
【子どもの虫刺され】ホームケア新常識 「お湯をかける」は効果なし! 虫刺されの予防と正しい対処法〔医師が解説〕
令和の「子どもホームケア」#9~子どもの虫刺され~
2025.05.26
小児科専門医:森戸 やすみ
虫刺されの対処法は誤情報も多い
春以降子どもが外で遊ぶことが増えると、気になるのが虫刺され。虫刺されには「お湯をかけて温める」といった方法のほか、ネットやSNSではさまざまな対処法が散見されます。
はたして、これらは正しいのでしょうか。森戸やすみ先生に伺いました。
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虫刺されのシーズンになると、毎年多くのデマがSNSで拡散されています。
例えば昔から伝わる「ハチに刺されたときはアンモニアをかける」は、実はまったく効果がないことがわかっていますし、「50℃のお湯やドライヤーで温める」「熱い蒸しタオルで押さえる」も完全に間違いで、むしろ低温やけどをする危険性さえあります。
虫の毒素や唾液成分は「石けんで洗って中和する」ことも、「塩を塗り込んで吸い出す」こともできません。
特に蚊に刺されたときの対処法は、身近な分、デマが多く見られるので注意したいところです。子どもは日常的に蚊に刺されやすいですし、かゆみをがまんするのはつらいもの。正しい対処法はもちろん、予防策も知っておくといいですね。
かゆみ止め薬を塗るなら「早め」が鉄則
子どもにもっともよく見られるのが、蚊による虫刺されです。人を吸血するのは主に「アカイエカ」と「ヒトスジシマカ」の産卵前のメスで、吸血するときに注入される蚊の唾液成分に対する反応で、刺された箇所が赤く腫(は)れたりかゆみが出たりします。
この反応には、すぐに症状が出る「即時型反応」と、1~2日後に遅れて症状が出る「遅延型反応」があり、乳児期は「遅延型反応」のため、すぐにはかゆがらない場合がほとんど。幼児期になると個人差はあるものの、「遅延型反応」だけでなく「即時型反応」も起こすようになります。
かゆみは通常、数日から1週間ほどでおさまりますが、がまんできずにかきむしって皮膚を傷つけてしまうと、傷口からブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)が入り込んで、「とびひ」になる恐れがあります。
とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせい・のうかしん)」と呼ばれる皮膚の感染症です。かゆみを伴う水ぶくれやかさぶたが全身にできて、患部を触った手でほかの箇所に触れると症状が広がり、周りの人にもうつります。
かゆみが気になるとき、過剰にかいて皮膚を傷つけ炎症を起こす「かき壊し」や、とびひが心配なときは、早めに市販のかゆみ止め薬を塗りましょう。
かゆみは蚊の唾液成分により、アレルギー反応を引き起こす「マスト細胞」や白血球がヒスタミンやセロトニンなどを放出することで起こるため、これらが放出される前に塗るのがポイントです。
刺されて時間が経ってから、また、かゆみが出てかきむしってからかゆみ止め薬を塗っても十分な効果は得られません。お子さんにはメントール成分が少なく肌にしみない、クリームタイプや液体タイプの薬が塗りやすいでしょう。
パッチタイプのかゆみ止め薬もおすすめです。かゆみを引き起こすヒスタミンやセロトニンの放出を抑える成分が含まれているほか、皮膚を保護してかき壊しを予防する効果もあります。
ただし、小さなお子さんだと、はがして口に入れてしまう恐れがあるので、使用の際には十分に注意してください。
また、0歳児にはほとんど見られませんが、1~2歳児でまれに強いアレルギー反応を起こして刺された箇所が水ぶくれになったり、大きく腫れたりすることがあります。
重度の場合、足の甲を刺されたのに、膝までの一帯が腫れてしまうケースも。そのようなときは保冷剤で冷やし、小児科や皮膚科を受診してステロイド外用薬を処方してもらうとよいでしょう。