SDGsブームの日本 社会起業家・平原依文が「子どもたちに学んでほしいこと」

親子で楽しくかしこく学ぼう、SDGs×教育 #3

編集者&ライター:奈良岡 周

SDGsが国連で採択されて2023年で8年目となりますが、日本でのSDGsブームは世界的にどのようにみられているのでしょうか。コメンテーターとしても活躍中の、社会起業家でSDGs教育支援会社代表でもある平原依文さんに解説していただくとともに、「未来を生きる子どもたちにSDGsを通して学んでほしいこと」について話を聞きました。(全4回の3回目)

社会起業家でSDGs教育支援会社代表でもある平原依文さん 

撮影:矢野拓実

日本のSDGsブームは世界でどう見られてる?

SDGsが国連で採択されてから今年で8年目。「SDGs」という言葉はテレビやネットはもとより、コンビニやスーパーなど日常のいろんなシーンで見かけるほどになりました。

世界的にバズワード化している……とここ2~3年言われていますが、日本だけの現象だと思います(笑)。

なぜなら、世界のほかの国ではSDGsが採択される前から「サステナブルな社会に」という価値観でさまざまな社会課題について取り組みがされたり、ムーブメントが起こっていました。SDGsと謳わずに、8年以上も前から粛々とやっていた……そこが海外と日本の違いかと思います。

日本では、スーツにSDGsのバッジをつけているビジネスパーソンがよく街を歩いていますが、海外から来た人には日本特有の光景に映っていることでしょう。

そんなふうにわかりやすくバッジをつけたり「当社はSDGs課題に向き合っています」と販促物にロゴを入れたり、プロモーション目的としたSDGsは本質的な啓蒙活動にならないと私は思います。

では、どうすれば親も子どもも身近な課題にひもづけて、自分ごととして興味を持ち、SDGsの各ゴールに関心を寄せてもらえるようになるのか。それには「教育」に勝るものはないのではないか?と思います。

SDGsの中でもっとも重要視しているのは【目標17】

2022年6月に、国連の研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が「持続可能な開発レポート2022(Sustainable Development Report 2022)」を発表しました。

国別のSDGs目標の達成度に関する順位やスコアが公表されているのですが、今回、日本は2021年からランクダウンしました(※18位→19位)。

特に、
「【目標5】ジェンダー平等を実現しよう」
「【目標12】つくる責任 つかう責任」
「【目標13】気候変動に具体的な対策を」
「【目標14】海の豊かさを守ろう」
「【目標15】陸の豊かさも守ろう」
「【目標17】パートナーシップで目標を達成しよう」

の6項目については主要な課題とされています。

"社会の境界線を溶かす"をライフパーパス(人生の目的)、そして代表を務める会社のビジョンとし、子どもから大人までSDGs教育を行っている私がSDGsの17の目標の中でもっとも重要視しているのは「【目標17】パートナーシップで目標を達成しよう」です。

日本がまだ課題を抱えている目標はほかにもいくつかありますが、この最後の番号、【目標17】がすべてのカギを握っています。目標17が達成されたとき、すべての境界を溶かせるのでは……と。

SDGsブームによって課題が言語化された

すべての人々が平和に暮らせる環境づくりのためには、誰でも建設的な議論ができる関係を築ける世の中になることがまず先決です。

いま、SDGs教育の一環で週に2~3回ほど全国の学校でSDGsに関する授業や海外の社会起業家を日本の学生にオンラインでお繋ぎする授業を行なっているのですが、「正解」を求めようとする子どもたちが増えている印象です。

「〇〇町の社会課題を解決するために、アイディアを考えてみよう!」というテーマがあったとしても、一番多く聞かれるのが「これで合ってますか?」や「どっちが正しいですか?」という質問です。正しさを追い求めるがゆえに、相手を論破することが「ゴール」と思い込んでしまっている傾向も少なからず感じます。

この流れを変えていかないと建設的な議論ができない世の中になってしまうのではないか? と危機感をいだきました。

たとえそれが事実だったり、まさに正論であったりしても、伝え方次第で相手を傷つけてしまいますし、いい対話ができません。自分と違う意見が出たら受け入れられないでしょう。

伝え方が大事なのは、何かというと「〇〇ハラスメント」に当たってしまう大人の世界も一緒です。読者の皆さんも、家庭や職場で「違った伝え方をしてくれれば、お互いを認め合っていい対話ができていれば、あの人ともっと違った関係を築けたかもしれない」と思うことってあるのではないでしょうか。

社会課題の共有には「言語化」がいちばん有効

先ほど、SDGsがバズワード化し、バッジをジャケットにつけてるビジネスパーソンが街を歩いているのは世界の中でも日本ぐらい……と、やや辛口に申し上げてしまいましたが(笑)、この数年のブームが確実にもたらしたものはあると感じています。それは、「世界共通の社会課題の言語化」です。

「持続可能な開発レポート2022」で日本が目標達成したと評価されている「【目標4】質の高い教育をみんなに」「【目標9】産業と技術革新の基盤をつくろう」「【目標16】平和と公正をすべての人に」という3つの項目は、SDGsという言葉が生まれるはるか前から、国を挙げて取り組んできたことの結果。

社会課題がきちんと言語化され、人々の間で共有されてきたことで取り組みが進み、世界中からも評価される結果となったのではないでしょうか。

次回は、親と子のパートナーシップにフォーカスします。私の人生の羅針盤をつくりあげた留学経験と、今でも忘れられない母の言葉についてお話ししたいと思います。

構成/奈良岡周 撮影/矢野拓実

平原依文(ひらはら・いぶん)
HI合同会社 代表/青年版ダボス会議 One Young World 日本代表

早稲田大学国際教養学部卒業。小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。「地球を一つの学校にする」をミッションに掲げるWORLD ROADを設立し、世界中の人々がお互いから学び合える教育事業を推進。2022年にはライフパーパスである「社会の境界線を溶かす」を実現するために、HI合同会社を設立。SDGs×教育を軸に、学生と企業が一緒になって社会課題を解決するプロジェクトを主軸に活動。共同著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』(いろは出版)。

写真提供:いろは出版
ならおか あまね

奈良岡 周

編集者&ライター

編集者&ライター。出版社にて雑誌(女性ファッション誌、情報誌、週刊誌)、書籍(実用、人文、エンタメ、文芸、漫画など)の編集を経...