本来大人が担うべきケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども=ヤングケアラーたち。2021年に行われた厚生労働省の調査結果では、中学生の17人に1人がヤングケアラーであり、体力的・精神的な問題を抱えて将来に希望が見いだせず、貧困に陥るケースが多発。困窮世帯・生活保護世帯への支援が、社会的急務になっています。
そんな社会問題となっている、中学生の「ヤングケアラー・生活保護・貧困」問題を描いた傑作小説『むこう岸』が、ドラマとして、5月6日(月・祝)夜9:30~10:43にNHK総合チャンネルにて放送されます。
原作者・安田夏菜さんと、ドラマプロデューサーによる対談の後編では、執筆当時の安田さんの悩みと、ドラマの制作を通して問題に触れたプロデューサー陣の想いを語っていただきます。
苦労したリアルとエンタメのバランス
──安田さんにとって、『むこう岸』執筆中の思い出は?
原作・安田夏菜さん(以下、安田さん):この作品に関しては、書き通して最後まで辿り着くのに、かなり苦しかったという思い出がいちばんに来ます。「なぜ、こんなに難しく重たいテーマを選んでしまったのだろう」と思っていました。
子どもたちに読んでもらう作品にするには、エンタメ的な面白さがなくてはすぐに投げ出されてしまいますが、相手は生活保護法などの法律で、そちらに話を振りすぎてしまうと、面白さは失われてしまう。そのバランスをいかに取るかで苦労しました。また生活保護法に関して「(受給するのは)恥ずかしいことだ」「ずるい」などネガティブな感情を持っている方もいらっしゃいます。
そういった方々に、「この作者は、結局うわっつらのキレイごとを言っているだけ」と思われないためには、どのように物語を積み上げていけばいいのか。ずっととても頭を悩ませていましたので、最後の1行を書けたときは、本当にホッとしました。