子どもの「癇癪(かんしゃく)」「不安」「朝起きられない」を改善する3つの栄養素とは 医学博士が解説

子どもの困った行動を改善する食事 #2 子どもの栄養不足

医学博士(大阪大学):野口 由美

「タンパク質」「ビタミンB群」「鉄」を積極的にとろう

栄養不足を改善するには、神経伝達物質の生成に必要な栄養素「タンパク質」「ビタミンB群」「鉄」を意識的に取り入れていくことです。それぞれの栄養素を多く含む食品は次のとおりです。

<タンパク質、ビタミンB群、鉄を多く含む食品>

タンパク質…豚肉、牛肉、鶏肉、卵、大豆、魚
ビタミンB群…豚肉、牛肉、鶏肉、卵、緑黄色野菜
鉄…牛肉、赤身の魚(マグロなど)、レバー

「特に、タンパク質は2、3種類とるようにしましょう。毎食の量の目安としては、食べる人の『手のひら分のタンパク質』『両手分の野菜』『握り拳分の炭水化物』です。

しかし、タンパク質不足だと、消化酵素が十分に作られないため、肉を食べると胃がもたれたり、少量しか食べられなかったりします。

「なんとなく食べたくない」という場合は、消化酵素が十分に作られていない可能性も。  写真:アフロ

このような場合は、1食分を数回に分けて食べてみてください。毎食大量に食べるよりも、少量ずつこまめに食べたほうが、消化・吸収もしやすいですし、血糖値の急上昇・急降下も防げます」(野口先生)

食が細い子も、少しずつ量を増やしていくことから始めていくと良いでしょう。食事改善をしていく上での食事のコツを、さらに野口先生にいくつか伺いました。

食事のコツ①「複数の食材から栄養素をとる」

前述したように、「手のひら分のタンパク質」と考えると、「手のひらサイズのステーキを毎食食べなければいけないの?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、“タンパク質”をとれば良いわけですから、タンパク質を含む食材を2~3種類食べればOKです。たとえば、お肉にゆで卵、納豆、しらすをのせた冷奴など。また、かつおぶしやいりこの粉をご飯や冷奴にかけて食べるのもおすすめです。

このように、少しずつ頻回にとるようにすると、意外と1日のうちにたくさんのタンパク質を摂取できます。

ちなみに、鉄分の摂取には、調理のときに鉄のフライパンや鉄瓶を使うのも手。少量ではありますが、長い目で見ると、使うのと使わないのとでは、鉄の摂取量に差が出てくるでしょう。

食事のコツ②「消化・吸収しやすいよう食べ方を工夫する」

せっかくとった食べ物も、きちんと消化・吸収されなければ意味がありません。そのために重要なのが、よく嚙んで食べること。よく嚙むことで唾液の分泌もうながされますし、食べ物が細かく砕かれるので消化しやすくなります。

また、塊肉よりはひき肉のほうが消化しやすいのでおすすめです。最初のうちは、肉団子やハンバーグなどを出したり、ステーキを食べる場合は小さくカットしてあげましょう。

消化・吸収を助ける食材をとるのも良いです。大根には消化酵素が含まれているので、一緒に食べると消化を助けてくれますし、梅干しや酢の物、リンゴ酢、レモン水など、酸っぱい物は鉄の吸収を高めてくれます。

食事のコツ③「補食をとる」

少量ずつ栄養素を取り入れていくためのコツは、第1回でも紹介した補食をとることです。

朝食と昼食の間、昼食と夕食の間に補食をとるのが理想的ですが、学校の規則などにより、平日の日中にとれない場合は、まずは学校終わりや休日に試してみてください。

補食は、鶏そぼろや卵そぼろの一口大おにぎり、お味噌汁、葛湯、甘栗、干し芋、黒豆などの煮豆、ゆで卵、ボーンブロススープなどがおすすめです。特に良いのは、いりこの出汁で作るお味噌汁です。出汁は添加物が含まれた顆粒のものではなく、いりこやかつおぶし、昆布などの粉がパックされたものを使うと良いでしょう。

味噌の原料である大豆はタンパク質を多く含みますし、いりこ出汁には、魚から出てきたアミノ酸が含まれます。アミノ酸というのは、タンパク質の最小単位なので、消化・吸収されやすいのです。

さらに、出汁の香りは副交感神経を優位にしてくれるので、お味噌汁の香りをかぐことで、リラックスするというメリットもあります。もし理由を伝えて学校の許可が得られるなら、水筒にお味噌汁を入れて持っていくのも良いでしょう。

またお味噌汁のほか、骨付き肉を煮出して作るボーンブロススープも、栄養価が高くおすすめです。

補食をどれくらいとれば良いのかは、人によって異なります。そのため、できればその日の何時に何を食べたか、体調・気持ちの変化などを子どもに聞いて、親がメモしておきましょう。すると、どれくらいの量・回数をとったら良いのかが見えてくるはずです。

次のページへ サプリメントの注意点とは?
40 件