「男の子」の子育て 教育ジャーナリストが明かす「正解のない時代」を生き抜く3つの力

これからの時代を生きる「男の子」の子育て #2 論理的コミュニケーション力磨き

教育ジャーナリスト:おおた としまさ

おおたさんの言う男の子に必要な「3つの力」とは……? 写真:アフロ

教育だけでなく、子育てについても独自の視点で論じてきた教育ジャーナリスト・おおたとしまささんによる「21世紀を生きる男の子」への提言。1回目では、グローバル社会で必要なのは「英語力よりも教養である」とお話しいただきました。

2回目では、この正解のない時代を生き抜くために、「3つの力」が必要、とおおたさんは言います。それは何なのでしょうか。しっかり教えていただきます。

(全3回の2回目。1回目を読む

おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験も。

必要なのは「人とつながる力」と「支え合って生きていく力」

──内閣府による調査「長期化するひきこもりの実態」(2018年)によると、広義のひきこもり群の男女比率は男性が76.6%、女性が23.4%。男性の割合が高いことがわかりました。男の子を持つ親にとって、気掛かりとなるデータです。わが子が社会でたくましく生きていくために、今からどのような心構えが必要なのでしょうか。

おおたさんは、著書『子育ての「選択」大全~正解のない時代に親が子どもにできる最善のこと』(KADOKAWA)の中で、これからの時代を生きる子どもが身につけておくべき「力」が3つあるとおっしゃっていますが、具体的にどんなことでしょうか。

おおたとしまささん(以下、おおたさん):身につけておくべき「3つの力」というのを僕なりの言い方で表現すると、

「そこそこの知力と体力」
「やり抜く力」
「自分にはない能力を持つ人とチームになる力」

の3つです。

①の「そこそこの知力と体力」は、学校で同世代の友達と楽しく勉強したり、遊ぶことができる知力や体力があれば十分です。何らかの事情で学校に通えていない子でも、同等の知力や体力があって、毎日をそこそこ機嫌よく過ごせれば問題ないと思います。
 
②の「やり抜く力」は、習い事や部活、受験勉強の経験などで養われるものです。学校の勉強ができるだけの人よりも、自分が決めたことを最後までやり抜く力が強い人のほうが、多くのことを成し遂げることができるであろうことは、誰にでも容易に想像できるでしょう。

①と②はいずれも個人に属する能力です。でも、それだけでは人間は生きていけない。人とつながり、支え合っていくことが必要です。
そこで、大切なのが③の「自分にはない能力を持つ人とチームになる力」です。

──いわゆるコミュニケーション力ということでしょうか?

おおたさん:③の「自分にはない能力を持つ人とチームになる力」は、世間でよく言われる「コミュ力」とは少し異なります。人とチームになるためには以下の2つのことが重要です。

ひとつ目は、自分自身が他人にはない、何らかのスペシャルな能力(得意分野)を持っていること。何にでも挑戦するのではなく、自分にとって究極の関心事があり、他人の意見や評価を必要以上に気にせず、そのために行動できる、はっきりとした「自分軸」を持つことです。

──「自分軸」を身につけるために、子どものうちからやっておいたほうがいいこと、親ができることはありますか。

おおたさん:常に子どものスケジュールを埋めようとしないこと、子どもがボーっとする時間を奪わないことでしょうか。子どもは暇にしているときに、どうやって過ごそうかと模索し、自分がどんなことが好きで、何をしているときに幸せを感じるかがわかってくる。自分自身を知り、主体性や自主性が芽生えます。そういう時間こそが、「自分軸」を育てる大切な時間です。

ふたつ目は「コラボレーション力」。人と相互にやりとりする力です。このコラボレーション力というのも2種類に分けられます。「共感的コミュニケーション力」と「論理的コミュニケーション力」です。

前者は相手の立場になって物事を考えられたり、仲間意識を持ったりしながら、お互いが共鳴し、調和していくコミュニケーションです。ノンバーバルコミュニケーションとも言われ、言葉を越えた自然な感情としてのやりとりです。日本人はよく「飲みニケーション」なんて言いますけど、特に同一性の高い集団の中では、そういったコミュニケーションで共感力を高めることが重視されてきたんでしょうね。

──でも、世の中にはどうしてもそりが合わないとか、感覚が違う人っていますよね。

おおたさん:そこで必要となるのが、後者の「論理的コミュニケーション」です。感覚や思想、価値観、イデオロギーが違う人でも、自分にとって必要な能力を持っていて、その人と一緒に働かなければならないこともあります。

「あの人は嫌い」とか、「あの人は面倒臭い」など、共感的なコミュニケーションだけでは乗り越えられないときに、感情は抜きにして、論理的にコミュニケーションができることが求められます。1回目のグローバル社会の話にもつながりますが、多様な文化や思想を持つ人との関わりが増えるこれからの時代においては、こちらのほうが重要です。

例えば、「意見が食い違っているけれど、なぜ相手はそう考えるのか」と論理的にさかのぼっていく。すると、前提がズレていたりして、そもそもがまったく違っていることに気づきます。そこで、お互いの前提の違いをすり合わせて議論を組み立て直していくことで、2人で同じ結論にたどり着ける。これは仕事だけでなく、プライベートでも必要な能力だと思います。

そうやってコミュニケーションが成立すると、共感が生まれたりもしますしね。

学校での勉強がコミュニケーション力を育む

──共感的、論理的、両方のコミュニケーション力が必要なんですね。それでは、「男の子の子育て」の中で、親として「論理的コミュニケーション力」をどう育んであげればよいのでしょうか。

おおたさん:複雑な力が絡み合ったものなので、「こうすればいい」という明確な答えはありません。ただ、学校の勉強が、結局は役に立つと言えるでしょう。算数を勉強することで論理的な思考が育ち、理科の実験などを通じて、物事を正しく分析する科学的な思考が育ちます。「勉強よりコミュ力」なんて言う人もいますけど、やはり勉強は大事なんですよ。

──「共感的なコミュニケーション」についてはいかがですか。

おおたさん:それは生身でいろいろな人と触れ合って共感する経験を積んでいくのが一番でしょう。例えば、部活の中でさまざまな人と青春をともにすること。他には、本を読んだり、映画を見ることで磨かれていく場合もあるでしょう。言語だけに頼らないコミュニケーションをいかに取るか。そういう機会をたくさん設けることが大切ですね。

──家での夫婦間の会話や、コミュニケーションも子どもの参考になりますか。

おおたさん:もちろん、良いことじゃないでしょうか。何か問題が起こったときなどは、夫婦喧嘩をせずに論理的に話し合って解決する道筋を見せる。もしくは、週末に二人でゆっくり晩酌でもしながら「お疲れさま」と互いをねぎらうのもいい。そんな夫婦の姿は、きっと子どもにとって、「共感的コミュニケーション」の良いお手本になるでしょう。

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多様な文化や、思想を持つ人との関わりが増えるこれからの時代において、「論理的コミュニケーション力」が重要であること。そして、その力は学校の勉強によって培われることがわかりました。最終回となる3回目は、「21世紀型のいい男」を育てる方法を、引き続きおおたさんに教えていただきます。

取材・文/鈴木美和

おおたとしまささんの男の子の子育て連載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(3回目は2023年4月26日公開。公開日までリンク無効)

『子育ての「選択」大全 正解のない時代に親がわが子のためにできる最善のこと』著:おおたとしまさ(KADOKAWA)

おおた としまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート...