子どもの「癇癪(かんしゃく)」「不安」「朝起きられない」を改善する3つの栄養素とは 医学博士が解説

子どもの困った行動を改善する食事 #2 子どもの栄養不足

医学博士(大阪大学):野口 由美

栄養不足はメンタル面にも影響を及ぼす

栄養の作用は、身体の調子を整えたり細胞を作ったりするなど、肉体への影響だけに目がいきがちです。しかし、栄養にはメンタルを健康に保つ役割もあると、野口先生は言います。

「セロトニンやメラトニンといった言葉を聞いたことはないでしょうか。これらは、メンタル面に影響を及ぼす、脳内の神経伝達物質です。

たとえば、セロトニンは精神の安定をもたらす効果があり、メラトニンは睡眠のリズムを調整します。代表的な神経伝達物質と、その働き、不足することで起こる症状は次のとおりです。

実は、これらの神経伝達物質の原料となるのはタンパク質。そして、合成に必要になるのがビタミンB群と鉄です。つまり、タンパク質・ビタミンB群・鉄が不足すると、私たちの心身はバランスが崩れやすくなります」(野口先生)

現代は栄養不足になりやすい環境?

現代は、飽食の時代といわれていますが、栄養トラブルを抱えている人もいます。食べる物には困らず、しっかりと食べているにもかかわらず、なぜ栄養不足になってしまうのでしょうか。

栄養不足の原因①手軽に食べ物が手に入る環境

コンビニやファストフード店がいたるところにあり、簡単に食べ物が手に入る環境こそが、栄養不足を招く原因の一つ。多くの場合、子どもはお菓子やジャンクフード、コロッケ、唐揚げなど、美味しくて安くて、手っ取り早く食べられる物を選びがちです。

しかし、こうした食べ物は、栄養があまりないだけではなく、添加物が多く含まれます。添加物は、栄養素の消化・吸収を阻害してしまうのです。また第1回でも紹介したように、お菓子などの甘い物を食べることで、低血糖を引き起こすというデメリットもあります。

栄養不足の原因②親の栄養状態が良くない

親の栄養状態が良くない理由はたくさんあります。

まず、手軽に食べ物が手に入る環境が栄養不足につながると説明しましたが、これは子どもだけではなく大人も同じ。大人も、ついコンビニで甘い物やスナックを買ってしまうことがあるでしょう。

また、毎食の量の目安は、食べる人の『手のひら分のタンパク質』『両手分の野菜』『握り拳分の炭水化物』ですが、これを聞くと、そのような食事をとっていないと思う人は多いのではないでしょうか。たとえば、朝食がパン、昼食がサンドイッチといった食事では、栄養不足になりますよね。

こうしたことから、大人も栄養不足に陥りやすいのです。赤ちゃんは、ママの身体から栄養をもらって育ちますから、栄養不足のママから生まれた赤ちゃんは、生まれた時点で栄養が足りない状態であることが多いのです。

また、生まれたあとも、子どもは親と同じような食事をして育つため、対策をしない限り、栄養不足のまま育ってしまいます。そうして、栄養がさらに必要な成長期がやってきたときに、ガクンと栄養状態が悪化し、「突然、朝起きられなくなる」ということが起こるのです。

栄養不足の原因③子どもが忙しくなった

昔と比べて、今の子どもはとても忙しい日々を送っています。習い事に塾、部活動……と、やるべきことがたくさんあるため、ゆっくり食事をする時間がありません。時間がないために、よく嚙まずに急いで食べると、せっかくとった栄養素もうまく消化・吸収されません。

また、ストレスも悪影響を及ぼします。ストレスを感じると、腸管が動かなくなるので、栄養素が十分に消化・吸収されませんし、ストレスはビタミンやミネラルも消費します。

ちなみに、「食べるのがめんどくさい」など、その子自身が食事に興味がないというケースもあります。このような子には、食事の大切さを説明すると良いでしょう。

私の過去の治療経験でも、「栄養不足だと身体がうまく働かないどころか、現在の不調につながっている」ということを子ども自身が理解できると、食事に対する態度を変えていくケースが多かったです。

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