【子どもの誤飲・誤嚥】「喉に魚の骨が刺さったらご飯を丸飲み」は悪化の可能性 対処法と受診の目安〔小児科医が解説〕

#11 令和の「子どもホームケア」~子どもの誤飲・誤嚥~

小児科専門医:森戸 やすみ

食べものによる誤嚥にも注意

食事中は、魚の骨のほかに、食べものによる誤嚥(ごえん)にも注意しましょう。誤嚥とは、食べものや異物が、空気の通り道である気道へ入ってしまうこと。保育園や小学校の給食中、誤嚥による窒息でお子さんが亡くなるという悲しい事故が起きています。いざというときのために、正しい対処法を知っておくといいですね。

昔から「食べものを詰まらせたら、掃除機で吸う」という通説がありますが、うまく吸い出せるのかは難しいところです。

誤嚥を疑ったら、以下の方法で対処してください。食べもの以外の異物が詰まったときにも使える方法で、母子手帳にも載っています。

お子さんがぐったりしているとき、突然声が出なくなったとき、顔色が悪いときなどは、窒息の危険性があります。窒息は1分1秒を争うので、すぐに救急車を呼びましょう。

▼1歳未満の場合
・背部叩打法(はいぶ・こうだほう)
子どもの体をうつ伏せにして、救護者の片腕や立てひざにした脚、椅子に座った状態の脚など、柔らかすぎないものにのせる。手のひらで子どものあごを支えながら頭がやや低くなる姿勢を保ち、もう一方の手のひらの付け根で、子どもの背中(肩甲骨の間)を数回強く叩く。

・胸部突き上げ法
子どもの体を仰向けにして、救護者の片腕にのせる。子どもの頭がやや低くなるような姿勢を保ち、手のひらで後頭部をしっかり支える。もう一方の手の指2本で、子どもの胸の真ん中を数回連続して強く圧迫する。

※背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に繰り返す

▼1歳以上の場合
・腹部突き上げ法(ハイムリック法)
子どもの背後から胸のほうへ両腕を回し、片方の手を拳(こぶし)にして、みぞおちの下に当てる。もう一方の手をその上に当てて、両手で腹部を上方向へ圧迫するようにぐっと突き上げる。

4cm以下のものなら3歳児の口に入る

誤嚥しやすい代表的な食べものは、ミニトマト、ぶどう、こんにゃくなど丸飲みしやすいもの、パンやさつまいもなど唾液を吸ってしまうもの、餅など嚙み切りにくいもの、ピーナッツなどの豆類などです。日本小児科学会のガイドラインでは、ピーナッツなどの豆類は、5歳児以下には避けるよう記されています(※2)。

ただ、こうした食べもの自体が悪いわけではありません。食べもののひと口大を小さくする、一度にたくさん口に入れない、急いで食べない、よく嚙むことが、誤嚥を防ぐポイントです。給食でも短時間で完食をめざさないように、お子さんに伝えるとよいでしょう。

誤嚥しやすいものを食べるときは、大人がそばで見ていて、咳をしていないか、むせていないか、顔色が悪くなっていないかなど、お子さんの様子に十分注意してください。

食べもの以外でも事故は起こります。私が勤務していた病院にも、プラモデルのパーツを誤飲したお子さんがいらしたことがあります。

親御さんが「何してるの!」と声を上げたときに、驚いて飲み込んでしまったようです。レントゲンを撮ると気管支の途中に詰まっていることがわかり、外科の先生によって内視鏡で取り除くことができました。

このケースでは、プラモデルのパーツを誤飲したと親御さんが認識していましたが、何を誤飲したのかわからないときは、𠮟らずに正確に聞き出してください。食べものは、レントゲンに写らないので確認しづらいうえ、唾液で崩れてもっと奥に入り込むことがあります。

窒息するほど苦しそうではないけれど、咳き込んでいるとき、ゼイゼイしているときは、気道に何か引っかかっている恐れもありますので、すみやかに医療機関を受診してください。緊急性が高い場合は、救急外来を利用するのもよいでしょう。

母子手帳の後ろのほうに、直径39mmの穴が抜かれたページがあるのをご存知でしょうか。これは、3歳児の口の実物大のサイズです。この穴を通るものは子どもの口の中に入り、誤飲や窒息の恐れがあります。思いがけない事故を防ぐためにも、ぜひ参考にしてくださいね。
〔小児科医:森戸やすみ〕

【子どものホームケアの新常識 その11】
魚の骨が喉に刺さったときは、水を飲んだりうがいをして様子を見て、取れないなら耳鼻咽喉科へ。誤飲・誤嚥したときは、1歳未満は背部叩打法と胸部突き上げ法、1歳以上は腹部突き上げ法で、食べものや異物を取り出す。


取材・文/星野早百合

〈参考〉
※1=魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査 ‐カレイとヒラメは骨に注意!
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/09/press20210908-02-fish.html

※2=食品による窒息 子どもを守るためにできること
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=123

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

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もりと やすみ

森戸 やすみ

Yasumi Morito
小児科専門医

小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

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小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。