不登校だと勉強が遅れる? 専門家が語る「算数6年分を数ヵ月で習得できる」理由

特別公開『フリースクールという選択』おおたとしまさ著 4/4(全4回) (3/3) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

「小1の1学期で学校には行かなくなりました。でも、楽しみながら勉強する方法を教えてくれるちょっと変わった塾を親が見つけてくれて、週1回4時間だけ、そこに通いました。

それだけで、小学校の勉強に遅れは感じませんでした。実際、中学受験もできました。

弟も、まったく小学校には通っていません。塾にも行かなかったので、小6でもかけ算九九ができませんでした。

でも彼も中学受験を決意してからは目の色を変えて勉強しはじめ、なんと1ヵ月で6年間の国語・算数を終えてしまいました」

彼女との議論を通して、「学校って何だろう?」という問いの真意は「学校は本当に子どもをしあわせにしているのだろうか?」であると感じました。

もはやこれは問いというよりも、多くの不登校当事者の叫びではないでしょうか。

学校に行ったってどうせ勉強はしない

私も保護者から「学校に行かなくて、勉強は大丈夫なんでしょうか?」という不安の声をよく聞きます。正直に言うと、それは私にはわかりません。

ただし、学校に行っていれば勉強が自動的にできるようになるなんてことも幻想であることは、わが身をふりかえってみれば誰でも気づくのではないでしょうか。多くのひとは、学校で、勉強なんて、ほとんどしていないのです。でしたよね?

その意味では、不登校の子たちと変わりません。逆に学校に行っていないあいだにたくさんの本を読んで、学校では教えてくれない膨大な知識や教養を身につけたひとだってたくさんいます。

それに、こういうときに念頭に置かれている「勉強」はたいてい、入試を突破するための受験勉強にすぎません。しかも日本社会においてそこは、学習塾に牛耳(ぎゅうじ)られているのが実態です。

だとしたら、学校に行かないことの何をそんなに焦る必要があるのでしょうか。

学校に意味がないと言いたいのではありません。学校での勉強は本来、受験勉強のための知識の詰め込みではありません。

煎じ詰めれば学校とは、数学、外国語、国語、理科、社会科、音楽、芸術、体育など、さまざまな学問の入口に立ち、そこから中をのぞき込み、垣間見(かいまみ)られる世界に感動する経験をしに行くところだと私は思います。

その感動を得るために、教科書を端から端まですべて網羅する必要なんてありません。大人になって生きていくために必要な知識や技能だって、教科書の中のごくごく一部にすぎません。

実際大人になった私たちは、小中高のテストのために覚えた知識をいまどれだけ覚えているでしょうか。因数分解も化学式も古文法も、少なくとも私は、ほとんど覚えていません。

でも、そういう世界を覗いたクオリア(体験質。体験にともなって得られた言葉にならない感覚)だけは心のどこかに残っています。

そのクオリアを心に刻むことが教科学習だとするならば、むしろおしなべて教科書をやろうとしないほうがいい。それならば、フリースクールでも十分できる。いや、フリースクールのほうがやりやすい面すらある。

【編集部より】
「いま勉強をしないと、将来取り返しのつかないことになるのではないか」という不安は、親であれば抱いて当然ともいえます。

しかし、著者のいうとおり、私たち大人はかつて必死で暗記した数式や文法の多くを忘れても日々生きのびています。

勉強の「遅れ」という目先にとらわれすぎず、子どもが自身のペースで、自分らしさを取り戻し、何かに夢中になったりイキイキできること。それこそが、フリースクールという選択が親子にもたらしてくれるものなのかもしれません 。

新刊『フリースクールという選択』(講談社+α新書)では、フリースクールその後の進路についてもくわしく紹介しています。

おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

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価格:定価:本体1200円(税別)

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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。