子どものSDGs教育 家族で楽しむ動物園・水族園がオススメの理由

親子で楽しくかしこく学ぼう、SDGs×教育 #2

編集者&ライター:奈良岡 周

アドベンチャーワールドでイルカやクジラの飼育を担当する武藤大輔さん。  写真提供:アドベンチャーワールド
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2020年12月に「SDGs宣言」を行った和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」では、かわいい動物とふれ合いながらサステナブルな社会について楽しく学ぶことができます。

オンラインイベント「家族で楽しむ!学ぶ!オンライン動物SDGs ツアー with アドベンチャーワールド」では、飼育スタッフたちが動物のリアルな姿を見せながら子どもたちに森林伐採や海洋プラスチックゴミ問題について考えてもらいました。

イルカ・クジラの飼育を担当する、イルカトレーナーの武藤大輔さんに、SDGsの目標達成に向けた動物園の役割やイルカの謎についてお話を伺いました。(全4回の2回目)

動物園、水族園の役割はまさにSDGs

写真提供:アドベンチャーワールド

イルカトレーナーの武藤大輔さんは、次のように語りますーー。

気候の温暖な和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」には、子どもはもちろん、親世代も大好きなかわいい動物たちがたくさん暮らしています。その数、なんと陸・海・空あわせて約140種1400頭です。

僕はもともと海が大好きで、大学で海洋生命学を学んだあと、2017年にアドベンチャーワールドに入社しました。営業課を経て、イルカやクジラの飼育やショーを担当するマリン課に所属しています。

今では子どもたちにSDGsの体験学習プログラムを行っている僕ですが、アドベンチャーワールドに入社するまでSDGsをよく理解していませんでした。

ですが、大きな転機になったのは世界中の若手リーダーたちが集まる「One Young World Summit」(次世代リーダーの育成と国際交流を目的とした地球規模のサミット)へ日本代表として参加することになったこと。

世界では「ヤングダボス会議」とも表現され、SDGsの達成に向けた具体的なアクションに世界の次世代リーダーで取り組むためのフォーラムイベントです。

世界中から集まった2000名もの次世代リーダーたちとの交流はかなり刺激的でしたし、この体験をきっかけにSDGsに本格的に興味を持ち始めました。

自分が楽しいだけじゃない、自然を守る具体的なアクションを起こしたい。自分の大好きな海や、自然の中で暮らす動物たちを守りたい――。そういう気持ちがSDGsに繋がっていったのだと思います。

「アドベンチャーワールド」は2020年12月に「SDGs宣言」を行いましたが、そもそも動物園という場所の持っている役割、アドベンチャーワールドが取り組んできたことにちょうどいいタイミングで「SDGs」と名前が付いたのかな、と思います。

なぜなら、動物の飼育や水族館の運営、種の保存ということ自体、SDGsの「【目標14】海の豊かさを守ろう」「【目標15】陸の豊かさも守ろう」に繋がっていくものだからです。

アドベンチャーワールドHPより

子どもたちの豊かな発想を海ゴミ削減に活かしていく

今や世界的な共通言語である「SDGs」は、我々の行ってきた取り組みに興味をもってもらう入り口としてはわかりやすいのではないでしょうか。

SDGsの体験学習プログラムは、もともと地域の学校に向けに行っていました。今回のような、オンラインでSDGsをテーマにしたツアーをやるのは初めての試みで、集まったお子様たちがどういう反応をするかを気にしながら、手探りでやっていました。

これまでの経験上、動物の話をしているときは聴いてくれるけど、環境問題の話をすると気が散り始めるお子様が多いです。また、お子様によっては動物の好き嫌いがあるので、かわいい動物だからといって全部に興味を持ってくれるわけではありません。

しかし、このイベント参加者はもともとSDGsに関心の高いお子様が多かったので、センセーショナルな問題に関してもずっと集中して聞いてくれました。オンラインだからこその強みを生かし、飼育員が実際に動物を見ているリアルな目線だったり、近い距離感で伝えられたりするのはお子様にとってもワクワクするポイントなのかな? と思っています。

このイベントを終えて印象に残っていたのは、お子様の発想はやっぱりおもしろいということです。

かわいいペンギンたちが食べる魚が口にする海洋プラスチックゴミ問題についてのトピックでは、海に暮らす動物たちが海洋プラスチックゴミの汚染に困っている現状、海洋プラスチックゴミが増えている理由をご説明した後、「イルカの暮らす海の中にあるプラスチックゴミをどうやって減らしますか?」と質問しました。

それに対して、ある女の子が「海に虫かごを持っていって拾う」と答えました。ゴミ袋でなく、虫かごというのがおもしろいですよね。ただゴミを拾うという行為が、表現を変えるだけでちょっとした宝探しのようになります。

僕たちは、白浜町のきれいな海を守るため、一般社団法人WELLEXと共同で、「海中&ビーチ合同クリーンアップ」というイベントを不定期で行っています。僕のようなイルカトレーナーや海の動物を担当する飼育スタッフが、海のゴミが動物たちへ与える影響についてレクチャーをしたあと、ビーチや海の中のゴミを実際に集めます。

ゴミ収集はすべて午前中のうちで終了するプログラムで組んでおり、1時間ほどで海中・ビーチ合わせてこの量となるそう。写真提供:アドベンチャーワールド

次は集めたゴミで動物用のおもちゃをつくるワークショップをして、最後はパークの動物たちへプレゼントする……というものです。

海の問題について、未来のために何ができるのか?
子どもたちから挙がってきたアイディア


・海に虫かごをもっていってゴミを拾う
・ゴミのポイ捨てをしない
・ゴミをあまり出さないようにする
・長く使えるものを使う
・ゴミを見つけたらすぐ拾って捨てる
・マイボトルやエコバッグを使う

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