梶裕貴が『NO.6』の「タブーと思っていたこと」をあさのあつこに質問! 梶が声優人生のターニングポイントが『NO.6』だったと語る理由

作家・あさのあつこ×声優・梶裕貴 『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』刊行記念スペシャル対談 後編

ライター:山口 真央

梶「ずっと、あさの先生に聞けなかったことがあります」

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:最後に1つだけ、お伺いしたいことがあります。タブーな質問かもしれないのですが。

あさの:はい、遠慮せずどうぞ。

:紫苑とネズミのキスの描写というのは、先生のなかには、どのような真意がおありなのでしょうか? 読者はそれぞれのなかで正解を見つけるのが読書であって、それを筆者にお伺いするのは無粋だと思いつつ……。

当時、該当シーンを演じたときの、こたえ合わせと言いますか、これから演じるうえでの心構えのためと言いますか、気になっておりまして。

あさの:「それしかない」という感じなんです。ただふたりは、熱くしかなくって。お互いがあそこまで求め合う関係でないと、この世界は支えきれないという感じです。

:なるほど。……いま、とてもホッとしています。アニメ『NO.6』のアニメで紫苑を演じていたときからずっと「ふたりの関係って何と形容するのが相応しいのだろう?」と考え続けてきました。

でも、僕のなかでは何度思いをめぐらせてみても、やはり最終的には「言葉ではたとえられない、形のない、すべての概念を超越した関係こそが、ふたりの間をつないでいるんだろう」という結論にたどり着いていたので。

それが間違っていなかったんだと、やさしく抱きしめてもらえた気がして……。いま涙が出そうなくらい、幸せな気持ちになりました。

あさの:私は、読んでくださった方が、どう受けとってくれてもいいと思っています。

ただ、恋愛小説とか近未来小説とか、ジャンルに入れて作品を解釈をしようとするけれど、それをされてしまうような、やわな作品は書きたくない。そういう枠を蹴飛ばすような、ふたりの関係を書きたいんです。

:なるほど。友達とか恋人とか、そんな枠におさまらない関係だからこそ、たくさんの読者の心を摑んでいるのでしょうね。教えてくださり、本当にありがとうございました。

あさの:こちらこそです。梶さんも紫苑とネズミの関係を私と同じように感じていたと聞いて、ちゃんと伝わっていたんだなと。私がやってきたことが、間違いじゃなかったと感じました。

:『#1』での紫苑とネズミの描写も、見事にドラマチックでロマンチックで、本当に感動的でした。『#2』も心から楽しみにしています!

あさの:がんばります! 久しぶりに梶さんとお話しできて、嬉しかったです。本日はありがとうございました。

あさのあつこ
岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991年『ほたる館物語』で作家デビュー。97年『バッテリー』で第35回野間児童文芸賞、2005年『バッテリーⅠ~Ⅵ』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説までさまざまなジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

梶裕貴
東京都生まれ。中学のころから声優を目指し、2004年より活動開始。2011年「NO.6」にて主演の紫苑役をつとめ、注目を集める。「進撃の巨人」エレン・イェーガー役、「七つの大罪」メリオダス役、「僕のヒーローアカデミア」轟焦凍役、「鬼滅の刃」錆兎役などの役でアニメ出演するほか、吹き替え、ラジオ、ナレーション、映像、舞台など幅広く活躍。2024年より、梶の声をもとにした音声合成ソフトのプロジェクト「そよぎフラクタル」を始動。自身で企画を立案するなど、精力的に活動する。

アニメ化、漫画化され150万部超えのベストセラー『NO.6』が、14年ぶりに『NO.6[ナンバーシックス]再会』シリーズとしてスタート!

二人は、再び、誰もが虐げられない世界をつくることができるのか──?
罠だらけの現実に二人は「希望」を見つけることができるのか──?

紫苑とネズミのかけがえのない「結びつき」と「戦い」を見届けてください!

●「NO.6」シリーズ読者からの感想
「たくさん本は読んできたけれど、これ以上面白い本に出合ったことがない」
「呼吸を楽にしてくれた本」
「死にたくなったらネズミの言葉を思い出します。逃げずに前へ進め! 現実を見ろ!
どんなに現実が辛くても光を見いだせる人になりたいと思います」
「泣きたくなった夜に読みます。おまえはどうありたいんだ? いつでも自分にできることを問いかけ、動きつづけたいと思います」

●あさのあつこさんからのメッセージ
声を聞きました。ネズミの声です。
「生きる場所も死ぬ場所も自分で決める。あんたじゃなくおれが決める。余計なお節介は止めてもらおうか」と。
そうか、彼らはすでに出逢い、運命を紡ぎ始めているのか。
だとしたら、わたしも、もう一度だけ、本当にもう一度だけ、彼らに手を伸ばそう。この手で彼らの生に触れてみよう。
『NO.6』の作者として戦ってみよう。あれほど恋い焦がれた少年たちに挑んでみよう。
今はただ、それだけを考えています。
14年の時を経て、あなたに再び『NO.6』を届けます。

撮影/日下部真紀

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

あさの あつこ

Atsuko Asano
作家

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリーI~VI 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリーI~VI 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。