発達障害の特性のある子どもを持つ父親への支援【前編 父親の実態】〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説

#14 発達障害の特性のある子の父親のストレス

言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

(4)難しい父子の「関係」…強引に関わる、脅す、煽る、おちょくる、𠮟る

発達障害の特性のある子どもと良い関係を築くには、子どもの特性を理解し、子どもがわかるような工夫をしながら関わることです。子どもが「そういう伝え方をしてくれるとわかる」「そういう関わり方をしてくれるとうれしい」と思う関わり方をすることです。

母親は、医師やセラピストや支援者から教えてもらったり本を読んだりして情報を集め、トライアンドエラーを繰り返す中で、「子どもの特性を理解し、子どもがわかるように関わる」ことができるようになっていきます。そうしないと日々の生活ができない(ご飯を食べない、顔を洗わない、トイレで排泄ができない、道順にこだわるから家に帰りつけないなど)という状況の中で母親は必死で学んでいるのです。

しかし、子どもと一緒にいる時間が短い分、父親は母親と比べれば困ることも少なく、そのように必死に学ぶことを「せずにすんでしまっている」場合が多いです。そして「子どもの特性を理解し、子どもがわかるように関わる」関わり方を知らないままに、子どもと向き合うことになります。

何度もお話をすることですが、発達障害の特性のある子どもはその子の特性を理解し、その子がわかる関わり方をしない限り学べません。𠮟っても叩いても厳しくしても、それでうまくいくことはまずありません。

相談で話を聞くと、父親は子どもとの関係づくりがうまく行かないと、強引に関わる、脅す、煽る、おちょくる、𠮟るなど、子どもが嫌がる関わり方をすることが多いようです。

もちろん、子どもに嫌われたい父親がいるはずもなく、ただただ、どうしていいか、わからないのでしょう。しかし、それでは子どもとの関係はよくなりようがありません。このような状況にある父親をどう支援したらいいのでしょうか。

次回は、今回みてきた父親の「実態」を前提として、発達障害の特性のある子の父親への具体的支援について考えます。

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今回は、「発達障害の特性のある子どもを育てる家族への支援」の中から、発達障害の特性のある子を持つ父親の現状とストレスについて原哲也先生に解説していただきました。次回第15回では、そんなお父さんたちにどんな支援があるのか、具体的に教えていただきます。

原哲也
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事・言語聴覚士・社会福祉士。
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。

2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。

著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。

児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」

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はら てつや

原 哲也

Tetsuya Hara
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」