戦争を子どもにどう教える? 小泉悠が語る多角的な視点と伝え方

東京大学准教授・小泉悠先生に聞く、現代戦争の伝え方 #3 (3/4) 1ページ目に戻る

東京大学准教授:小泉 悠

世界はウクライナだけを見ていない

──ウクライナ戦争は、一つの地域の戦争でありながら、アメリカとロシアの対立、中国の台頭、中東の情勢など、現在の世界の力関係が映し出されているようにも見えます。この戦争を「世界の中の出来事」として「事実」と「背景」を見るためには、どんな視点が必要でしょうか?

小泉先生:当たり前ですが、世の中は繫がっています。例えば、今ロシアがウクライナに撃ち込んでいる「ゲラン」という自爆ドローンがあります。これは有名な話ですが、もともとはイランの「シャヘド」などと呼ばれるドローンが基になっています。

ロシアはイランから技術を導入して、ライセンス生産を始めました。ところが、その後ロシア国内に大きな工場をつくって、生産規模を一気に拡大。さらに部品もロシア製や中国製のものに置き換わっていて、今では最初のイラン製ドローンとはかなり違うものになっています。

つまり、ウクライナで使われている兵器の背景をたどると、中東とのつながりが見えてくるんです。

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──そう考えると、ウクライナ戦争と中東で起きていることは、すでに一つの大きな戦争にリンクしつつあると考えた方がいいのでしょうか。

小泉先生:「リンクしている」というより、もともと世界の中でつながっていたものが、「見える形になってきた」方が近いと思います。

ただ、現時点でウクライナ戦争と中東の戦争が完全に一体化しているわけではありません。例えば、イランはウクライナ戦争に直接参戦してはいません。イランはロシアにドローンの技術を提供したけれど、それ以上の関与はありません。

弾道ミサイルを提供してほしいとロシアはイランに再三要求しているようですが、これも実現していません。

一方、例えば弾道ミサイルを本格的に提供するようになれば、状況は大きく変わります。もし中東の戦争にロシアやウクライナが直接介入するようなことになれば、それは本当に世界規模の危険な状況になります。

小泉先生:戦争というのは軍事だけを見ていても分からないと思います。ロシアとウクライナは、どちらも世界に大きな影響を持つ国です。

ロシアは石油や天然ガスなどのエネルギー資源を持つ国ですし、ウクライナもこの戦争のなかで様々な分野で世界的な影響力を持つようになりました。もともと強い穀物輸出もそうですし、最近はドローンなどの軍事テクロジーでも知られるようになりましたね。

だから、戦争によって農産物の流れが変わったり、エネルギー価格が不安定になったりすると、その影響はヨーロッパだけではなく、中東やアフリカ、そして日本など、遠く離れた地域にも広がります。

そしてそこにはアメリカや中国の存在も大きく関係しています。アメリカはウクライナを支援していますし、中国はロシアとの関係を維持しながら、国際社会の中で自分たちの立場を考えて動いています。また、中東の国々も、アメリカ、ロシア、中国、それぞれとの関係を考えながら外交をしています。

だからこそ、戦争を見るときには、「どの国が戦っているのか」だけではなく、「その背景にどのような世界の力関係があるのか」を考えることが大切なのです。

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