【発達障害・発達特性のある子】に家庭ができること 「療育の専門家」が教える我が子の幸せとは 

#10 子どもの幸せのために家庭でできること〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

1.健康を維持する

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やりたいことにチャレンジするには、まず、健康でなくてはいけません。そのためには生活リズムを整えることが必要です。発達障害のある子どもは日常生活での心理的なストレスや感覚過敏によるストレスが積み重なり、その結果、どうしても生活リズムが崩れがちです。次のことに気をつけて、生活リズムを整えましょう。

①睡眠リズムを作る
第4回 子どもが寝なくて困っています参照

②決まった時間に食事をする
朝ごはんが食べづらいときは、起床後、少し時間をおいてから朝ごはんに向かう、散歩などで少し体を動かす、ということをしてみましょう。

③日光をしっかり浴びて運動する
日光をしっかり浴びることは良質な睡眠を取る上で大切です(第4回 子どもが寝なくて困っています)。運動は④快便にも効果的です。

④快便をめざす
週に3回より少ない、5日以上出ない状態が継続する、毎日出ていても、出すときに痛がって泣いたり、肛門がきれて血が出る場合、便秘と考えられます。

便秘は発達障害の特性のある子どもにはよく見られます。便秘は不快ですし、便が腸内で停滞すると腸内環境が悪化します。腸は免疫やアレルギーに深く関わること、「第二の脳」とも呼ばれ精神状態に影響すること、から、腸内環境が悪化すると、体調やメンタル面での不調につながっていきます。

たかが便秘と侮ることなく、遊びで体を十分に動かす、こまめに水分補給をする、食物繊維をしっかり摂るなどして便秘解消を心がけましょう。

2.「自分らしさ」を育てられるように関わる

子どもが「自分らしく」生きるには、親との関わりの中で「自分らしさを育てる」ことが大切です。子どもが「自分らしさ」を育てられる関わり、それは、子どもが「自分は人に影響を与えることができる」「自分は大切にされている」「愛されている」と感じられる関わりです。その安心感を支えにして子どもはさまざまなことにチャレンジし、その中で自分が何が好きで何が嫌いかを知り、「自分らしさ」を作り上げていきます。

では子どもが安心感を得るにはどうしたらいいでしょうか。それは、子どもからの働きかけに周囲の大人が「応じる」「真似する」「一緒に楽しむ」ことです。

まだ話せない子どもがじっと母親のほうを見つめたら「なあに?」と応答する。子どもがミニカーを楽しそうに動かしていたら、「楽しいね」「好きだよね」と子どもの気持ちを感じてことばにする。子どもが積み木をしていたら、同じように積み木を積むなど、子どもの行動を真似する。真似をすると子どもは自分の行動が周囲に影響を与えることを実感しますし、真似する親に意識を向け親近感を持つようになります。

ところで、「応じる」「真似する」「一緒に楽しむ」にはコツがあります。それは子どもに注目し、まず何をしているかを「静かに」観察し、子どもの発信を「待つ」ことです。何より先に子ども自身が何がしたいのかをとらえる。それには「静かに」が大事です。大人から「先に」働きかけてしまうと、子ども自身が何を発信したかったかがわからなくなってしまいます。そして発信を「待つ」。微妙なものであっても発信があったらそれを素早くキャッチして「応じる」のです。

見ていると往々にして大人は子どもに働きかけすぎます。大切なのは子どもが「能動的に発信したこと」を受け取ってそれに「応じる」ことです。このことはぜひ意識していただきたいと思います。家族という小さい安心できる集団の中で、発信し、応じてもらう経験は子どもが「自分らしさ」を築いていく上で大切です。「応じる」「真似する」「一緒に楽しむ」ことをぜひ心がけてほしいと思います。

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