「みんなちがって、みんないい」障害児モデル事業がもたらした「孤育て」からの解放
障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表 内木美樹さんインタビュー#3 ~モデル業から目指すもの~
2022.08.14
障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表:内木 美樹
障害児のキッズモデル事務所「華ひらく」の代表、内木美樹(うちき・みき)さん(39)は、重い障害を持つ男児(8)を育てる母でもあります。
自身の経験から「健常者と障害者の間にある“ガラスの壁”をなくしたい」と始めた事業は、モデルとなった子どもたちの生きるチカラにつながるとともに、親たちが「孤育(こそだ)て」から解放されるきっかけにもなっています。
みんなちがって、みんないい。
誰もが堂々と生きられる社会の実現を目指す、母で社長の内木さんに話を伺いました。
※第3回(#1、#2を読む)
記事の最後に、障害児キッズモデルたちがふるって参加した写真コンテストも紹介します。
わが子のモデル登録が障害児「孤育て」の解消に
2022年7月に行われた障害児キッズモデルたちの写真コンテストの撮影会。モデルの子どもだけでなく、寄り添う親たちの表情も明るく、現場はなごやかな雰囲気に包まれました。障害の程度によるものの、モデル業を楽しむ子どもの姿も。
「軽度の知的障害の子たちは、自分がモデルであることを分かっています。撮影した写真が実際に使われているのを知るとすごく喜んで、働くことのやりがいを感じています。それが生きるエネルギーにつながっているようです」と語るのは、障害児のキッズモデル事務所「華ひらく」の代表、内木美樹(うちき・みき)さん(39)。
そして、何より大きなチカラとなっているのが、キッズモデルの親たちのつながりです。
撮影後、親同士でつながるLINEグループには、
「モデル登録してよかった」
「この場に来られてよかった」
「みなさんに出会えてよかった」
などのメッセージが寄せられました。
内木さん自身も、障害児を子育て中です。長男、尊(たける)くん(8)には、自閉症と重度知的障害があり、キッズモデルとして活躍しています。
「障害児の子育てって、本当に孤独なんです。同じ状況のママ友は周りにほぼいないので、悩みを共有できない。まさに“孤育(こそだ)て”です。親としても生きづらさはすごくあります。
健常児と比べて、わが子が人から認められること、ほめられることは少ない。でもモデル撮影してもらって、できた写真を見ると輝いているわが子を誇れるし、親の自信にもなります。この事業を始めてみて、親の精神面にも大きく影響していると感じるようになりました」
同社が保護者に尋ねたアンケートでは、モデル登録を決めた理由について次のような回答が寄せられました。
「親は迷いましたが、息子自身が『モデルをやりたい!』と言ったので登録しました。障害は恥ずべきことではない。堂々と生きてほしいということを息子に伝えたい。登録して本当によかったと思っています」=やまとくん(7・ADHDと軽度知的障害)の母親
「以前通っていた幼稚園で、障害を理由に『他の園に行ってほしい』と言われるつらい体験をしました。このまま受け入れてもらえない社会で終わってしまわないように、モデルに登録しました」=おとちゃん(6・自閉症と中度知的障害)の母親
「子どもが小さいころは、周りと比べて戸惑って落ち込むこともたくさんありました。でも障害児は純粋で心がきれいです。ありのままの輝きを放ってもらいたくて、障害児モデルへの登録を決めました」=るいくん(9・重度知的障害、ADHD、自閉症)の母親
「自閉症の子とどう接すればいいか分からないかもしれませんが、すーちゃんの世界観を一緒に楽しんでもらえたらうれしいなと思い、モデルへの登録を決めました」=すーちゃん(5・自閉症と重度知的障害)の母親
モデル登録後にSNSでわが子の写真をアップし、子育てを楽しむようになった親も増えたそうです。内木さんは障害児の親と支援者のコミュニティ「チーム☆チャレンジ」(※1)も開設しています。
※1=チーム☆チャレンジ