「うちの子、発達障害かな」と思ったら…まず園や学校の先生に相談してみよう

[セミナーレポート]榊原洋一先生【もっと知りたい! 「子どもの発達障害」】#2(Q&A前編)

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

園や学校の先生は、多くの子どもをみています。子どもの発達障害を疑った時は意見を聞いてみましょう。(イメージ写真)  写真:アフロ

講談社コクリコCLUB主催のオンラインセミナー【もっと知りたい! 子どもの発達障害】(2023年5月19日開催)。

前回のセミナーで「子どもの発達障害」について取り上げたところ、大きな反響があったため、その第2弾として開催しました。

講師は、子どもの発達研究の第一人者で、今も現場で子どもたちの診察を続けている榊原洋一先生です。

レポート第2回は質疑応答編の前編(Q1〜Q3)です。事前に集まった多くの質問やお悩みに榊原先生がお答えしていきます。

まずは「何を基準にして、どのタイミングで病院を受診すればよいかわからない」という質問からです。

(全3回の2回目/#1を読む)

榊原洋一先生プロフィール

榊原洋一(さかきはら・よういち) 1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

Q1 何を基準に病院を受診すればいい?

子どもが発達障害かもしれないと思ったときに、どこまで様子を見るべきなのか、どうなったら病院へ行くべきなのかがわかりません。何か基準はあるのでしょうか?

A1 園や学校の先生の意見を頼りにしよう

このような質問はとくにたくさんいただきました。

「元気がいいのと多動の違いが判断できない」「いつになっても指差しをしないのが気になる」などの具体的な事柄を挙げていただいた方も多く、とても実際的な心配であることがわかります。

お子さんに発達障害の疑いがあると感じている。しかし、自分の判断に自信がないということだと思います。

そんなときに頼りになるのが、保育園や幼稚園、小学校などの先生です。先生は親御さんと同じように、お子さんと長い時間を一緒に過ごし、観察しています。

さらに、先生には親御さんにはない経験値があります。それは、たくさんの子ども見てきているということです。常に何十人もの子どもたちを相手にし、キャリアの中では何百人、何千人もの子どもたちと接してきています。

先生は多くの子を見ている中で、「この子は今までいなかったタイプだ」と「この行動は非常に珍しい」と言った見立てが自然にできるようになっています。そして、多くの場合、そのような子には、園や学校の集団行動や学習、対人関係で何らかの困難が出てきます。

先生は学習障害に当てはまる子の類型を経験則で認識できるようになっていきます。ですから、個人面談などの機会に先生の意見を聞いてみて、先生も発達障害を疑っているようなら医療機関に行ってみるという流れがいいと思います。

地域の保健所や発達支援センターに行くのも手です。ただし、そこで心理の先生や医師に30分や1時間程度診てもらってもわからないことも珍しくありません。

発達障害の正確な診断のためには、先生からの情報が不可欠です。(イメージ写真)  写真:アフロ

その点、日頃から多くの情報を持っている園や学校の先生たちの意見は頼りになります。

そして、肝心なのが医療機関にかかってからです。医師が正しく診断するためには、親御さんをはじめ、園や学校の先生たちからの情報が不可欠です。

残念ながら医師の中には、簡易的なチェックリストを使って簡単に診断してしまう人もいます。

そのような医師の診断によって、自閉症スペクトラム障害(ASD)が過剰診断の傾向にあることも否めません。

実際、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された後、私のところにセカンドピニオンを求めてやってきて、私は障害ではないと判断したケースも多々あります。

診断を過剰に付けてしまうことがある一方、「発達障害もどき」のように白黒をはっきりさせてくれない医師もいます。医療機関にかかることをゴールとは考えず、親御さんは医療機関に対して厳しい目を持ち続けることが大切だと思います。

ぜひ、どういう根拠で診断をしているのか細かく聞いてください。そして、それに対して医師がきっちりと説明することができるかどうかを、シビアに評価しましょう。

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