「どちらも悪い」では見えなくなるもの
──戦争は「こっちが100%悪! こっちが100%正義!」と割り切れるものではなく、異なる立場における人々が、それぞれの正義を掲げて衝突するものだと思っているのですが、だからこそ、子どもたちにどうやって戦争の事実を伝えればいいのか考えてしまいます。
小泉悠先生(以下、小泉先生):私はこの点については専門ではないので、ひとりの親としてどうしたか、という視点でお話しします。うちの娘はこの戦争が始まったとき小学5年生くらいでした。もう物事がわかる歳だったので、「この戦争って何なの?」と聞かれたとき、事実だけを説明した記憶があります。
「誰か悪い人がいて、戦争をやっている」という語り口は、子どもにはわかりやすい。けれど、世の中ってそんなに単純じゃないですよね。
小泉先生:戦争を見るときに大切なのは、「双方に事情がある」、「だから責任も同じ」ということは別だという点です。
ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア、ウクライナ、そしてNATOやアメリカなど、多くの国や組織がかかわっています。ロシア側には「NATOの東方拡大への安全保障上の懸念」という主張があり、一方で国際社会の多くは、国境を越えて軍事侵攻を行ったロシア側の責任が大きいと見ています。
複雑な背景を知るのは必要です。しかし、「どちらにも言い分がある」という理解が、侵略された側にも責任があるという考えにつながってしまうと、本質を見失う危険がある。子どもたちに伝えるときに必要なのは、単純な善悪ではなく、「事実」と「背景」を分けて考える力なのかもしれません。
































