
人気児童文学作家5人が、デビュー20周年で再集結! 競作シリーズ第5弾『もりもりの出版社』刊行に合わせ大いに語った、新人時代の思い出から創作の秘密、そして、児童文学の未来まで──。
デビュー20周年記念 スペシャル座談会 (2/3) 1ページ目に戻る
2026.07.23
上がる本の値段、下がる出版部数
──では、子どもの本を取り巻く世界の変化は、どう感じていらっしゃいますか?
菅野 やっぱり、この20年で進行した少子化の問題は大きいと思います。それと、紙の価格や流通費の高騰で、本の値段が上がったこと。図書館の予算も限られているから、児童書分野はたいへんな状況です。
工藤 本の値段が上がって、本を買う親としてもためらいがあるんじゃないですかね。
濱野 自分の本の出版部数も減ってたいへん(笑)。それから、文学賞も変わってきて、「児童文学ファンタジー大賞」のようになくなってしまったものもありますよね。
廣嶋 そのかわり、インターネットの投稿サイトを経由してデビューする人は増えていると思います。
まはら LGBTQなど、作品のテーマが多様化しているのも感じます。
それと、以前は、心情を直接的には書かず、描写を通して理解させる手法がいいとされていた気がしますが、最近の作品は、たとえば「悔しかった」と、気持ちをストレートに表現するようになったと思います。
廣嶋 私の本を読んでくれた親戚の子に、「顔が真っ赤になったってどういうこと?」って聞かれたことがありました(笑)。
2017年、児童ペン賞贈呈式での工藤さん。
編集者とは?
──ところで、今回の『もりもりの出版社』は出版社が舞台です。本の中に「担当編集者は、作家さんといっしょに作品を作ってきた人」というセリフが出てきます。20年の作家生活の間に、みなさんもいろんな編集者と作品を作ってきたと思いますが、編集者についてお話をお聞かせください。
工藤 先日お会いした若い編集者さんが、「私、小学生のころ『恋する和パティシエール』を読んでました!」って言ってくれて……。自分の昔の本を読んでくれていた人が、いま編集者になっているのが感慨深かったです。
まはら そうよね。自分の子どもと同い年の編集者さんもいます。でも、向こうは、20年もやってる作家だから、なんでもわかっていますよね、みたいな対応なんですけど、そんなことないです。助けてほしいです(笑)。
編集者さんって、本当にありがたい存在。自分の創作スタンスは変わっていないのに、慣れ親しんだ編集者さんが変わると、書けなくなることがある。
工藤 たしかに。作家の力を引き出してくれる編集者さんっていますよね。私は自分自身の力を信じられないんですけど、編集者さんが私の力を信じてくれたら、書ける気がする。
廣嶋 最近、担当編集者が次々と定年で退職してしまって、とっても困る。「見捨てないで!」って気持ちになります。
濱野 最近の若い編集者さんの中には、作家と直接会わず、メールのやりとりだけで仕事を進める人が増えていると聞いたりします。私は、編集者さんとの雑談の中から生まれてくるものもあるので、若い編集者さんには、雑談の大切さをお伝えするようにしています。
廣嶋 最近は打ち合わせ中にアイディアが浮かぶことがほとんどです。おしゃべりしていると脳が活性化するから、編集者さんには必ず打ち合わせをしたいとお願いしています。
菅野 子育て中は、家で執筆していると、すごく閉塞感があったんですけど、外出して打ち合わせをすると、社会とつながっている実感がわいて、脳が活性化した気がしましたね。
2014年、メキシコでのIBBYオナーリスト表彰式でのまはらさん(左から1人目)。
──では、編集者に対して不満に思うことはありますか?
菅野 編集者さんの問題ではないんですが、出版社の都合で、シリーズの途中で担当が変わるのは……できれば同じ人にやってほしいですね。
廣嶋 あ、私もあります。せめてシリーズが終わるまでは、同じ人に続けてほしいですよね。
別の話ですが、原稿がゲラ(間違いがないかチェックするためのためし刷り)になって上がってきたときに、勝手に句読点をいれられることがあって、編集者の意向で、文章を変えられると作品への愛情がなくなっちゃう。登場人物のセリフを変えられたこともあって、それは本当にやめてほしい。
廣嶋さんの執筆のおとも。愛用のペンとマグカップ。
──編集者から原稿について、「こうしたほうがいいのでは?」と提案されることもあると思いますが、どう受け止めていますか?
濱野 イラッとします(笑)。人間だもん。でも、納得することも多いので……。
工藤 そこは話し合いですよね。
まはら 「ここが気になります」って指摘されたところが、大きな問題をはらんでいることが多々あるので、言ってもらったほうが助かる。
廣嶋 私もまはらさんと同じ! 編集者さんの指摘で、大きな落とし穴に気づかされて、はっとさせられることがあります。でも、こちらが納得できないことを言われたときは、変えたくないと、きっぱり言います。
濱野 いずれにしても勝手に変えるのはダメですよね。
工藤 私、ある編集者さんから「○○さんのような作品を書いてほしい」って言われたことがあって……。「だったら、○○さんに頼んでよ!」って(笑)。
一同 それは失礼!(笑)
2013年、韓国・世界児童文学フェスティバルのサイン会での菅野さん。

































