の描く物語の登場人物は、書き始めたときの印象から、性格や行動が逸脱していくことがよくあります。
「えっ、そんなことしちゃうの?」などと、書いていて思うことは日常茶飯事です。
たとえば紫苑は、『NO.6』のお話がスタートしたとき、紫苑は理想国家の安全な場所で暮らしているエリートでした。
ネズミと出会って、彼を取り巻く世界が変わっていく。自分が無知であることを自覚して、成長していきます。
最初はピュアだと思っていた紫苑ですが、物語がすすむにつれ、したたかで貪欲で、感情的な姿を見せていきます。
どんどん、わからなくなっていく。とても魅力的な青年です。
──では、ネズミにはどんな思いがありますか。
あさの:前シリーズを書き始めたのは9.11の直後で、相手を殺したいほど憎めるテロリストとは、どんな人物なんだろうという疑問から、ネズミが誕生しました。
きっと憎しみや破壊だけではない、何かがある。書くことで、全体像を知りたいと思ったんです。
このお話は、紫苑の成長劇のように捉えられがちですが、ネズミも変化していきます。
しかも、テロリストとか愛国者とか、そういう枠組みにいない、紫苑というひとりの青年によってです。
彼らの化学反応を、どうしても書きたい、絶対に追いかけたいという思いで、9巻まで書きました。