0歳児のお世話Q&A 子どもの発達の専門家に聞いた目からウロコの真実14(前編)

【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「0歳児にしてあげたいこと」#2

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

Q4

遊んであげていると、親の私のほうが飽きてしまいます。どうすればいいですか?

A4 飽きるのは普通のこと

飽きますよね。私も友人となら何時間でも話して楽しく過ごせますが、赤ちゃんと遊んでいると飽きてしまいます。赤ちゃんは言葉を返してくれませんから、仕方のないことです。普通のことなんですよ。

そんなときのために世の中には便利なものが結構あります。

たとえば、0歳児に向けた絵本。私が監修したこの『0歳のうたとおはなし』は、赤ちゃんが見て楽しめるようになっているのですが、親は絵にまつわる擬音語や擬態語を言ってあげたり、歌をうたってあげたりできるようになっています。

親に何かやるべき役目があると、比較的飽きることなく、赤ちゃんと一緒に楽しめると思います。

『0歳のうたとおはなし』(監修:榊原洋一、講談社)

タブレットで動画を見せることに否定的な意見もあるようですが、私はほどよく活用できるならアリだと思います。

ただし、動画を流してほったらかしはいけません。大切なのは一緒に楽しむこと。親御さんが飽きないように、自分も楽しめる動画がいいと思います。一緒に見ながらときどき語りかけてあげてください。

要するに、赤ちゃんと遊ぶのはがんばりすぎずに手抜きでいいんです。深刻に考えすぎて悩んでイライラしたり、ネグレクトになってしまったりするよりは、手抜きしながら無理なく育児をするほうがずっと大事なんです。

Q5

0歳児にはどんな教育をすればいいですか?

A5 超早期教育の効果はよくわからない

このような質問はよく受けますが、前提がはっきりしていないと答えることはできません。前提とは「自分が早期教育に何を求めるのか?」です。早期教育の目的を胸に手を当てて考えてみてほしいと思います。

よく話題にあがる英語の早期教育を例に考えてみましょう。

英語に限らず第2外国語・第3外国語は、7~8歳までにたくさんヒアリングしていると上達しやすいということがわかっています。じゃあ、早くやったほうがいいと思うかもしれませんが、目的に合っていなければ無意味です。

ひと口に英語ができるようになってほしいと言っても、「海外旅行で困らない程度」から「世界を股にかけて活躍できるレベル」までさまざまですよね。もし旅行で困らないだけでいいなら、本当に0歳からやる必要がありますか? と問いたいです。

「将来、受験で困らないように」という声も聞かれます。受験勉強に役立つのが目的なら、学習がしっかり意味を持ってくるのはもっと大きくなってからです。

日本の学校の試験は、基本的に全科目が日本語のできる人に向けた内容です。英語の試験でさえ、日本語の英訳、英語の和訳の力が求められます。実際のところは日本語と英語の試験なんです。

ですから、0歳児への英語の超早期教育がどれくらい大学受験に役立つかというと、私は懐疑的です。

早期教育・幼児教育が大学などの受験にどの程度効果をもたらすかについては、まったくわかりません。研究データもありません。

そもそも教育の効果を測定するのは非常にむずかしい上に、何百人、何千人もの赤ちゃんを条件を揃えて育て、大人になるまで18年間も観察し続けるのは不可能ですし、現代の科学では予測をすることもできません。

小学校で英語を学び始める少し前から英語の歌などを聴かせることで、英語への抵抗感が多少薄まって英語の授業に入っていきやすくなるとは言われています。ところが、0歳児へ英語教材を使った超早期教育がどの程度効果があるかはまったくの未知数なのです。

Q6

0歳児に習い事は早すぎますか?

A6 始める前に目的は何かを考える

前の質問と合わせて考えていただきたいのですが、その習い事を「どんな目的でやるのか?」が重要だと思います。0歳児の習い事の効果は正直なところわかりません。

いきなりバック転ができるように教えようと思っても無理ですし、危険です。でも、体操を好きになってもらうための準備はできるかもしれません。

たとえば、将来はプロ野球選手になってほしい、バレリーナになってほしいと強く願うなら、そのための習い事をさせるのはいいと思います。

ボールが遠くに投げられるようになれば子どもも楽しいでしょう。とりわけ、それが親によろこんでもらえることなら、子どもも楽しく取り組めるものです。

将来バレリーナとして活躍できるようにいち早く教育を施してあげたいなら、そうすればいいと思います。野球にせよバレエにせよ英語にせよ、無理強いはいけませんが、子どもが楽しんで取り組めるようならそれなりに上達は期待できます。

どんな習い事にせよ、最も大切なのは、きちんとした先生にお願いすることです。安全面はもちろんのこと、その子のレベルに合わせた指導ができることが重要です。

親が「こうなってほしい」という目的と習い事をさせたいという強い希望を持っていて、優秀な先生にお願いできるなら、習い事は0歳児で始めてもいいと思います。

第3回【0歳児のお世話Q&A 子どもの発達の専門家に聞いた目からウロコの真実14(後編)】へ続く)


構成・文/渡辺 高

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さかきはら よういち

榊原 洋一

小児科医・お茶の水女子大学名誉教授

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。