
広がりつづける妄想力・発想力 ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』

ヨシタケシンスケ ブロンズ新社
頭の中で想像をふくらませたり、おかしな言葉を延々考え続けていたり、子どもの頭の中は、つねに自由。
ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』は、主人公の少年が、テーブルの上にあるりんごを見て、「これは りんごじゃないかもしれない」と、想像を次々とふくらませていく絵本です。
その中に「りんごには きょうだいが いるのかもしれない」と、
らんご りんご るんご れんご ろんご
りんごの兄弟の見た目まで、つぶさにイメージする場面があります。
さらには
あんご いんご うんご えんご おんご かんご きんご くんご けんご こんご
……と50音すべてのきょうだい(?)を見開きで思い描いていきます。

この「らんご りんご るんご れんご ろんご」のくだりでも、かなりの確率で笑いが起きます。
ことばあそびから発想があさっての方向に! トム・ブラウン『がったい』

出演/トム・ブラウン 作/こにしけい、たなかけんた 絵/萬田翠 講談社
出演トム・ブラウン、作こにしけい、たなかけんた、絵・萬田翠『がったい!』は、M-1グランプリなどでおなじみの芸人トム・ブラウンのネタをもとに作られた絵本ですが、この作品も、ことばあそびが爆発しています。
「パンを5つがったいさせて さいきょうのパン キングパンを つくりたいんですよ~」
と始まり、まずはパンとチンパンジーが合体した「パンチンパンジー」ができあがります。

次にチンパンジーとパンチパーマが合体して「パンパンパンチパーマチンパンジー」になり、さらにはパンチパーマチンパンジーとパンチパーマパンダ、パンチパーマレッサーパンダ、パンチパーマパンサー、パンチパーマパンケーキリクガメが合体して……と「パン」を軸にどんどんことばあそびがエスカレートしていきます。
ことばだけで見ると狂気すら感じるかもしれませんが、ほんわかした絵のタッチと「合体」すると、かわいらしさとおかしさがあふれた、ファンタスティックな世界が広がる絵本になっています。
こんなふうに「ことばのひびき」が楽しいかどうかも、子どもがにっこりする絵本かどうかに関わる要素のひとつです。
笑える絵本で、子どもが本に夢中になる時間を
どうしても大人は子どもに与える本を選ぶときに「意味」や「物語」、「学びになるか」といった視点を優先してしまいます。でも実は「何を読むか」以上に本人が「夢中になって読む」ことこそがむしろ読解力向上につながることがわかっています。
「ただキャラクターの顔がおもしろいだけじゃないの?」とか「ことばあそびをしているだけで意味がわからない」と大人目線では懸念してしまうかもしれませんが、笑える絵本は「本っていいな」と感じてもらうきっかけ、入り口にもなります。
家族での楽しい時間づくりにつながる「子どもが笑顔になる絵本」ぜひ本屋さんで探してみてください。
飯田 一史
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』『ウェブ小説30年史』ほか。JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』『ウェブ小説30年史』ほか。JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。