日本の14%が「境界知能」“知的障害と正常域のはざま“の子ども ・小学校入学(就学期)からの困難&対応を医師が解説
「境界知能」の困難と支援の現実 〔小児精神科医・古荘 純一〕第2回
2024.10.16
目次
IQが70〜84の範囲にあり、知的障害と平均値のボーダー上にある「境界知能(知的ボーダー)」。日本では約1700万人、約14%もいるとされています。
知的障害や発達障害などの診断名がつかない「境界知能(知的ボーダー)」の子どもたちは、特別支援学校や特別支援学級などに進学することはできません。
しかし、通常クラスでの勉強や活動についていくことができず、自己肯定感が下がり、不登校や心身の不調など、さまざまな問題を抱えてしまう可能性があります。
学校には何らかの支援を必要とする子どもが約3割はいるとされるため、教師だけですべての子どもを支援するには限界があります。では、境界知能の子どもをどのようにサポートすればいいのでしょうか?
小児精神科医の古荘純一先生(青山学院大学教授)に、小学校に入学した後(就学期)の境界知能の子どもたちについて教えていただきました。
【古荘 純一(ふるしょう・じゅんいち)青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。小児科医、小児精神科医、医学博士。小児の心の病気から心理、支援まで幅広い見識をもち、教職・保育士などへの講演も行っている】
〔古荘純一先生に聞く「境界知能」の解説は全3回。第1回となる前回では、「境界知能の基礎知識」について解説しました。続く第2回となる今回は「境界知能の子ども・家庭が抱える課題」について、最後の第3回では「青年期以降の境界知能とその困難」について伺います〕
「就学時」が最初のポイント
境界知能の子どもにとって、最初にポイントとなるのは就学時です。
例えば地域の乳幼児健診で発達の遅れを指摘されると、発達検査をした上で療育を勧められます。言葉の発達が遅ければ言語療法、運動の発達が遅ければ理学療法や作業療法、他者との関わりが苦手ならば心理療法などが行われます。
発達検査で発達指数(DQ)もしくはIQが70を超えると、小学校入学時点で療育が終了になることが多く、発達の程度がよければその時点で終了となることもあります。
しかし、残念ながら現状では、ここに「境界知能」という視点は抜け落ちています。
では、通常クラスへ進学した場合、どのような困難があるのか次で詳しく説明します。