特別すぎる? お金・学歴・海外経験なし主婦の育児法「東大合格」算数編!

バイリンガル育児の第一人者〔お金・学歴・海外経験なし〕伝説の“3ナイ主婦”タエさんに学ぶ③

小和野 薫子

親は勉強中、横に座っているだけ

――中学校に進学後は、勉強法も変わりましたか。

「変わることなく、中学に入ってからも、家でそれまで通りの学習の続きに取り組んでいましたよ」

――授業を受けずに、ひとりでテキストを読むだけで理解できるというのが驚きです。

「そうですね。結構できるものです。
隣に私はいたけれど、正直もう、数1の内容なんて聞かれてもわからないし。なんだこの記号は? これはなんて読むんだ? って、私は基本的なこともわからず、ネットで調べていました。あとは、すごく基礎的なことを教えてくれる動画をみたりしましたよ。お金を払って授業を受けたことはなかったけれど、わからない項目をピンポイントで探して、無料動画をみたりはしていました」

――タエさんが息子さんに、小さなころから自然に数に触れさせて、コツコツと毎日勉強に取り組ませていたから、独学でがんばる力がついたのではないでしょうか。

「いえ、頑張ってはいなかったと思いますけどね」

――でも、息子さんは放り投げず、算数の学習を続けていたんですよね。

「放り投げていても、また私が出していたんです。息子は解けなかったら、はい無理って放っていました。それでまた、忘れたころに私が持ち出していました。

子どもって毎日何かしら学習はしているから、知らず知らずのうちに実力は上がっているので、一度放り投げた問題も、しばらくして取り組むと解けるようになっているんですよ。そろそろできるかな〜と思って与えたら、たいがい、うまくいきました。

もしくは、できない問題があったら、せっかくできていない項目を見つけられたと考えて、その弱いところを重点的にやればいいじゃないですか。子どもがすごく嫌がっているなら、もう少し簡単なことをさせるかな。

難しい、思考力が問われる問題は、とにかく考えて考え続けることでしか答えはでません。だから私も横で一緒に考えていました。ちょうど私と息子のレベルが合ってきたころがいちばんよくて、息子がこの問題難しいと言ったら、んじゃあ私がやってみようと「これはこうやったら、こうなるんちゃう?」「いやいや、それは違うだろ」なんて、一緒に取り組んでいました」

横に座っているだけと見せかけて、隠れて取り組んだ全力サポート

――子どものやる気を引き出す声がけなどはありますか。

「はい。うちだって勝手に息子が、さあ勉強しようってドリルの前に座っていたわけではないですよ〜。そろそろやろっかって、うまいこと私が誘い出していたんです。本を読んでいる途中、テレビをみている途中では絶対に声をかけないです。

遊び終わったタイミングを見計らって、「じゃあ、ちょっとやろうかー!」って声をかけるようにしていました」

――勉強する環境も、タエさんが自然と整えていました。

「勉強は、ずっとリビングでやらせていたんですけど、そのテーブルにずーっと数学の参考書と問題集を置きっぱなしにしていました。

それからうちは、息子専用の電卓を与えていました。計算する時間がもったいないから電卓を使いなさいと伝えて、面倒臭い、時間がかかる計算はみんな電卓で解かせていたんですよ。もちろん、たし算や九九はきちんとやらせましたよ。でも、その先の思考力が問われる問題では、計算が問題ではない。

できることを何度もやらなくてもいいじゃないですか。私は、計算はできたら、それでいいと思っていました。同じような計算を何百回と解けば、回答まで2秒早くなるかもしれない。でも、すごく難しい問題を解く思考力の方が私は大切だと思いました。
たまにうちの息子、すごく簡単な計算問題を間違えて帰ってきましたけどね!」

我が子に腹が立つときは怒らずに悩む

思わず自分にイライラ……​
イメージ写真:SunnySide/イメージマート

――ずっと隣に座って勉強に付き合っていて、息子さんにイライラしたり、怒ってしまうことはありませんでしたか。

「あ〜、ありましたよ。なぜか我が子って腹立つんですよね。よその子だったら優しくみていられるのに。たぶんこれは、愛なんでしょうね。 
ただ、怒ってもだめだと思っていたので、イライラすることはあっても、怒ってはいなかったかな。全く怒らなかったとは言わないです。でも、怒っても、絶っ対にいい方向には進まないじゃないですか。だからそのときは、私は何のために怒っているのかを考えて、そうすると私、自分自身に腹が立っているからなんですよね。

イライラしたときは、なんのために今これをやっているかと言うと、この子を伸ばすためにやっているんだから、怒っても仕方がないんだよねって、自分の中でちゃんと理解するようにして、勉強中には怒らないようにしていました。怒ってもだめなんだ、ということをきちんと理解すれば、やめられるかも。

イライラが治らなくても、別のところで怒っていたかな。息子には、私がイライラしていることはバレバレだったと思いますよ。顔には出ますもんね。うーーーんって、唸っちゃいますもんね。でも、息子を怒るという選択肢をとらなかっただけのことです。

我慢してたというよりは、どうやったらいちばんいいのか、ということをずっと考えてやっていました。腹が立つこともあるけど、そういうときはじゃあ次はどうしよう?って悩む方に気持ちを持っていっていたんです」

物理にハマらせたことで種まきは終了!

――算数学習はどこまでやるのか、目標は決めていましたか。

「英語と違って算数は、小2のときにやるぞ! と決めて始めたので、そのときに目標を設定しました。

算数オリンピックの予選を通過して、決勝にゆくことが目標と決めました。そして、小学5年生以下対象のジュニア算数オリンピックというのがあって、4年生で受けたけど落ちて、5年生で受けたら予選通過しました。6年生からはジュニアではなく、普通の算数オリンピックに挑戦して、そのときも予選通過したんです。だから、4年越しで目標を達成しました。

次にジュニア数学オリンピックに進んで、中学3年生のときに予選通過しました。高校生で挑戦した、数学オリンピックでは2年生での予選通過でした。決勝で賞をねらえるような実力はなかったんですが、息子はよくがんばったと思います」

――ついに、国産バイリンガルに続き、算数においても、目標を達成したタエさん。

「でも、今思えば、もう少し育てられたなと。数学に関してはもっと伸ばせたんじゃないかと思っています。数学オリンピックの予選に参加したのは高校2年生のときが最後になるんですが、これで終わったな、年齢的にも私がやってあげられることはもうないなと寂しくなりました。

小学2年生からがんばってきた算数のサポートも、これで終了。それで、もうちょっとできることはなかったかなと後悔したけど、数学をやっていたおかげで物理ができたのはよかったかな」


――息子さんは、高校2年生のときに国際物理オリンピック日本代表に選ばれ、高校3年生で銀賞を受賞しています。

「物理は、中3の夏休みごろに、出会いました。これは数学でこの子はトップはとれないぞと思って、このままやっていても普通止まりの数学の他に何かないかなと探していたんです。

そしたら、英語がよくできる、息子より少し年上の友人が化学オリンピックで日本代表になったという話を聞きました。数学オリンピック以外にもそんなものがあるんだと私は初めて知って、いろいろと調べはじめてみました。

例えば、地理オリンピックだと英語で受験できる。これは得じゃない?と思って息子に話したら、僕は地理は得意じゃない一蹴されて、息子は暗記をしようとしないから、化学も違うよな、と。

それで、物理なら数学に似てるじゃんと思って、「これど〜う?」って参考書を買ってきて渡したんですけど、そのときの息子には全然響いてないようでした。それでこれはもうだめだなあと諦めかけたんですが、最後にもう一度、物理オリンピックのサイトをみたら、これやったらいいよって言う問題がのっていたですよ。それを、160ページくらいあったかな、を印刷して、カテゴリー別に分けて、渡したんです。これをやらなかったらもう終わりだな、もう物理の種まきは終了だなって思っていたら、息子が、やったんですよ!

それで、次の試験で予選に通って、日本代表候補になった。ぴったりきたんでしょうね。
翌年、代表になって、国際大会で銀賞をもらったんですけど、それはきっと数学ができたから、とんとん拍子で物理にもハマれたんだと思います」

――英語や算数だけでなく、物理もタエさんがきっかけを与えていました。各分野で功績を残したことが、東大理学部への推薦入試合格へもつながったでしょう。

「おうち算数」から「おうち物理」そして東大へ 写真:iStock

東大合格の先、今後の道はもう息子が決めること

「私は息子を誘導することはできるけれど、選んだのはみんな息子です。むしろ、息子が自分の人生を“自分で選んだ“と思えるように注力してきました。

だから、大学に入るまで息子は、英語は1人で勝手に話せるようになった、と思っているところがあって、教えてくれてありがとうなんて一度も言われたことがなかったんですよ。やっと、最近になって初めて“英語してくれてよかった、助かった“って言われたんです。

そう言ってもらったら、私のサポートはもう終わりかな。
今後の道はもう息子が決めることなので、口出しをするつもりはありません」

息子が可愛くて仕方がない その愛こそが原動力

お腹の中に息子さんの命が宿ったときから「賢い子にしたい」と思い、その目標に向かってぶれることなく、持てる力を、時間を、すべて息子さんに捧げてきたタエさん。でも決して、「賢い子」にするために、幼いうちから勉強をたくさんさせたわけではありませんでした。

とにかくタエさんは、専業主婦であることに感謝をし、18年間全力で育児に取り組まれていました。賢くするために遊ばせる。思いっきり遊ばせるために、自分の1日のスケジュールを組む。息子さんを100%サポートするために、息子さんが学校にいっている間に家事を終わらせる。息子さんに向いている勉強法、今必要なこと、もの、タイミング、「ただ横に座っていただけ」とタエさんは言いますが、横に座りながら息子さんを観察し続けていました。つまずいたら、上手くいかなけば、諦めずに他の方法を試し続けていました。

お金も学歴も海外経験もない3ナイ主婦であろうとなかろうと、息子さんが唯一無二の賢い子になった、その理由は、タエさんの育児が誰かの真似ではなかったからだと思います。試行錯誤しながらも、唯一、息子さんのためにタエさんが自分で考え抜いた育児法だったから、誰もが成し遂げることのできない結果を残せたのでしょう。

タエさんは息子さんの専属のマネージャーであり、専属の家庭教師でした。そして何より、誰よりも愛情深い母親なのです。

取材中に、
「息子は本当に可愛いです。いまだに可愛くてしょうがないです」
と何度も話してくださった、タエさん。その愛情が、お金や学歴や海外経験のない家庭で最高学府に通う賢い子を育てあげました。

タエさんの著書『お金・学歴・海外経験 3ナイ主婦が息子を小6で英検1級に合格させた話』

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おわの かおるこ

小和野 薫子

ライター

1980年生まれ。読者モデルから、雑誌『ViVi』のファッションライターに。結婚後、メキシコ、ペルーに3年間暮らす。 2人の子を持つ現在は、子育て記事を中心に執筆している。

1980年生まれ。読者モデルから、雑誌『ViVi』のファッションライターに。結婚後、メキシコ、ペルーに3年間暮らす。 2人の子を持つ現在は、子育て記事を中心に執筆している。