
「クルミアレルギー」も“治る”を目指せる! 食物アレルギーに悩む親の新知識[医師監修]
家の環境とアレルギー #3 国立成育医療研究センター 山本貴和子先生に聞く【発症後の保護者のストレス編】 (2/3) 1ページ目に戻る
2026.08.28
国立成育医療研究センター・アレルギーセンター医師:山本 貴和子
──山本先生は、食物アレルギーの子どもを持つ親の育児ストレスについて、2024年に分析されています。結果はどうだったのでしょうか。
山本貴和子先生(以下、山本先生):「エコチル調査」という、環境省による子どもの健康と環境に関する大規模な疫学調査があるのですが、これを活用して2011年1月から2014年3月までに登録された、日本全国の約6.5万人の子どものデータを分析しました。
外来診療でも、ご家族の大変さは日々目にしていたため、予想はしていましたが、その結果から食物アレルギーは、育児ストレスを増加させることが分かりました。
子どもが食物アレルギーと診断されている親御さんは、食物アレルギーがない子の親御さんと比べて、育児ストレススコアが高かったのです。
また、食品別の調査では牛乳、小麦、ナッツアレルギーで明確な関係性は認められない一方、鶏卵アレルギーの子を持つ親は特にストレスが高いことが分かりました。
育児ストレスが高くなる明確な理由までは判明していませんが、日本では多くの加工食品や菓子類に鶏卵が含まれていて、保護者は常に意識する必要があるからかもしれません。また、小麦アレルギーは人数が少なかったので統計学的にうまく結果がでなかった可能性もあります。
──確かに、常に誤食がないか気を張っている保護者は多そうです。
また、離乳食を進めているときに食物アレルギー症状が突然出ると、「食べさせる量が多すぎたせい?」「アレルギーの遺伝のせい?」など、あれこれ責任を感じる保護者もいるかと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか?
山本先生:食物アレルギーは食材を口から食べる前に、アトピーや湿疹(しっしん)などで荒れた皮膚からアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因物質)が侵入し異物として認識されることで、異物を排除する役割を持つIgE抗体がつくられて(感作するといいます)、そのあと食物アレルギーを発症します。
症状が出るのは食べた後からですが、その前に発症する準備状態があったと考えられます。食物アレルギーは親のせいではありませんので、そこは安心してください。
遺伝に関しては確かにありますが、食物アレルギーは乳幼児の湿疹に対して早期に治療を行うことで、遺伝的な要因を克服できることが分かっています。
──親からアレルギーの遺伝があっても、皮膚の早期治療で克服できるというのは、妊娠中の方や乳幼児期の子育て世代にとっても、すごく心強いですね。
山本先生:そうですね。かかりつけ医などの診療の下で、ステロイド外用薬等が処方された場合も、ステロイドを怖がって途中で止めてしまったりせず、適切な皮膚の治療を継続してもらいたいと思います。
クルミアレルギーも「治る」を目指す時代に
──発症後の治療について、不安や悩みを抱えている保護者も多いと思います。医療現場やネット上では、「乳児期の食物アレルギーは小麦や卵、牛乳は治りやすいが、クルミアレルギーは基本的に治らない」という情報が多いようですね。
山本先生:「治らないから」と治療がされないままになっているケースも多いのですが、たとえ、重症のクルミアレルギーであっても、「治る」ことを目指して、治療を進める道があります。
それを知ってほしくて、2026年5月に、これまで経口負荷試験等で蓄積された当センターのデータと結果を学会誌で発表しました。


































