「夜泣きでも寝てる」夫に妻はイライラ…「夫婦喧嘩の2大場面」子育て家庭のモヤモヤ解決法を専門家が解説

パパに家のことを任せたら…

▲家事育児を任せたら大変なことに! 夫婦喧嘩が勃発しがちなあるあるエピソード(写真:アフロ)
▲家事育児を任せたら大変なことに! 夫婦喧嘩が勃発しがちなあるあるエピソード(写真:アフロ)
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たとえば妻の具合が悪くなり、寝込んでしまったとき。家のことを夫に任せたら、台所はぐちゃぐちゃ、子どもは放ったらかしでYouTube漬け……。

「私が病気になったとき、ここまで夫に頼れないの?」そう失望したことのある人は、多いのではないでしょうか。

当然のことですが、パートナーが病気で家事や育児をできないときに、代わりを務められないのは改善すべき問題です。

このような状況を、布柴先生は「全く良いことではないですが」と前置きしつつ、「これも個人を超えた、社会問題からくる不公平」と解説します。

「性別役割分業の社会では、家族のケアをするのは女性と決まっていました。家庭の中では父親はケアを『させられてこなかった』。そこで育った夫たちは、妻や子にケアが必要なとき、何をしていいのか・してはいけないのか、最低限のラインも分からないのです」

多くの場合、夫の側に悪意はありません。原因は、夫からケアを学ぶ機会を奪ってきた、これまでの社会構造なのです。

そのツケを現代の妻たちが、病気のときに払うのは切ないことですが……体調不良でしんどいときに、さらにイライラ・モヤモヤを重ねないために、できる対策はあります。

「最低限から」のススメ

「まず、最低限のことから任せましょう。食器洗いなら拭くまで・棚にしまうまでしてほしいと、具体的に示します」

たとえば、子どもに動画を見せるのも、何を何時間まで、それ以外では本を読んでほしい、このおもちゃで遊んでほしい、と具体的に伝えるのです。

なんで私がここまで細かく指示しなきゃダメなの? ちょっとは自分で考えて判断してよ! そう感じる場合もあるかもしれません。

ですが夫婦仲をよい形で維持したいのであれば、そこでも対話を諦めないことが大切です。

対話をするためにはまず、目の前のパートナーに怒りをぶつけない。その怒りの原因を「夫は育った家庭で、ケア役割を学ぶ機会がなかった人なのだ」と理解して、向き合うことが必要です。

そして大切なのは、その「最低限」ができていたら、感謝の言葉を忘れずに伝えること。それはその場限りのコミュニケーションではなく、同じイライラ・モヤモヤの予防に繫がるからと、先生は強調します。

「確実に夫婦仲が良くなる」布柴先生のアドバイス

「家庭内で家族をケアしてこなかった人は、それをしたら喜ばれる、という成功体験も知りません。成功体験の嬉しさを重ねると、人は次第に、自分から動くようになります。そうして夫婦仲がどんどん良くなった例を、カウンセリングでいくつも見てきました」

感謝の言葉は、夫婦間のイライラ・モヤモヤを引き起こさない予防策。つまり、妻の側の心の安らかさのためにも、よい効果のある行動なのです。

「この成功体験づくりは、病気ではない平時から重ねておくのがおすすめです。家事のスキルが夫より高い妻にとっては、任せるのは勇気がいること。ですが確実に夫婦仲が良くなりますので、ぜひ『任せる勇気』を持ってください」

夫婦仲が改善すると、妻にも夫にも、ひいてはそこで育つ子どもたちにも、ポジティブな効果が現れる。40年のカウンセリング経験から、布柴先生は確信しています。

読者のみなさんもぜひ今日から、試してみるのはどうでしょう?

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子育て世代にむけた「夫婦喧嘩のイライラ・モヤモヤ解決法」は全3回。第1回となる今回は「夜泣き対応」などの場面を取り上げました。

夫婦の間にまだまだある、子育ての日常でのイライラ・モヤモヤのエピソード。その中には、一見思いもよらない、父親たちの驚きの心理が隠されていることも。

次の第2回では「子どもの世話で仕事を休むときのイライラ・モヤモヤ」などのエピソードをピックアップ。引き続き、イライラ・モヤモヤの仕組みを解きほぐし、具体的な対策と予防策をご紹介します。

取材・文/髙崎 順子

【第2回】8月7日(木)公開

【第3回】8月8日(金)公開

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ぬのしば やすえ

布柴 靖枝

Yasue Nunoshiba
文教大学教授・日本家族心理学会理事

文教大学人間科学部臨床心理学科教授、文教大学大学院付属臨床相談研究所 所長。 京都大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。 家族心理学、統合的家族療法が専門。長年にわたりカウンセリングに従事。女性問題やジェンダーを基に生じる暴力(DV、ハラスメントなど)への支援を、心理臨床のみならず、国連の活動に関わり、グローバルな活動を展開している。 日本家族心理学会理事,認定NPO法人日本BPW連合会理事長,国連NGO国内女性委員会副委員長,内閣府男女共同参画推進連携会議議員,埼玉県男女共同参画審議会会長,一般社団法人DICTネットワーキング研究会共同代表理事(2025年7月1日現在) 資格:公認心理師,臨床心理士,家族心理士,社会福祉士,上級教育カウンセラー

文教大学人間科学部臨床心理学科教授、文教大学大学院付属臨床相談研究所 所長。 京都大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。 家族心理学、統合的家族療法が専門。長年にわたりカウンセリングに従事。女性問題やジェンダーを基に生じる暴力(DV、ハラスメントなど)への支援を、心理臨床のみならず、国連の活動に関わり、グローバルな活動を展開している。 日本家族心理学会理事,認定NPO法人日本BPW連合会理事長,国連NGO国内女性委員会副委員長,内閣府男女共同参画推進連携会議議員,埼玉県男女共同参画審議会会長,一般社団法人DICTネットワーキング研究会共同代表理事(2025年7月1日現在) 資格:公認心理師,臨床心理士,家族心理士,社会福祉士,上級教育カウンセラー

たかさき じゅんこ

髙崎 順子

Junko Takasaki
ライター

1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。

1974年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、都内の出版社勤務を経て渡仏。書籍や新聞雑誌、ウェブなど幅広い日本語メディアで、フランスの文化・社会を題材に寄稿している。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)などがある。得意分野は子育て環境。