絵本作家の登竜門「第45回 講談社絵本新人賞」緻密さが魅力『どんぐりず』が受賞 授賞式速報(東京都・文京区)
新人賞1作品、佳作3作品 受賞者のことば
2024.10.25
絵本作家の登竜門として知られる「講談社絵本新人賞」の授賞式が、10月24日(2024年)に東京・文京区のホテル椿山荘東京で開催された。
第45回を迎えた今回は、「一度みたら忘れられない緻密さ」でどんぐりたちを描いた、はた なおやの『どんぐりず』が受賞した。
新人賞受賞作品は単行本として刊行される。賞金は50万円。
「講談社絵本新人賞」は、かがくいひろし『おもちのきもち』(第27回・2005年)、石川基子『ほしじいたけ ほしばあたけ』( 第36回・2014年)、玉田美知子『まよいぎょうざ』(第43回・2022年、刊行タイトルは『ぎょうざがいなくなりさがしています』)などの人気作家・人気作品を数多く輩出した絵本賞。
授賞式では、各選考委員が受賞者に対する祝辞を述べ、受賞者に賞状と賞金を授与した。
新人賞に輝いた『どんぐりず』はた なおやをはじめ、佳作の3作品『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』むぎはら、『ボタンのスキマスキー』かいのりひろ、『チューリップのリリィさん』もとづかあさみが登壇し、感謝の意を表した。
受賞者のことば
【新人賞】
『どんぐりず』
はた なおや
何年か前から絵本に挑戦していたのですが、なかなか出版へ至らず、諦めて少し距離を取ろうと考えていました。そんな中でも自力で最後まで考えられた唯一の絵本が「どんぐりず」でした。制作してみてからでもと直前に思い立ち、応募しました。まさかの結果でした。まだ信じていません。
本作に出てくる赤いハチマキのどんぐりのように、出遅れ、ドジで目立たない私が一等賞を取れるなんて思っても見ませんでした。赤いハチマキのどんぐりのようにこれからも諦めず走り続けていきたいと思います。ゴールもわからず。
【佳作】
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』
むぎはら
よくわからない存在がよくわからないまま存在していると、なんだかほっとして心地よい気分になります。こんにゃくという食材を食べたことはあるけれど、ぺったんぺったん歩いてくる姿はまだ見たことがありません。この作品は「よくわからないけれど、なんだかほっとしたなあ」と感じてもらえることを目指して作りました。
このたびは、佳作に選んでいただきありがとうございます。これからも楽しくのびのびと絵本を作りたいと思います。
【佳作】
『ボタンのスキマスキー』
かいのりひろ
ある寒い朝、保育園に出発する前でした。当時2歳の長女はお気に入りのジャンパーのボタンをとめるのに四苦八苦。私が手伝おうとしても自分でやりたがるので、やたらと時間がかかります。
遅刻のタイムリミットが迫る中、悪戦苦闘する娘を棒立ちでただ見ることしかできないときに、(ああ…ボタンに腕でも生えて、自分ですぽ〜んと出てきてくれたらいいのに)と思ったのが、この作品の最初でした。
人生にむだな時間はないのかもしれません。
この度は選出いただき、本当にありがとうございました。
【佳作】
『チューリップのリリィさん』
もとづかあさみ
子供が絵本に向ける輝きに満ちた眼差しを見ていると、自分も子供達が笑顔になるような本を作りたいと思うようになりました。本作は締切1ヶ月前にラフを描き始め、まとまった時間が取れない中、育児の合間にコツコツ作業し完成させる事ができました。受賞の知らせを受けて、嬉しいのはもちろんですが自分が面白いと思う物語が評価された事に安堵しました。
これからも鋭意制作に努めたいと思います。この度はありがとうございました。
新人賞1作品、佳作3作品【第45回講談社絵本新人賞】
第45回講談社絵本新人賞最終選考会は、審査員に苅田澄子、藤本ともひこ、三浦太郎を迎え、講談社・幼児図書編集長を加えた4名で9月25日(2024年)に行われた。
応募総数は528作品。一次選考で53作品に絞られた後、二次選考で残った20作品をもって最終選考が行われ、新人賞1作品、佳作3作品が決定した。
【新人賞】
正賞:賞状・記念品
副賞:50万円・単行本として刊行(印税含む)
『どんぐりず』 はた なおや(兵庫県)
【佳作】
正賞:賞状 副賞:20万円
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』 むぎはら(東京都)
『ボタンのスキマスキー』 かいのりひろ(大阪府)
『チューリップのリリィさん』 もとづかあさみ(千葉県)
撮影/嶋田礼奈