8児のパパで小児科医 ゆび先生「子どもの父親という責任感は僕をより自由にした」

#3 ゆび先生インタビュー ~父親の醍醐味~

小児科専門医・インフルエンサー:ゆび先生

ルールは“ゆるく”がうまくいく

ただ、夫婦2人とも得意でない家事があると、押し付け合いになりがちです。そういうものについてはルールで縛るんじゃなくて、どうやってうまく折り合いをつけるかがポイントだと思います。

うちの場合は片づけですね。夫婦も子どもたちも超苦手です。だから家の中は散らかっています。「常にきれいな状況でないとダメ」というルールがあると、お互い片づけを押し付け合うだけ。だからうちは汚くていいって思ってます。片付けが苦手だから新しいおもちゃも買わなくなりました。

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ゆび家では、家事に追われすぎないよう、片付けはほどほどに。家事サービスも上手に頼って、無理せず楽しく暮らしている。  写真提供:今井出版

イライラは去った後に自分と向き合おう

──ゆび先生は書籍の中で、ユニセフの調査(2020年)において日本の子どもは「精神的幸福度」が先進国ワースト2位だったことについてふれ、“まずは親世代が幸福であることが大切だ。イライラする子育てから、ワクワクする子育てに、まず方向チェンジしよう。”と書かれています。パパがイライラしてしまったとき、どうすればよいでしょうか。

イライラの感情は絶対にいつか冷めます。カッとなっているときは人のせいにしたくなるもの。だからイライラが過ぎ去ってから、「あのときなんでイライラしたんだっけ」「なんで怒鳴っちゃったんだろう」と考えてみてください。

子どものせい? 奥さんのせい? 社会のせい? と、誰かのせいにして考えてしまえば簡単なんですが、そうではなくて、「どうしてなんだろう」と自分の内側に目を向けることが大事です。イライラした背景には、自分が育った環境で得た価値観がひそんでいることもあります。その価値観からズレた言動にイラッときた、なんてことも多いのでは。

こうやって自分の中で分析して原因がわかると、相手への伝え方も変わってきます。ただ感情をぶつけるのではなく、「そういう行動をとられると自分としては嫌なんだけど、なんでそういうふうにしたのかな?」とケンカでなく質問できるようになります。話し合うことでお互い納得できることだってあります。

人のせいにしたところで、人は変わりません。自分の考え方を相手に合わせていくことも、イライラをワクワクに方向チェンジする一つの方法論です。かといって、全部がまんして周りに合わせる必要はありませんよ。

──年末には9人のパパになる予定のゆび先生ですが、「パパになってよかったな」と思える父親の醍醐味について教えてください。

一番は責任感が持てるようになったことです。これは自分にとっては大きいです。責任感を持つことでプレッシャーを覚える人もいるかもしれませんが、僕にとってはポジティブなことだと思っています。

なぜなら、人としての軸ができたからです。

例えばバックパッカーで世界一周することが好きなことの一つだとします。それは1人では実現可能ですが、子ども8人9人を育てながら、子どもたちの生活費も捻出しながらそれを実現することは非常に難しいです。

となると、選択肢は狭まります。これをネガティブに捉えるのではなく、本当にやりたいことが絞り込まれていくなと感じています。あまりに自由で選択肢が多すぎると、何を選んでいいかわからなくなるので。

それは僕の人生にとっては結構プラスでした。父親になることで、自由がなくなるのではなく、より自由になれた感覚です。

取材・文/大楽眞衣子

親の悩みにゆび先生が回答した『誰かに教えてほしかった! ゆび先生のこんな時怒ったら子育てダメ?vsイイ?』(今井出版)。「視点を変えるだけでずいぶんラクになると気づかされた」「親自身の矛盾やエゴにもそっと寄り添ってくれる」など反響多数。

連載は全3回 

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ゆびせんせい

ゆび先生

小児科専門医・YouTuber・TickToker

田本 直弘(たもと・なおひろ) 。鳥取県米子市生まれ。2012年「医療法人田本会 米子こどもクリニック」開院。加えて内科や美容クリニック、訪問看護ステーション、保育園、介護事業、エステティックサロン運営にも携わり、全国を飛び回る。 8児のパパでもあり、子育て経験をいかしたYouTubeチャンネル「ゆび先生&ひかちゃんねる」は登録者数8.6万人、TikTokのフォロワーは17万人超え(2025年7月現在)。 長女(2008年生まれ)、長男(2011年生まれ)、次女(2013年生まれ)、三女(2017年生まれ)、四女(2019年生まれ)、次男(2021年生まれ)、三男(2022年生まれ)、四男(2024年生まれ)。 2025年6月には初の著書『誰かに教えてほしかった! ゆび先生のこんな時怒ったら子育てダメ? vs イイ? 』(今井出版)を上梓。リアルな子育ての悩みに、ユーモアと優しさで寄り添っている。 ●米子こどもクリニック

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田本 直弘(たもと・なおひろ) 。鳥取県米子市生まれ。2012年「医療法人田本会 米子こどもクリニック」開院。加えて内科や美容クリニック、訪問看護ステーション、保育園、介護事業、エステティックサロン運営にも携わり、全国を飛び回る。 8児のパパでもあり、子育て経験をいかしたYouTubeチャンネル「ゆび先生&ひかちゃんねる」は登録者数8.6万人、TikTokのフォロワーは17万人超え(2025年7月現在)。 長女(2008年生まれ)、長男(2011年生まれ)、次女(2013年生まれ)、三女(2017年生まれ)、四女(2019年生まれ)、次男(2021年生まれ)、三男(2022年生まれ)、四男(2024年生まれ)。 2025年6月には初の著書『誰かに教えてほしかった! ゆび先生のこんな時怒ったら子育てダメ? vs イイ? 』(今井出版)を上梓。リアルな子育ての悩みに、ユーモアと優しさで寄り添っている。 ●米子こどもクリニック

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」