自由研究にも最適!手づくり噴水で「サイフォンの原理」を学ぼう
100均素材で1日でできる【おそとで実験教室】理系脳が育つ科学の見方・あそび方を専門家が徹底解説
2021.08.21
サイフォンの原理を「科学の目」で見てみると…
手づくり噴水はいかがでしたか? 水が低い方に流れることは、小さいお子さんでも経験的に学んでいると思います。ところが、この噴水の水の流れを見ると、ペットボトルの口まで水がストローの中を上っています。水を上に持ち上げる見えない力がはたらいていることがわかりますね。
見えない力その1:「空気の重さ」で水面は押されている!
水を押し上げる力のひとつが「大気圧(たいきあつ)」です。空気にも重さがあるので、その重みで水面は下に押されています。この力を大気圧とよんでいます。
水に沈めたコップを逆さにしてもち上げてみましょう。コップの中の水もいっしょにもち上がるはずです。どんな容器でも、同じように上が閉じていれば大気圧はかかりませんから、水は下に落ちません。ちなみに、上が閉じていれば、水はなんと10m上までもち上げられることがわかっています。
ペットボトルの中の水も大気圧で押されているため、大気圧の影響を受けないストローの中に押し出されていくのですね。では、ストローの反対側、噴水口にも同じ大気圧がかかっているはずなのに、水が上にふき出すのはどうしてでしょうか?
見えない力その2:深いほうが強い⁈ 水の“おしくらまんじゅう”
水は水分子という小さなツブがあつまったものです。それぞれの重さで、おたがいに押し合っているため、あらゆる方向に力がかかっています。この力を「水圧」といいます。水圧は水面に向かってもかかっていますが、上からの大気圧と力がつり合っているときには動きません。
大気圧の強さは一般的にあまり変化しません(標高の高い高山などでは弱くなります)。ところが、水圧は水面からの深さによって強さが大きく変化し、深いほど強くなります。
今回の実験では、ペットボトルの水面と噴水口に高低差をつけました。噴水口のほうが低い位置にあるので、水圧がより強くなります。そのため、噴水口にかかる大気圧では押さえきれずに、水がふき出すのです。
サイフォンは「地球にやさしい」エコな原理です
液体で満たした管をつかって、液体を押し上げる「サイフォンの原理」は、日常生活のさまざまなシーンで応用されています。コーヒーメーカーが有名ですが、給油ポンプや水洗トイレ、さらには上下水道やダムなどの大規模な例もあります。
電力や燃料をあまり使わずに動かせるので、「地球にやさしいくらし」に役立っているともいえるでしょう。手づくり噴水であそびながら、親子でエネルギー問題について話してみるのもいいですね。
構成・文/湯地真理子
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齋藤 実
都内私立中高一貫校理科教諭/理学修士。1960年東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業、同大学大学院相関理化学修士課程修了、同博士課程中退。 専門は、物性物理。「シンプルで原理がわかる実験」を心がけながら、理科教育に携わる。自身の子育て経験を通して、幼児からの「実験あそび」を考案。
都内私立中高一貫校理科教諭/理学修士。1960年東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業、同大学大学院相関理化学修士課程修了、同博士課程中退。 専門は、物性物理。「シンプルで原理がわかる実験」を心がけながら、理科教育に携わる。自身の子育て経験を通して、幼児からの「実験あそび」を考案。