特別すぎる? お金・学歴・海外経験なし主婦の育児法「東大合格」算数編!

バイリンガル育児の第一人者〔お金・学歴・海外経験なし〕伝説の“3ナイ主婦”タエさんに学ぶ③

小和野 薫子

妊娠中に「賢い子を育てたい」と思って、2歳10ヵ月から家庭で英語育児をはじめ、見事息子さんを小学6年生で英検1級に合格させたタエさん。著書のタイトルも『お金・学歴・海外経験3ナイ主婦が息子を小6で英検1級に合格させた話』と英語育児に特化していますが、実は、タエさんは英語より先にまず、算数を意識した育児を始めていました。3回目の最後は算数から東大合格までのお話です。


タエさんとは?

1969年生まれ。大阪府出身。高校卒(美術科)。子育て時代は、大阪一ポジティブな専業主婦(自称)。たまにパート。現在は、ベビーパーク英語育児部門統括責任者をつとめる。日常生活で英語を話す機会も必要もなし。英語は嫌いではなかったけれど、とにかく勉強をしなかったので、高校時代にはテストで3点をとってしまったほど英語ができない。「とにかく賢い子に育てたい」「英語が話せたら将来の可能性が広がるかもしれない」との考えから、日本語の理解が深まってきた3歳直前に英語育児をスタート。

国産バイリンガルとなった息子さんが東大生となるまで

賢い子を育てるために いちばんに手をつけたのは算数でした

「まず、赤ちゃんセンベイからはじまり(乳幼児編に詳しく)まして、「ボーロ食べようね。1,2,3」「積み木が5個つめたね! 1,2,3,4,5」「3つあったけど、ひとつ食べたから2つになったね〜」「キリ君は5個、お母さんは3個。キリ君の方が2個多いね」「お友達が3人いるから、3つずつ渡すには何個あればいーい?」など、数を意識した会話をしまくっていました」

――参考にしたものが何かあったのでしょうか。

「いえ、全く。ノープランの思いつきでやっていました。思いついたことをやるだけだからこそ、なんの苦労も準備もいらないし、案外続いたんだと思いますよ」

算数も英語のように生活に溶け込ませて教えたかった

――意識的に算数の勉強に取り組みはじめたのは、小学2年生になったころ。

「市販の問題集を買ってきて、本格的に家で算数学習をはじめました。
幼児のころからの声がけは続けていたけれど、理解できることが高度になるにつれて、算数は椅子に座らないとできないなと気づいたんです。

たとえば、はじめのころは“このお皿はリンゴが2切れで、こちらは3切れだねえ。どっちが多い?“と出先で食事をしながらたずねることができました。でもそのうちに、“あそこまで3kmあるんだって、10分かかったけど、時速何kmかなあ?“のように話しかけてみるけれど、暗算は難しいし、しまいには私も答えがわからなくなってきて……。

本当は、はじめのころは、全部口頭の会話で取り組んでいこうと思っていたんですよ。算数も英語みたいに生活に溶け込ませようと思っていたけど、難しかったです。

それでもちょっとずつ声がけは続けていたけど、小学校にあがったら、私のモチベーションががーんっと下がってしまった。急に現実になったんですよ、算数が。算数という科目の授業があることで、なんだか夢みたいに楽しい話じゃなくなってしまったんです」

――それでも、小2で算数の本格的な家庭学習を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「算数へのモチベーションが下がっていたときに、英語育児についておもに書いていた私のブログが炎上したんです。あなたのところの子どもは特別なんだよと言われるようになって、それで、じゃあ算数が特別できているわけじゃない息子が算数もできるようになればわかってもらえるんじゃないか、と思いついたんです。親次第だよ! と。

それに自分でも、英語ができたんだから算数もできる! とそのとき思ったんです。そのときからまた、バンッとやる気が出て、それから毎日家でちょっとずつでも算数をやることにしました」

――そもそもなぜ、算数に力を入れていたのでしょうか。

「だって、子どもがすごく城がいい、地図が好きというのなら別だけど、いたって普通の子どもに社会科を教えても仕方なくないですか? 理科、がんばるぞ! と思っても、家庭で何をどうやればいいのかわからない。

例えば、すごく宇宙に興味があるというなら私もそこに力を入れたけど、うちの息子は普通の子でしたから。国語も大切だとは思うけれど、国語は本を読んでいたらいいんじゃないかなって。うちの息子は本はよく読んでいたし、普通の子で他に何もない……、じゃあ、算数じゃないです?」

塾なしで東大合格へ導いた算数の家庭学習とは? 写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

小3の間に小学校6年分の算数を終わらせる

――本格的な算数の学習は何から始めましたか。

「市販のドリルを買ってきて、学年順に取り組むだけでした。ドリルは、いちばん普通の、標準レベルのものを選びました」

――それはなぜですか。

「その年代の最高レベルになっても仕方ないと思ったんです。小学2年生の最高レベルになるぐらいなら、とっとと6年生の知識を手に入れた方がいいと思って。なんせ6年生が小学校の中でいちばん賢いじゃないですか。2年生の超賢い子と標準の6年生を比べたら、6年生の方が賢いじゃないですか。だから早く6年生になろう! と思いました。
それが、いつの間にか先取りになっていました」

――そんなに順調に進むものなのでしょうか。

「我が家の優先順位は、①友達と遊ぶ ②読書 ③算数 なので、実はなかなか毎日きっちり取り組むことはできていませんでしたよ。気持ちだけは、毎日コツコツ算数!です」

――家庭学習ということは、タエさんが教えたのですか。

「教えてないです! 算数も息子の独学です。
教えないようにしていたんですよ。概念は教えますよ。“たす“っていうのは、これとこれを合わせたことだよ、とか。分数なら、3分の2というのは、3個に割ったうちの2個という意味だよとは教えました。

算数って結局、言葉みたいって思っていて、数字が言葉で数式が文章。だからこれが読めるようになればいいなという感覚でした。難しい数式でもアレルギーを持たず、意味がわかるようになればいいな、と思っていたんです。

そしたら、3年生くらいのときに、分数の方程式に取りかかっていた息子が、問題を解き始める前に、“おー、このXは大きくなるぞー“って言ったんです。

私は、ただのかけ算だろうと解いてみないと全く答えがわからないのに、息子は何か感じ取っている! 私には算数ってただの作業だったんですね。でも、息子はちゃんと感覚が身につき始めていると知れた瞬間でした。
うわあ! よかったー! なんか成功した気がする! と、そのときはじめて思いました」

――息子さんはセンスがあるんですね。

「いや、センスを育てたんですよ!」

――やったことはドリルだけで……。

「算数ドリルは、2年生のときに始めて、3年生の間に6年生までの分は終わったんです。終わったと言っても、最後の方はうやむやな感じかな。一応終わったという感じでした。

次はどうしようか、中学校の数学に進むか、中学受験の勉強に進むかの2択でした。

でも我が家は中学受験をする気がなかったので、中学校の内容に進むことにして、また、めっちゃ簡単な参考書を買ってきたんですよ。5年生くらいで、今度は高校の内容に進んだんです。でも高校の数学に進んだ途端、全然できなくなったんです!
 
それで、あー高校ではみんな数学でついていけなくなってたなぁと思い出しました。それはなぜかと言うと、中学校でみんな賢くなってないからだな、と思ったんです。つまり、うちの息子も高校数学に入ってついていけないのは、普通の中学生ギリギリレベルの脳味噌にしか育てていないから、そりゃあついていけないわ、と。

だから、中学レベルで賢く育てておかないとだめなんだと思って、もう一度中学校の内容に戻って、やり直しました。それが終わってから、青チャート(高校数学の参考書&問題集)を買いました。

結局、6年生の終わりで、青チャートの途中だったかな。小学生のうちに、数1の途中までやり終わっていたと思います」

自宅学習と学校での勉強の両立について

毎日30分集中する。親は横で見守る。​
イメージ写真:アフロ

――先取り学習は、小学校の授業をなめてかかるんじゃないか、という心配の声も聞かれます。

「でもね、そうなったとしても、そのために賢くしないという判断はおかしくないですか?

簡単と思うのは、先取りをしていようがしていまいが起きてしまうことで、仕方がないですよね。でもそこで、“先生! これ簡単すぎますよ!“って発言したり、小学校の勉強をもしなめてかかる子がいるというのなら、それはしつけの問題です。
そういう態度をとらないで、簡単と思いながらも、無難に過ごせる子どもに育てたらいいんじゃないでしょうか。

学年以上のことはわからないように育てよう、知らないように育てよう、というのはつまり、できない子に育てようとしているように私には思えます。

先取りをしていると、学校の課題に真っ直ぐ取り組むのは無理かもしれない。わー楽しいとはならないかもしれない。だけどそこで、みんなを馬鹿にしなければ、悪いことはないんじゃないでしょうか。
そのために能力を下げるっておかしくないですか?」

――実際、小学校6年生で高校数学を学んでいた息子さんが学校でなめた態度をとっているという話は聞かなかったそうです。学校をつまらないと言うことはなかったですか?

「それに近いことはいろいろとあったかもしれません。“どうして学校で宿題をしてはいけないのか“と聞かれたときはいちばん困りましたね。授業中にやることは全部終わっているから、宿題もやってしまいたい。家でやりたくないから学校で一気に済ませたいのに、先生にやったらいけないって言われたけどなんで? と聞いてきたんですよね。

やってはいけない理由はないと私も思ったから、“なんでだろうね“と答えました。“あなたがどうしても納得できなかったら、お母さん、先生に言いにゆくから、いつでも言いなさい“と答えてから、その後は何も言ってきませんでした」

――しかし、タエさんの目的は算数を先取ることではありませんでした。目標は「賢い子」です。

「うちは、先取り学習をしていた意識はなくて、順番に1年生から標準ドリルをやっていっただけなんですよ。進んだら次、終わったら次、と取り組んでいただけです。成績を上げるぞ、とも思っていなくて、ただただ賢くしたかった。

小学校で、算数の授業時間って週に2、3回あっても4回くらいでしょうか。50分間の授業を週に4回しかやらない。しかもその授業中も、人が計算しているのを待っている時間があったりする。だから結局、学校で算数の学習なんて、ちょっとしかやってないですよ!

でも家だったら、30分椅子に座ったら、30分集中してやる。それでもし、毎日取り組めたら210分です。学校より1週間で10分多めに、集中して算数に取り組んで、自分のペースで進めるから、自然と先取りになりました」

――毎日30分、小学生男子を集中して取り組ませることは難しくないですか。

「親が横で見ていれば、どうでしょうか。私、勉強を教えるわけじゃないけれど、ずっと横についていたんです。それが習慣で。

それに、気持ちでは毎日やるって決めていたけど、全然やれない家庭でした。毎日取り組んでいないです。でも、週に5日でもやったら、そりゃあ先に進むでしょ! 最高レベルではなく普通のレベルですから、絶対に進みます。絶対に、誰でもできますって。
みんな、やればいいのに〜!!」

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