「こども選挙」で子どもと大人に芽生えた当事者意識 何も考えず住んでいた町が“大切な町“になった想定外の効果

子どもによる、子どものための「こども選挙」#3~子どもと大人の変化~

「こども選挙」発起人:池田 一彦

「2024年4月実施の長崎県壱岐市の『こども選挙』で、初めて教育委員会と連携できたんです。投票券を全校に配布したところ、市内の子どもの約10%が投票してくれました。

こうした事実を少しずつ積み上げていき、最終的に学校の授業の一環で実施することが目標です」(池田さん)

市議と市民がお酒を飲みながら語る「まちのBAR」

選挙後に池田さんは、さらなる市民活動の場を広げています。そのひとつが、市議がマスターになり、市民とお酒を酌み交わしながら語り合う「まちのBAR」です。

「『こども選挙』を通して、政治へのタブー意識や無関心を改めて感じたことがきっかけです。本当は、市民と議員がいっしょになって町づくりを考えるべきなのに、クレーマー対権力のような対立構造になっている。本来の民主主義はそうじゃないし、もっとフラットに自分たちの町の未来について話せる場が必要と考えました」(池田さん)

2023年7月にスタートした「まちのBAR」は月に1回開催され、毎回子ども含む30~50人の市民と、党や会派を越えて3~5人の議員が参加。市内5ヵ所で開催され、ムーブメントを巻き起こしています。

「政治も市民活動の世界にも、クリエイティビティが一番足りないと感じています。ただ『市民と市議が対話する場をオープンに作りました!』と言ってもなんだか堅苦しそうで誰も来ないじゃないですか。人って見え方も含めて『楽しそう』って思ったほうに動きますから」(池田さん)

「子どもの主体性はどう育めばいいんだろう」、そんな親同士の会話から生まれた「こども選挙」。池田さんは、活動を通して「子どもを真ん中に据えることによって、子ども自体を変えるというよりは、周りの大人も含め社会が変わることを実感した」と話します。

選挙権の有無より大切なのは、一人ひとりが未来について考え、その声が政治に届くという実感を得ること。そのためには子どもの力を信じることが大切だと改めてわかりました。子どもも含めてみんなで町を作り上げていく、そんな民主主義の当たり前を体現できたなら、未来はより良い方向に向かうはずです。

クリエイティビティを注入して、政治を楽しく、わくわくするものに。まだまだ広がり続ける「こども選挙」、今後の展開にも注目です。

取材・文/稲葉美映子

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