発達障害かどうか気になります【発達障害・発達特性のある子のお悩みに専門家が答えます】

#1 発達障害かどうか気になります 〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

写真:アフロ

発達障害や発達特性のあるお子さんの保護者の方からのご相談に、言語聴覚士・社会福祉士であり、発達障害のお子さんの療育とご家族の支援に長く携わってきた原哲也先生がお答えします。

お子さんとの生活が楽しくなり、保護者の方の負担が軽くなるような実践的なアドバイスをお伝えしていきます。第1回は、こちらのご相談です。

子どもが発達障害かどうかが気になります。 発達障害かどうかわかる目安のようなものがありますか?

発達障害の診断

まず「発達障害」ということばですが、そもそも発達障害という疾患名はありません。発達障害は、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの疾患名の総称です。

そして、これらの疾患の診断方法は、インフルエンザや癌などの疾患の診断方法とは全く異なります。これらの疾患には、ICD(International Classification of Diseases)-10といわれる国際疾病分類やDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)-5と言われる精神疾患の診断・統計マニュアルがあります。医師は、注意深い診察と各種の情報に基づいて、それらの診断・統計マニュアルに照らして、症状の有無、「有り」の項目数を数え、診断基準に達するかどうかで判断します。

例えば、DSM-5によると、ASDでは、次の4項目を満たすことが要件になります。

(1)コミュニケーションや社会性の発達の遅れ。
(2)興味の偏り・こだわり・感覚過敏や鈍麻(感覚調整障害)があること。
(3)症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
(4)症状が社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

ADHDの場合、例えば、不注意の9項目のうち6つ以上が当てはまるなら、不注意優勢型のADHDと診断されます。5個以下だと、ADHDとは診断されません。

しかし、上記要件に照らしてASDやADHDと診断されないなら支援の必要がないというわけではありません。診断基準に満たなくとも、生活のしにくさ、いわゆる生活障害があれば支援対象になります。診断の有無と支援の必要性の有無は無関係なのです。

「発達障害」は「症状が生活障害を引き起こしているかどうか」による

発達障害とされる疾患(ADHD、ASD、LDなど)には次のような共通の特徴があります。

①生まれつきのものであるということ
脳の中枢神経系の機能特性が原因となってさまざまな症状が起き、そのために生活のしにくさが起きています。つまり、親の育て方や生育環境で発症するものではありません。

②乳幼児期に行動特性として症状が現れること
次のような特徴的な行動や様子が見られることがあり、注意深く観察することで早期発見が可能です。
乳児期:視線が合わない、指差しをしない、働きかけに声や表情で応じない、一つのおもちゃに固執するなど
幼児期:ことばを話さない、働きかけに応じない、模倣をしない、周囲への興味が少ない、多動で危険の認知ができない、自傷や他害がおさまらないなど

③進行するものではない
発達障害の原因となる脳の機能的特性それ自体は変わりません。ですからその意味で発達障害は、進行する疾患ではありません。しかし、その機能的特性の結果として現れてくるさまざまな症状、特徴的な行動や様子、それによってもたらされる「生活のしにくさ」は、周囲の理解と対応によって良くも悪くもなります。理解と対応がされないと二次障害が起こることも多いです。

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