冬のギフトにぴったりな“雪の絵本”3選[絵本専門店の書店員が選出]

子どもの本のプロが選ぶギフト絵本 #11~雪の絵本~ (2/4) 1ページ目に戻る

ブックハウスカフェ店長:茅野 由紀

雪が降り積もる静かな高揚感を味わえる一冊

子どもにとって、雪は特別なもの。大人にとってはいろいろ大変な雪も、降り始めると、やっぱりお子さんはワクワクしますよね。

雪を知るには図鑑や科学絵本を読むのもよいですが、絵本で物語を通して体験するのもおすすめです。今回は、雪の冷たさや質感、特性まで伝わってくるような“雪の絵本”を選んでみました。

最初にご紹介するのは、1998年に刊行され、数々の絵本の賞を受賞した『ゆき』(あすなろ書房)。『よあけ』(福音館書店)をはじめ、多くの名作を残した絵本作家、ユリ・シュルヴィッツの大ベストセラーです。

『ゆき』(作:ユリ・シュルヴィッツ、訳:さくまゆみこ/あすなろ書房)
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空も屋根も、どんよりと灰色に包まれた街。そこへ雪が舞い始め、だんだんと積もり、街が雪景色に変わっていく──。物語としては非常にシンプルなのですが、雪が積もるのを待ちこがれる男の子の想いが見事に描かれています。

ひとひらの雪が空から舞い降りるたびに「ゆきが ふってるよ」と、ワクワク感を隠せない男の子。でも、大人たちはどこか冷めたようすです。

「これっぽっちじゃ ふってるとは いえんな」
「どうってことは ないな」
「すぐに とけるわ」

ラジオやテレビからも「ゆきは ふらないでしょう」という声が聞こえてきます。

「けれども ゆきは、ラジオを ききません。」
「それに ゆきは、テレビも みません。」
「ゆきは ただ はいいろの そらから まいおりるだけ。」

そのうち雪はあとからあとから降ってきて、ちらちら踊ったり、くるくる回ったり、次から次へと仲間を呼んだり。やがて、どこもかしこも輝くような銀世界に包まれます。読んでいるお子さんは「やっぱり降ってきた!」「男の子の言うとおりになった!」と、絵本の中ではしゃぐ男の子と同じように胸が高鳴るはずです。

一見すると淡々とした物語ではありますが、語りすぎない短い言葉と見せ方で、静かな高揚感がたしかに表現されています。今はSNSでも動画コンテンツでも、派手でわかりやすいものが好まれがちな時代ですが、お子さんが繊細な心の機能を働かせて、自分で感じ取って楽しめる一冊ではないでしょうか。

この先も雪が降る限り、いえ、たとえ降らなかったとしても、普遍的な魅力でずっと読み続けられる名作だと思います。

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